心を動かす“ワクワク感”を大切に
スキー選びのポイントは理解できたとしても、そこにもう一つ大切な要素を加えたい。それが、“ワクワク感”だ。
ここ数年、円安の影響でスキーの価格は大幅に上がっている。だからこそ、「納得して買う」ためには、性能やスペックだけでなく、胸の奥から湧き上がる高揚感が重要だと思う。最終的には、理屈だけではなく“感情”こそを決め手にしたい。つまり、「テンションが上がるかどうか」。


私自身、子どものころからスキーに特別な思いがあった。買ってもらったスキーをベッドの横に立てかけ、ブーツを履いたまま眠った夜もある。ブランドイメージ、デザイン、カラー、ウェアとのコーディネート……。心から「かっこいい!」と思えるスキーを手に入れたときの喜びは、何ものにも代えがたい。大人になった今では、ブランドの歴史やストーリーといった背景にも惹かれるようになった。
私にとっての“ワクワク”の象徴は、オーストリアのスキーブランド「ケスレ(KÄSTLE)」だ。アルペンスキー選手時代、最も良い成績を残したときに履いていた思い出のブランドであり、ロゴを見るだけで今でも気持ちが高まる。
2018年にブランド復活を知ったときには居ても立ってもいられず、2022年には本社を訪ね、日本総代理店を始めてしまったほど。
(ケスレの日本復活に関する過去のコラムはこちら:https://steep.jp/column/101983/)
これは少し極端な例かもしれないが(笑)、そこまで愛着を持てる一本に出会えたなら、スキー選びはもう迷わない。「これだ!」と心が動く瞬間こそが、最高のスキーとの出会いだと思う。
ヨーロッパ・北米・日本 、それぞれのスキー事情
スキーには多くのブランドがあり、それぞれにレーシング、ピステ、フリーライド、オールマウンテン、フリースタイルなど、多様なジャンルが存在する。そして国や地域によって、好みの傾向にも違いがある。
ヨーロッパの場合

ヨーロッパはスキー発祥の地であり、とくにオーストリアと周辺国ではアルペンレーシングの人気が圧倒的だ。ここでは、アルペンスキーで強さを実証している老舗ブランド、オーストリアで生まれたアトミック・ヘッド・フィッシャー、ブリザード、2018年に再始動したケスレ、フランス生まれのロシニョール・サロモンなどの人気が高い。
さらにはドイツのフォルクル、イタリアのノルディカ、高級ブランドのイメージがあるスイスのストックリなども強い支持を得ている。スキー場が広大なヨーロッパでは、170cm以上のロングターンモデルやウエスト幅70〜90mmのオールマウンテンモデルが主流。細かいターンよりも、大きな弧を描きながら優雅に滑るスタイルが好まれている。
北米の場合

北米は西部のロッキー山脈沿いの広大なスキーリゾートを中心に、フリーライドカルチャーがかなりの割合を占める。ヨーロッパの人気ブランドに加え、アメリカで最も歴史のあるK2をはじめ、アルマダやDPSといった2000年代以降の新興ブランドも勢いがある。
人気はウエスト幅90mm以上のフリーライドモデル。雪が降った朝はスキーヤーが一斉にリフトへ殺到し、ファーストトラックを狙う光景が日常だ。そのエネルギッシュな雰囲気こそ、まさに北米(特とくにアメリカ)らしい。
日本の場合

日本は、ヨーロッパや北米に比べ、滑走性能に対して敏感なスキーヤーが多い印象だ。ターンのキレ、雪面の捉え、スキーの走り、そういった繊細な感覚を大切にするスキーヤーには、ピステモデルで165cm前後のショートカービングスキーの人気が高い。ヨーロッパの人気ブランドに加え、長野県発のオガサカスキーは、日本の雪質に合わせた設計と丁寧な仕上げで高い信頼を得ている。
また、日本は世界でも有数の豪雪国。軽く乾いたパウダースノーは海外からも注目されており、ここ数年はフリーライドモデルの人気が高まりつつある。そして、その雪の多さから、日々変わる多様な雪面コンディションを味わうことができるのも特徴だ。もちろん、その日のコンディションに合うスキーを選ぶことができれば最高だが、レンタルならまだしも、複数台のスキーを購入するのも、持ち歩くのもハードルが高いと言える。
そんなスキーヤーへのおすすめは、ウエスト幅が100mm以下のフリーライドモデルや、ヨーロッパで人気のあるオールマウンテンモデル。どんな雪面コンディションでもラクに乗れて、高いスピードでも安定感があって、景色も楽しみながら長時間でも疲れずに乗り続けられるスキー。そのように、人に魅せるためのスキーではなく、なによりも自分が楽しむことを最優先したスキー選びもおすすめしたい。
