
フリーダム中村敬斗の浮遊は、ボリビアを大いに混乱させたはず。逆サイド移動で狂わせる。見事なマッチアップ崩しだ【日本代表】
[国際親善試合]日本 3-0 ボリビア/11月18日/国立競技場
11月18日に国立競技場で行なわれた国際親善試合のボリビア戦は、日本が4分に鎌田大地のゴールで幸先良く先制。その後は徐々にボリビアに支配され、苦しい展開を強いられたが、67分に上田綺世、中村敬斗、町野修斗の3人交代によって流れを引き寄せると、町野、中村が追加点を挙げ、日本は3-0で勝利を収めた。
立ち上がりは明らかに、日本のゲームだった。
「試合の序盤では日本にペースを握られ、そして失点をしてしまったことで、ボリビアの選手たちに若干迷いが生じ、それは精神的な面で日本にとってはプラスに、ボリビアの選手にとってはダメージになりました。日本はボリビアのビルドアップに対し、うまくプレッシャーをかけてきたと思います」(オスカル・ビジェガス監督)
これらは先制点の場面に凝縮されている。日本はハイプレスの構えを見せ、ボリビアにゴールキックを蹴らせた。そして遠藤航が頭で競ったこぼれ球を、小川航基が拾ってつなごうとしたが、これはミス。相手に渡ってしまう。
しかし、菅原由勢の切り替えが早い。すぐにボールを奪い返すと、ボールを拾った遠藤から久保建英へつなぎ、ショートカウンターで相手の背後へ。最後はドリブルから右足でクロスを挙げ、フリーの鎌田が左足で流し込んだ。
敵陣プレスでロングキックを蹴らせて回収。ミスをしてもトランジションで制圧。こうした要素が、日本の優位を生んだ。また、ビルドアップに関しても、4-2-3-1を敷くボリビアのトップ下、15番ビジャミルに対して鎌田と遠藤が2対1となり、左右にボールを散らすことでうまくボリビアのプレスをかわしていた。
ところが...。20分頃から雲行きが変わり始める。
「日本のほうがうまく数的優位を作り出していたと思います。そこに20分以降は気をつけるようにしました。また、私たちのフォワードをより日本のミッドフィルダーに張り付かせるような戦い方をさせたことで、状況は少し改善しました」(ビジェガス監督)
このあたりの時間帯から、ボリビアはかなり球際にガツンと当たるようになった。また、戦術的にもボリビアの前線4枚は距離を近くして中へ絞り、遠藤と鎌田のスペースを窮屈にさせ、対人でも1トップの9番モンテイロが下がったり、あるいはボランチの1枚が前へ出たりと、鎌田らを捕まえるようになった。
それが顕著に表われたのが、30分の場面だ。谷口彰悟からのパスに対し、背中からプレッシャーを受けた鎌田が板倉滉へワンタッチで戻そうとしたが、これをインターセプトされてしまう。奪った11番のナバが素早くシュートを見舞って冷や汗をかかせた。
直後、日本は遠藤を最終ラインへ落とした4枚回しに変形。ボランチを起点にしづらくなったことで、後ろに人を増やして安定を図った。ところが、ボールは落ち着いたものの、今度は前進に四苦八苦。鎌田のアンカーと最終ライン4枚では後ろが重たく、遠藤や板倉の斜めのロングパスも通らない。日本の攻撃はこぼれ球など、偶発的な機会に限定されていった。
そんななかでも唯一、うまく機能していたのは久保と南野拓実だ。久保は鎌田の脇に空いたスペースへ下りて起点を作り、南野は左サイドへ流れて前田大然が相手をピン留めして空けているスペースでボールを受け、ドリブルで前進した。
4バックのボリビアはCBが2枚しかいないので、久保や南野が大きく動いた時、スペースを空けるのを恐れて深追いできない。日本は徐々に劣勢になるなかでも、時折は彼らが起点となって打開しつつ、前半を終えた。
そして、後半――。
「いくつかの戦術面での調整を行なったこともあって、後半に入ってからはよりこの試合の主役としてプレーをすることができたと思います」(ビジェガス監督)
ボリビアは6番のMFクエジャルを最終ラインの真ん中へ落とし、3-4-3に変更した。ボリビアはCBが3人に増えたことで、久保や南野の動きを追撃するようになり、日本に残されたビルドアップの突破口を塞ごうとする。システムは日本とマッチアップするミラーゲームに近くなったが、疲れが見える日本に対しては、対人局面が増えても構わないと判断したのかもしれない。
同時に攻撃面でもCBが3人に増えたことで、両サイドの3番DFメディナと17番フェルナンデスが高い位置を取り、11番ナバと7番テルセロスと連動して両サイドの2レーン、特に日本の隙間となるハーフスペースを使いながら攻め込んできた。
ボリビアが前線に厚みを作って押し込んできた、後半序盤の15分間、日本はポゼッション率35.6%に留まった。前半の30分以降に関しては45.1%とやや劣勢程度で済んでいたが、この後半序盤はボリビアの戦術変更と日本の疲労により、一方的に押し込まれている。
スコアはいまだ1-0。何が起きてもおかしくはない。ここで日本は67分、遅まきながらも的確な一手を打つ。上田、中村、町野の同時投入だ。
上田の化け物ぶりにはスタジアム全体が驚いたが、戦術的に面白かったのは中村だろう。南野に代わって左シャドーに入った中村だが、「左」なんてあってないようなもの。ほとんど右サイドに張り出してプレーしていた。
このフリーダム中村の浮遊は、ボリビアを大いに混乱させたはず。右CBの4番トレスは中村を逆サイドまで追撃するべきか、迷いどころだが、行かなかった。そのため、中村は町野の下でスペースを得てプレーし続けることになり、多くのチャンスを創出。そして71分、「右」サイドのハーフスペースから飛び出した中村の折り返しを、町野が押し込んで2点目を決めた。78分には中村自身も得点し、3-0で試合を決定付けている。
後半はボリビアがシステムを合わせてきたことで、対人のマッチアップが明確になった。それを中村のフリーダムな逆サイド移動で狂わせる。見事なマッチアップ崩しだ。もう少し早く動けたらなお良かったが、試合を解決する手段としてはベストだった。
ボリビアは来年3月に大陸間プレーオフに出場する。W杯に出られるとしたら、ポット4が濃厚であり、ポット2が見込まれる日本とは同組になるかもしれないチームだ。そのボリビアに対し、日本は完勝とも辛勝とも言える3-0で、2025年最後の試合を終えた。
文●清水英斗(サッカーライター)
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