
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』ポスタービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
【画像】「えっ、いいなぁ」「日本でも出して」 これが『鬼滅の刃』台湾上映の入場特典です(6枚)
アメリカと中国の「牙城」に割って入った、唯一の作品
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(以下『無限城編』)の全世界興行収入が1000億円を超えたことが発表されました。しかも、これは日本映画初の快挙だということです。
公式発表としては「日本初」という表現をしていますが、この快挙は日本初どころか「米中以外で初」の偉業であり、今後の世界の映画産業のゲームチェンジャーにもなり得る出来事です。
これだけの数字を生み出すことができたのはなぜか、考えてみたいと思います。
まず、累計興行収入1000億円がどれほどすごい数字なのか、改めて確認したいと思います。前述したように、公式な発表では日本映画で初めてという言い方がされていますが、これは実際には「アメリカ映画と中国映画以外で初めて」です。
興行収入の推計を公開している「Box Office Mojo」の歴代世界興行収入ランキングで1000億円を超えている作品(1ドル=145円換算)は160本あり、『無限城編』以外はハリウッドの有名作品と中国国内で大ヒットした中国映画しかありません。
世界の映画市場で最も大きいのは北米、2位が中国です。この2大国しか足を踏み入れたことのない領域に、『鬼滅の刃』という作品は突入しています。
2024年の推計で北米市場は世界の29%、中国は19%のシェアを持っており、実は世界の映画市場は、この2国でほぼ半分を占めています。日本はよく世界3位の市場と言われますが全体でのシェアは4%ほどしかありません(2024年は5位に転落しています)。3位から6位あたりまでは1%以内の差でひしめき合っているのが実情であり、世界の映画市場は、アメリカと中国にほぼ支配されていると言っても過言ではないのです。
必然的に歴代のランキングも、巨大市場を自国に持つその2国がトップを寡占する状態になっています。アメリカ映画は世界中に普及しており、中国映画はその反対でほとんどの売上を自国の市場で稼ぐ構造です。ちなみに、今年の世界興行収入1位(歴代世界5位の興行収入)は、中国のアニメーション映画『ナタ 魔童の大暴れ』で、90%以上を中国市場で稼いでいます。
こうした巨大市場をもたない国の作品が、このレベルの興行収入をたたき出したというのはとてつもない快挙であり、日本のみならず、世界の映画関係者が夢を見るような出来事なのです。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章』北米版ポスタービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable (C)Koyoharu Gotoge / SHUEISHA, Aniplex, ufotable
世界で「まんべんなく売れている」ことが土台に
さらに、『無限城編』のすごいところは、どこか特定の国だけでヒットしているのではなく、世界中でまんべんなく売れているところです。
前述のBox Office Mojoで、ハリウッド作品の北米市場でのシェア率を見ると、おおむね30%から40%前後を北米市場で稼いでいることがわかります。世界的に普及している作品はだいたいそれくらいのシェア率で推移するということです。
『無限城編』は現在、日本で379億円の興行収入ですから、世界興行収入における日本のシェアはだいたい37%くらいで、国内4割弱、海外6割強という、大ヒットしたハリウッド映画と同じくらいの割合となっています。ちなみに『無限城編』世界興収の北米シェアは18.3%で、中国では公開が始まったばかり。つまり、世界でまんべんなく売れていないと、1000億円という数字は出せないのです。
この成績は『スパイダーマン』シリーズなどを配給してきたソニー・ピクチャーズが同作の配給を担当していることも大きな要因と思われます。ハリウッドメジャー会社の世界中の配給網を使えることで、世界中の劇場でブッキングできるのでしょう。しかし、『鬼滅の刃』ひいては日本アニメ自体の人気が下支えしているのも間違いないでしょう。
