
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え…っ!「上手すぎ」「タッチが細かいし凄い」 コチラが小泉八雲とその三男が描いた実際の「絵画」です
芸術家家系でもあった
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツがモデルの物語です。
第8週では 主人公「松野トキ(演:高石あかり)」と、未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の「絵のうまさ」が話題になりました。ヘブンはトキに自分が欲しい「ビール」「パイナップル」の絵を描いて説明し、トキも「蚊帳」の使い方を絵で表しています。
視聴者からは「おトキちゃんもヘブンさんも絵が上手い。これが壊滅的に下手くそだったら違う未来になったのだろうか」「ヘブン先生もおトキも絵がうまくてよかったよね」「おトキちゃんのイラストがかわいい。ヘブンさんも絵が上手やから、こうやって心通わせていくのか」といった反応があいつぎました。
ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーンは、絵が得意だったことでも知られています。ハーンの従弟は、10代の頃の彼のことを「絵が非常に好きな少年だったと覚えている」と語っており、描くのも見るのも好きだったそうです。
ハーンの父・チャールズの弟のリチャードはパリで活躍した画家で、ジャン・フランソワ・ミレーなどの巨匠とも親交がありました。ハーンは叔父の性質を受け継いだのか、1869年に渡米して新聞記者になった後も、絵の才能を仕事に活かしています。
ハーンは1878年から81年まで準編集者として働いた、ニューオーリーンズのデイリー・シティ・アイテムという新聞社で、「挿絵記事」をいくつも担当しました。こちらは、木版の挿絵を使った、アメリカで最初の新聞風刺マンガといえるものだったそうです。ハーンの提案で始まったこの挿絵記事は、1879年から1880年までの2年間で175作品も掲載され、アイテム社の売り上げは激増しました。
また、ハーンは渡米した直後に自分を家に住まわせてくれた恩人の活版屋、ヘンリー・ワトキンとの手紙で、よくカラスの絵を描いていたことも知られています。これは髪が黒く肌の浅黒いハーンのことを、ワトキンが「Revan(大カラス)」と呼んでいたことに由来するそうです。
また、来日してセツと結婚した後のハーンの逸話も、彼の絵画好きをうかがわせます。ハーンは1904年8月、静岡県焼津市へ出張していた間に、セツに毎日挿絵付きの手紙を送っていたそうです。また、セツの手記『思い出の記』では、ハーンとふたりで上野の展覧会に行った際、彼が気に入った絵をどんな値段を提示されても気にせずに買っていたことが語られています。
セツがハーンと同じように絵がうまかったのかは分かりませんが、ふたりの三男にあたる小泉清は画家として名を残しました。清は学生時代にハーンの講義を聞いていた歌人・會津八一によってその才能を見出され、東京美術学校西洋画科に入学、46歳のときに第1回新興日本美術展で読売賞を受賞しています。
清はその後も荒々しいタッチと独特な色彩の作品を手がけ、両親の思い出の地、松江のスケッチも多数残しました。島根県立美術館では、『ばけばけ』の放送に合わせて2025年10月から2026年4月まで絵画展「西洋絵画・洋画 2025年度 第2期 特集:小泉清ー小泉八雲とセツの三男として生まれて」が開催中です。
ヘブンだけでなく、トキも絵がうまいという設定は、のちにふたりの間に画家になる息子が生まれることを示唆しているのかもしれません。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』(中央公論新社)、『思い出の記』(ハーベスト出版)
