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「コーヒーは異教徒の飲み物で体に悪いから」カフェオレ誕生のまさかの背景と、外国人がおいしさに驚く日本のドリップコーヒー

「コーヒーは異教徒の飲み物で体に悪いから」カフェオレ誕生のまさかの背景と、外国人がおいしさに驚く日本のドリップコーヒー

カフェオレが誕生した意外な理由

コーヒーにミルクを合わせるようになったのは、17世紀のこと。フランスの著名な医師、シュール・モナンが薬として用いたのが最初だといわれています。

当時のフランスでは、「コーヒーは体に悪い」という迷信が広まっていました。もともとイスラム世界の飲み物であったことから「異教徒の飲み物」というイメージもありましたし、コーヒーが一気に広まっていくのを快く思わなかったワイン商たちが、医師たちに依頼してコーヒーの健康への悪影響を主張したともいわれています。明確な根拠はないのですが、体に悪いと信じた人たちは大勢いました。

そこでモナンは、「フランスの美味しい清純なミルクと合わせればコーヒーの毒性は消え、健康によい」といってカフェオレを推奨したのです。ミルクと砂糖を入れたコーヒーを飲むと、実際に元気になった感じがしたことでしょう。飲みやすさもあって、一般にもカフェオレが広まっていきました。

日本で花開いたドリップコーヒー

先ほどもお伝えしたように、現代の世界で主流なのはエスプレッソであり、ヨーロッパの家庭で手軽に楽しめる抽出器具としてはエスプレッソメーカーの「マキネッタ」や浸漬法の「フレンチプレス」が一般的です。

一方、日本ではドリップコーヒーが人気になりました。日本の家庭で淹れるコーヒーといえば、普通、ドリップコーヒーが想起されるでしょう。

とくに、粉を入れた紙製のフィルターを専用のドリッパーにセットしてお湯を注ぐ「ペーパードリップ」がもっともポピュラー。ドリップコーヒーの器具メーカーで有名な「ハリオ」も「カリタ」も日本の企業です。

日本独自の喫茶店文化の中で進化したのが「ネルドリップ」です。昔ながらの喫茶店で、ペーパーの代わりに「ネル(フランネル)」という布素材をフィルターとして使っているのを見たことがある人もいるのではないでしょうか。紙なら吸収してしまうコーヒーオイルも抽出されるため、トロリとした質感と甘みが出るとされています。

ネルフィルターは水に浸けて冷蔵庫で保管するなど、管理に手間がかかりますが、日本の喫茶店ではよく見かける抽出方法です。古くからのコーヒー愛好家の中には、家庭でも自分のネルフィルターを「育てて」いる人も少なくありません。しかし、ほかの国でネルドリップを見かけることはほとんどありません。

ネルドリップが手間を愛されるのに対して、手軽さを追求したドリップもあります。一杯分ずつ個包装され、お湯を注ぐだけで手軽にコーヒーを楽しめる「ドリップパック(バッグ)」は日本発の商品です。海外ではほとんど見かけないので、日本を訪れた外国人に驚かれます。

ペーパードリップからネルドリップ、ドリップパックまで。ドリップという抽出方法はヨーロッパで生まれたものの、日本で花開いたといっても過言ではないと思います。

不思議なことに家庭用のカプセル式コーヒーマシンについては、日本ではネスプレッソがメジャーで、これは名前のとおりエスプレッソです。近年ついにカプセル式のドリップコーヒーマシンであるKEURIGが日本でも展開を拡大しており、日本におけるドリップの楽しみのバリエーションがさらに増えるということで、非常に期待しています。

#2に続く

文/井崎英典 写真/Shutterstock

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