どんどん 2 人ともキャラクターに近づいていった
ここからは映画についてお話を伺ってまいります。芦田さんは本作の主演として並々ならぬ思い、そして撮影にあたってのご準備もあったかと思いますが、スカーレットという役にはどんな思いで向き合われましたか?
芦田:
深く悩んで苦しんでいるキャラクターだったので、それをどうやって表現しようかなっていうのは私自身悩みました。体当たりじゃないとできないシーンがたくさんあったので、本当に体当たりで向かっていこうみたいな感じで演じさせていただきました。
HP に「叫ぶシーンでは戸惑いもあった」とのコメントもありましたが、どのように乗り越えていかれたんですか?
芦田:
悲しみの叫びだったり、あるいは怒りなのか、奮い立たせる叫びなのか、色々種類があるんです。それってなかなか出すことのない声なので、どんな風に表現したらいいんだろうっていう意味で、迷いというか戸惑いがあったんですけど、実際にとにかくやってみて、何とかスカーレットに近づいていけました。
監督はそのお姿を見ていていかがでしたか?
細田:
芦田さんの後ろ姿を見ながら収録をしてたんですけど、こうやってお会いすると、すごくかわいらしくて、非常に利発な方。このスカーレットという役は王女様ですけど、地面を這いずり回って、泥だらけになって頑張っているような人で、(芦田さんとは)イメージが全然違う。違うのに、収録をしていくとだんだん芦田さんの後ろ姿がスカーレットに見えてくるっていうか。いつも堂々とピンと背筋を伸ばしてスカーレットと向き合ってお芝居をしてくださるっていう姿が、今も思い浮かんで素晴らしかったなと思い出します。
岡田さんは長編アニメーション映画の声優が初挑戦とのことですが、本作に参加されてみていかがでしたか?
岡田:
本当に楽しくて、毎日行くのが楽しみでした。ブースで監督が聞いてくださっているのですが、毎回一つ一つのセリフが終わると、監督が「いいですね〜!」と毎回おっしゃってくれるのが本当に嬉しくて。監督の人柄が作品にも出ていますし、アフレコの最中でも暖かく監督が包み込んでくれるような空間だったので、とてもやりやすい環境だったなと思います。
そうだったんですね、細田作品ファンともコメントをされていましたが、作品の内側に入ってみたお気持ちはいかがですか?
岡田:
これとても複雑なんですけど、やっぱり一ファンとして何も知らないでスクリーンで見たかったっていうのがちょっとだけあって(笑)。でも今回は内側に入れたことで、より監督のこの作品の素晴らしさを知れたので、本当に嬉しかったです!
監督はいかがでしたか?
細田:
映画に出てくる聖っていう役が岡田さんとすごく近いなってことを最初から思っていました。もともとこの映画は『ハムレット』というシェイクスピアの作品がベースになっていて、そのハムレットの主演もされている数少ない方のお一人なんで、理解も深いし、それに人間性とか気持ち、優しさも、聖とものすごい近いなと思ってたんで、もう聖本人だと思って収録をしていました。
生きることだったり、愛についてのメッセージがたくさん詰まっている作品
監督にお伺いします。前作『竜とそばかすの姫』から4年。これまでずっと夏公開でしたが、今回初めての冬の公開となります。今回の制作にあたって様々な挑戦や覚悟があったかと思いますが、企画段階から制作にかけてどんな思いで作成されたのかお聞かせください。
細田:
今回は「生と死」を大きなテーマに掲げた作品でして、それだけにすごくスケールの大きな作品になったんですね。絵も今までにない規模の作品になりました。だからいつもだったら 3年に1回のペースで作るところが全然間に合わなくて、もう1年ってなって、それでもさらに間に合わなくて、半年ぐらいかかってようやくできたんです。そのぐらい密度のある作品になって、なおかつ芦田さんや岡田さんをはじめ、声もすごく重厚なお芝居を皆さんにいただいて、ちょっと時間がかかりましたけど、自信を持って見てもらえる作品になったと思います。
今回は復讐に燃え戦うことでしか生きられないスカーレットと、戦うことを望まない聖という、真逆の 2 人が共に死者の国で旅をします。芦田さんと岡田さんが共演されるのは 5年ぶりとのことですが、今回お互いにお話などされたりはしましたか?
芦田:
アフレコを一緒にやらせていただいて、ブースで少しお話させていただいたんですけど、前回はちょっとね。なんていうか……。
岡田:
嫌な役だったんだよね? でも今回はすごい、いいやつだったよね(笑)。
では前回とはまた違った雰囲気で2人で挑戦されたということでしょうか?
芦田:
そうですね! いい思い出ができました! 聖はすごくいい人です(笑)。
スカーレットと聖は激しいアクションシーンなどもありますが、監督はどのような演出をされましたか?
