教科書や教材で一度は見たことがある“あの顔”。
旅に生き、旅に死んだ漂泊の詩人。
彼の編み出した新しい表現形式は、わずか17文字の中に宇宙を閉じ込めました。
さて、この人物、誰でしょう?
【ヒント】
1.健脚で1日に約40キロ以上も移動し、幕府の隠密として各地の情勢を探っていた「忍者」だったのではないか、という説がある。その旅の記録は、重要な軍事地理情報を含んでいたとも言われる。
2.深川に庵を結んだ際、弟子が贈ったある植物の株が大きく育ったことから、それを庵の主人のシンボルとし、自身の俳号の由来とした。
3.江戸を発ち、東北から北陸を巡って大垣に至る約5カ月間の旅をまとめた紀行文『おくのほそ道』は、日本の古典文学における最高傑作の一つとされる。
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正解は「松尾芭蕉」(1644–1694)。
松尾芭蕉は、江戸時代前期の俳諧師です。それまで言葉遊びが中心だった俳諧を、自然や人生を深く見つめる芸術「俳句」へと昇華させた人物で、「俳聖」として尊敬されています。
彼の俳号は、深川に庵を結んだ際に弟子が贈った植物の「芭蕉」が立派に育ったことに由来します。また、生涯の多くを旅に費やし、その健脚ぶりや詳細な旅の記録から、実は幕府の密偵、すなわち「忍者」だったのではないかという面白い説も存在します。
彼の作風は、静寂の中に広がる奥深い世界観を特徴とし、その真骨頂は「古池や蛙飛びこむ水の音」という句によく表されています。この句は、静まり返った古い池に蛙が飛び込む一瞬の音によって、かえって周囲の静けさが際立つという、日本的な美意識「閑さび」を完璧に表現した名句として世界的に知られています。
そして、その旅の集大成ともいえる紀行文『おくのほそ道』は、日本の古典文学における最高傑作の一つです。彼の確立した「蕉風(しょうふう)」と呼ばれる作風は、後世の俳人たちに計り知れない影響を与え、現代の俳句にも脈々と受け継がれています。
このシリーズでは、教科書や学習教材で見かける偉人たちをクイズ形式で紹介しています。次回もお楽しみに!
