11月22日、23日に鈴鹿サーキットで行なわれるスーパーフォーミュラ最終ラウンド。2025年シーズンのシリーズチャンピオンを決する大会となるが、既報の通り今回は第10戦〜第12戦が開催される怒涛の3レースフォーマットとなっており、これが王座争いの展開にも大いに影響を与えそうだ。
まずは今回の変則レースウィークの流れを整理する。これまでの2レースフォーマット同様、金曜日には60分のフリー走行が2回行なわれる。そして土曜日は朝8時からセッションがスタート。まず第11戦の予選が実施され、その後1時間強のインターバルをおいて第12戦の予選を実施。同日午後には27周で競われる第11戦の決勝レースが行なわれる。
そして日曜日はまず、10月の富士スピードウェイで実施予定も悪天候で中止となった第10戦決勝の代替レースが、午前中に行なわれる。レースは19周、タイヤ交換義務は無しだ。そして午後2時半より、シーズン最終戦となる第12戦決勝レース(31周)を迎える。
この変則スケジュールを踏まえた上で、タイトル争いの状況を見ていく。今大会は週末を通して最大66点が獲得可能となっているため、計算上は現状6人のドライバーにチャンピオンの可能性が残されている。
1. 坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)104.5ポイント
2. 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)90ポイント
3. 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)90ポイント
4. 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)81ポイント
5. 野尻智紀(TEAM MUGEN)63.5ポイント
6. サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S)47ポイント
ただ、野尻とフェネストラズは坪井とはかなり大きな点差がついており、特にフェネストラズは仮に3レースで全勝してもなお逆転王座の可能性は高くないという厳しい状況。基本的には坪井、岩佐、太田、牧野を主役としたタイトル争いとなっていくことが予想される。
■スプリントの第10戦がタイトル争いを混沌とさせる?
その中でまずひとつ目の鍵となるのが、代替開催の第10戦。このレースは、10月に富士で行なわれた予選の結果がそのまま採用されることになった。ポールポジションは牧野で、イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)を挟んで太田が3番手、岩佐も4番手につけている。一方でポイントリーダーの坪井は7番手に沈んだ。
確かに坪井とTOM'Sはレース強者であり、決勝での追い上げが真骨頂だ。しかし今回の第10戦はタイヤ交換義務なし+19周のいわば“スプリントレース”。しかもオーバーテイクポイントが限られている鈴鹿となると、彼の強みは活かしづらいと言わざるを得ない。
関係者も第10戦は“スタートの戦い”になると予想する向きもある。無粋なタラレバではあるが、もし第10戦が予選順位通りの結果で終わったら……現在ランキング4番手の牧野が最も多くのポイントを稼ぎ、ランキングトップの坪井が最も獲得ポイントが少なくなるわけだがら、上位4人の点差がグッと縮まることになる。もっとも、順番としては第11戦→第10戦→第12戦の順で行なわれるのだが。
ともかく、追いかけるライバル勢、特に牧野にとっては恵みのフォーマットと言える。またDANDELIONの吉田則光監督曰く、牧野はここ最近の不調から脱却すべく、富士戦に向けて出来る限り多くのパーツを交換してきたという。その効果は富士戦でのポールという形でも表れており、まさに追い風が吹いている。
■失敗できない“土曜朝”
そして同じくレースウィークにおけるキーポイントと言えるのが、土曜日の午前中に立て続けに行なわれる第11戦・第12戦の予選セッションだ。
当然ながら、タイトルのかかったレースの予選セッションが重要なのは言うまでもないのだが、今回特殊なのは2レース分の予選が立て続けに実施されるということ。間には1時間強のインターバルがあるとはいえ、チームとしてもああだこうだとセットアップを練り直している時間はない。つまり第11戦予選でセットアップを“外して”しまって中団〜下位に沈んでしまったドライバーは、そのまま第12戦の予選でも同じような順位に甘んじてしまう可能性が大いにある。土曜日朝に向けたマシンの仕上がりは、2レース分の結果を左右するといっても過言ではない。
この予選の結果は、特にDANDELIONのふたりにとって大きな意味を持つと言える。例えばTOM'Sの坪井&フェネストラズ、MUGENの岩佐&野尻に関しては、後者のドライバーは現状チャンピオンの権利があるとはいえ既に点差は大きく、状況次第ではレースウィークのどこかでチームメイトのサポート役に回る可能性もある。しかし太田と牧野はポイント差も近く、どちらも王座が射程圏にある立場。レース戦略でどちらが優先権を得るかは、「トラックポジションでどちらが前か」になってくるはずだ。
思い起こされるのは、開幕の鈴鹿大会。第1戦の決勝レースでは、セーフティカーラン中の10周目にピットウインドウオープンになったため、全車がピットへ。この時太田のすぐ後ろを走っていた牧野は、ダブルピットストップにより太田のタイヤ交換作業が終わるのを待たねばならず、大きくタイムロスして順位を下げた。今週末も同じようなシチュエーションが起きる可能性は十分あり得るため、特にDANDELION勢としてはチームメイトの前で予選を終えたいところだろう。
これらの要素から、今季タイトル争いの情勢は土曜日の午前を終えた時点である程度ハッキリとしてくるかもしれない。