細田:
最初、絵がない段階で声を出してもらうプレスコを行い、絵を作った上でさらにアフレコで厳密にもう1回声を当ててもらって、アクションとぴったり合わせるところまでやってもらいました。特にこのスカーレットの声は迫力があって凄みがあり、そんな凄みが芦田さんの体のどこから出るんだというぐらい、力のこもった声がアクションシーンを盛り上げてくれていると思います。
今お二人の中で聖はいい人だったというお話もありましたが、お二人のバディっぷりについてはいかがでしたでしょうか?
細田:
アフレコでお二人がブースに入って、一緒にお芝居をしている後ろ姿を見ていると、聖とスカーレットという最初は対極な二人が旅をして、だんだん距離が近づいてくるエモーショナルな感じがお二人のお芝居や姿からもすごく伝わってきました。それがやっぱり映画の中に力を与えてくださっているなと感じ、録っていながらもグッと来るものが何度もありました。
監督からグッと来られたという話がありましたが、先日のイベントで岡田さんは本作を見て初めて号泣したともお話されていましたよね。いかがですか?
岡田:
号泣しましたよ〜。自分が関わる作品を見た時は、自分の至らない部分を見てしまったりとかあるんですけど、今回本当に没入して世界観に入らせてもらって、よりスカーレットの悲しみであったり、苦しみであったり、そして希望が見えた瞬間に、聖をやっていたからこそ彼女の気持ちや感情が分かったので、聖として、そして自分としてもすごく嬉しい気持ちになって。思わず嬉し涙が流れました。
嬉し涙だったんですね。
岡田:
スカーレットをずっと最後まで見届けたいなっていうふうに思いながら見させてもらっていました。彼女の人生の選択と言いますか、その選択が一歩間違えると変わってしまうけれど、彼女の辿る道が本当に聖でよかったなと。だからこそ、スカーレットの隣に立てたことがすごく嬉しかったなと思います。
スカーレットの隣に立ちながら、スカーレットの好きな部分は瞳ともおっしゃっていました。この瞳の表現についてはいかがですか?
岡田:
本当に瞳に注目してほしいです。彼女の目が少しずつ変わっていくんですよ。その変わっていく様が、こちらの感情をこう沸々と沸き起こさせてくれると言いますか。だからスカーレットの魅力は瞳なんじゃないかなと思っています。
芦田さんは演じている際にスカーレットの瞳には注目されていましたか?
芦田:
例えばセリフはないんだけど、瞳がちょっと揺れるだけで気持ちが伝わってくるようなシーンとかが、どんどん完成するにつれて増えていったんです。それがすごく私も印象的だなと思っていたので、ぜひ注目していただければ嬉しいです。
ファンの皆様に公開を迎えての今の率直なお気持ちを教えていただけますか?
芦田:
プレスコという一番最初に声を入れたのが1年半前くらいで、もう全然まだまだ公開は先だなと思っていたんですけど、気が付いたらもう公開。あっという間に皆さんの元にお届けできる日が近づいていて、少し緊張もあるんですけど、本当に早くたくさんの方に見ていただきたい気持ちでいっぱいですね。
岡田:
とにかく早く見てほしいなと思いますし、できれば劇場の大きいスクリーンでこの作品の素晴らしさを見ていただけたら本当に嬉しいなと思っております。
細田:
先ほども言いましたけども、作るのに4年以上という非常に長い時間がかかったので、ようやく皆さんの元まで届けるっていうところまでたどり着いたなという感じです。ここまで来れたのは、優秀なスタッフ達が試行錯誤してこの作品に取り組んでくれたこと、素晴らしい俳優の皆さんが映画に命・魂を吹き込んでくれたから。みんなの力のこもった作品がやっと皆さんに届けることができて、今すごい嬉しい気持ちです。
最後に代表して芦田さんよりお集まりいただいた会場の皆様にメッセージをお願いします。
芦田:
この映画は生きることだったり、愛についてのメッセージがたくさん詰まっている作品なんですが、誰かを愛する、何かを愛する。そして自分自身を愛するということはすごく大事なことなんじゃないかなと私は思わせてくれた作品だなと思います。ぜひ皆さんにとっての生きることだったり、愛って何だろうって考えながら見ていただけると嬉しいです。大阪の皆さん、今日はありがとう〜!
『時をかける少女』から19年。様々なテーマで世界中の観客を魅了してきた細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』。「生きるとはなにか?」という本質的な問いを観る者すべてに突きつける本作は、壮大な世界観と新しいアニメーション表現で心が揺さぶられます。スカーレットの果てしなき復讐の旅路の行く先は必見です!
※最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。
写真/筒井麻由 文/日高ケータ

