
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え…っ! 「マジかよ」「合うのかな」 コチラが小泉八雲さんが「ビールのおつまみ」にしていた衝撃の食べ物です
まだまだ庶民にはなじみがなかったビール
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツさんがモデルの物語です。
第8週では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」の未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」が、ビールを飲むまでのエピソードが話題を呼びました。特に視聴者が注目したのは、明治23年(1890年)当時の松江でビールを扱っていたのが、「山橋薬舗」という薬局しかなかったことです。
SNSでは「なんで薬局でビール? 薬とか輸入するのに一緒に珍しいものを仕入れてたのかな?」「薬舗て薬局かと思ったら外国のお酒も売ってたんかな? 高麗人蔘とビール売ってるだけでもコンビニ感だね」「薬局がビールを!と思ったけどドラッグストアの方が酒の種類あったりするもんね」「明治時代は薬屋でビールを売っていたのか~と思ったけど令和の今もドラッグストアでビール売ってた」といった声があいついでいました。
当時の松江で唯一ビールを扱っていたのは、江戸時代から現在まで続いている橘泉堂 山口卯兵衛商店(山口薬局)という店です。モデルのラフカディオ・ハーンさんは、松江滞在時、小泉セツさん以外に雇っていた高木八百さん(セツさんの親戚)という女中にビールを買いに行かせ、毎日夕食後に瓶ビール2本を飲んで和菓子をつまんでいたそうです。
山口卯兵衛商店の公式Instagramでは、明治時代の麒麟ビールや、ハーンさんが好きだったアサヒ印ビール(現在のアサヒビールとは違う)の古いラベルのほか、当時扱っていたさまざまな品が載ったチラシを見ることができます。
ちなみに、明治時代に薬局でビールを売っていたのは、松江だけの話ではありませんでした。当時、江戸時代から引き続き日本酒を取り扱っていた酒蔵や酒問屋は、新しく入ってきた洋酒の代表であるビールとの競合を避けるため、店に置きたがらなかったそうです。そこで各ビールメーカーが目を付けたのが、薬局でした。
平成7年(1995年)に日本初のクラフトビール「エチゴビール」が生まれた新潟では、新潟駅ができた明治37年(1904年)でも、酒販店と酒造業者が深く結びついてビールを売ろうとしなかったため、ビールは船や馬などで運搬され、薬局、廻船問屋の系列店で売られていたといいます。
また、明治20年代には東京でビールを扱う酒屋も現れましたが、まだ数が限られており、値段も高めだったそうです。1890年5月の時事新報の記事を見ると、麒麟ビールや恵比寿ビールが大瓶で1本18銭、小瓶が11銭だったことが分かります。当時、そばが1杯1銭、牛乳が180mlで3銭ほどで買えたことを考えると、なかなかの高級品でした。一般庶民で買えた人は少ないでしょう。
山口卯兵衛商店は、当時としては特に珍しくない店だったようですが、『ばけばけ』の山橋薬舗の店主「山橋才路(演:柄本時生)」は、公式サイトで「実は店主以外にも、“裏の顔”を持っている」と説明されています。いったい何を隠しているのでしょうか。
参考書籍:『松江に於ける八雲の私生活』(著:桑原洋次郎/島根新聞社)、『新潟 ビール今昔物語』(著:松本定吉/小売酒販組合新潟事務局)
