
「ブラジル戦とは全く違う。親善試合というより…」ブラジル人記者が感じた森保Jの充実と不足。遠藤か佐野か。上田の控えは誰か
森保ジャパンは11月、ガーナとボリビアをホームに招き、国際親善試合を行なった。先月にはブラジルに3-2で逆転勝利し、王国初撃破を果たしたなか、今月の初戦は2-0、2戦目は3-0。見事に連勝を3に伸ばし、2025年を締め括った。
来年はワールドカップイヤーだ。北中米で「最高の景色」を見るべく強化を進める森保ジャパンにとって、今回の2試合はどのような意味を持ったのか。チームや個々の選手にどのような変化が見られたのか。
サンパウロとオンラインで繋ぎ、屈指の日本通で知られるブラジル人ジャーナリスト、チアゴ・ボンテンポ氏に話を訊いた。
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――直近のガーナ戦とボリビア戦は、チアゴさんの目にはどのように映りましたか?
「ブラジル戦とは全く違う感じでしたね。ブラジル戦はワールドカップ本番のような試合として戦いましたが、今回の2試合は親善試合というよりトレーニングのようでした。ガーナはワールドカップ出場を決めていますが、ほとんどの主力選手が来ていませんでしたし、時差ボケもあったでしょう。
一方で日本はもっと前から準備をしていて、その差が試合にも影響しました。試合前の予想よりも難しくない、楽な試合だったと言えます。例えば、この2試合では早川(友基)がゴールを守りましたが、ビッグセーブをする必要はほとんどありませんでした。特にボリビア戦では、相手の枠内シュートは1本もありませんでした。ですから、試合のクオリティという点での価値を語るのは、少し難しいかもしれません。もちろん、勝利は自信に繋がるので大事なことですが」
――2試合を通して、最も印象に残った選手、MVPを1人挙げるとしたら?
「うーん...難しいですね。1試合だけで見ると、ガーナ戦では個人的に佐野海舟が1番目立った選手でした。ですが、彼は次のボリビア戦には出場しませんでした。ボリビア戦では、中村敬斗が最も活躍したと思いますが、1試合目ではそれほど目立っていませんでした。両方の試合で良く活躍した選手を選ぶなら、堂安律だと思います。彼は2試合とも良いパフォーマンスを見せてくれました」
――選手層の観点で感じた部分はありましたか?
「ガーナ戦を見て思ったのは、森保(一)監督が今やろうとしていること、以前から彼が言っていたことが形になってきたなということです。森保監督は『11人だけではなく、22人が同じようなレベルであってほしい』と話していました。この2試合では、それが少し感じられました。
例えば佐野は、数か月前はスタメンでも控えでもなく、彼のポジション(ボランチ)では3番手のオプションだったかもしれません。しかし今、彼はスタメンのような活躍を見せています。(鈴木)淳之介も同じだと思います。以前はセンターバックの序列で下の方だったと思いますが、序列が1番上がった選手だと感じます。もし今日、ワールドカップのメンバーを選ぶなら、怪我人が全員復帰したとしても、彼は選ばれるべき選手になったと思います。
佐野も、まだスタメンとは言い切れないかもしれませんが、スタメンの選手と同等か、それ以上の活躍をしていると言えるでしょう」
――佐野選手の台頭は、キャプテンの遠藤航選手の立場にも影響を与えそうですね。
「ボリビア戦では、佐野の代わりにキャプテンの遠藤が戻ってきました。遠藤はこれまで森保ジャパンで最も活躍してきた選手の1人ですし、ボリビア戦でも良いプレーを見せていました。しかし、それでもガーナ戦での佐野の方が良かった。遠藤が悪かったわけではありません。ただ、今の佐野のレベルは、それよりも少し高いということです。
だから、『今日の日本代表で1番強い11人は誰か?』と問われたら、遠藤の代わりに佐野を選ぶべきか、迷ってしまいます。遠藤はリバプールであまりプレーできていない一方で、佐野はマインツで活躍を続けています。遠藤は代表では流石に良い試合を続けていますが、佐野はそれを超えるレベルのプレーを見せている。
これはセンターバックのポジションにも同じような感覚があります。淳之介もまだスタメンではないけれど、スタメンのような活躍を見せている。おそらく、これが森保監督の狙っていることでしょう。スタメンと控えの選手のレベルに差がないことは、日本代表にとってすごく良いことです。チームの目標達成のために、素晴らしいことだと思います」
――遠藤選手は現状、リバプールで出場機会を得られていません。冬の移籍は考えづらいですが、どう手を打つべきでしょうか。
「リバプールに残るなら、状況は厳しいでしょう。今の監督(アルネ・スロット)が彼をあまり好んでいないのは明らかで、プレー時間を与えないだろうと思います。この状況が続けば、自然と代表でのポジションも奪われてしまいます。今のレベルの試合ならまだ大丈夫だと思いますが、ワールドカップの重要な試合では、佐野の方が選ばれるかもしれないと思い始めています。
移籍した方がいいかと言われれば、そう思います。(ユルゲン・クロップが退任して)今の監督がリバプールに来た時から、彼のようなタイプのボランチは使わないだろうと言われていましたから」
――この2試合で課題が見えた、悪い意味で印象に残ってしまった選手やポジションはありますか?
「相手があまり良くなかったので評価は難しいですが、センターフォワードのポジションは、まだ上田(綺世)の控えが誰なのか、確実には見えてきません。例えば、小川(航基)がボリビア戦でスタメンでしたが、開始直後にゴールキーパーと1対1のチャンスを逃しました。彼がスタメンの座を掴みたいなら、ああいうチャンスは決めるべきです。
後半、森保監督が前線の3人を代えた時、チームはすごく変わりました。特にセンターフォワードのポジションでの上田と小川の差はすぐに感じました。小川は決して悪くはなかったですが、まだ上田との差はあります。ボランチやセンターバックのように『みんなが同じレベル』という感じが、このポジションにはまだないですね。
後藤(啓介)もシント=トロイデンで非常に活躍している選手ですが、この2試合を見る限り、まだ成長が必要です。ワールドカップで活躍できるレベルにはまだ達していないので、もっと経験を積んでほしいと思います」
取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)
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