15歳で人生が変わってしまったら
――本編をご覧になっての感想はいかがでしたか?
どの出演作品でも、最初はなかなか冷静に観ることはできないのですが、2回、3回と観たときに”自分がもし15年入れ替わったとしたら、15年前は13歳‥‥”と考え込んでしまって (笑) 。やはり自分の人生は自分のもので、過去の日々の一瞬一瞬の積み重ねがあるから今がある。それを他の人に託すことになってしまう。託すって言っても、陸とまなみは託すと考えなければいけない状況だから言っているというところもあって。彼らからすると”奪われた”という感覚かなと感じました。
明日、急にそうなる覚悟もできてないし、”「やり残したことがたくさんある! !」と思ってしまうな”と考えたら、これまでの人生も大切にしたいし、今やりたいと思うことは、しっかりとやりたい。いつかこんな人生が訪れるとは思っていないけれど、自分の人生を悔いなく生きたいと思わせてくれる作品だなと思いました。
――陸とまなみが入れ替わった15歳という年齢のとき、芳根さんはどんな女の子だったんですか?
15歳で事務所に入りました。自分の人生がどうなるかは分からないタイミングでした。なので、もし違う人物と入れ替わってしまったら?という状況に、いまの年齢より15歳の方が、もう少し楽観的にいられたかもしれません。”いつか戻る”というように。
やはり20歳、22歳など大学を卒業して社会に出る年齢になってくると、人生が大きく変わっていくかもしれないじゃないですか。”ちょっと待って。踏ん切りはどこでつける?”と思いますよね。
芳根京子は元に戻りたい?
――本作のように、15歳で誰かと入れ替わったとして30歳のとき芳根さんは元の体に戻りたいですか?
自分がいま陸だとしたら、もう戻れない。戻りたくない!となっているかもしれません。0歳から15歳まではまなみ、15歳から30歳までは陸の人生。確かにスタートはまなみだけれど、”人生の割合はどっち?”と思ってしまいます。結婚して子どもが生まれて‥‥となるとやり直しがきかない。母親になっている今。それを手放すことが果たしてできるか?と。一番苦しいポイントですよ。
自分独りの人生だったらどうにでもなる。家庭ができると、もう自分独りだけの人生ではないから。でも元の体に戻りたいという、まなみの気持ちもわかります。
――なかなか決断が難しいですよね。芳根さんはこの映画の結末をどう感じましたか?
私はこのラスト、すごく腑に落ちました。どうなったとしてもふたりが、この先の人生が幸せで笑っていてくれたら、それでよくて。”ふたりの幸せを願いたい”というラストだと思っています。
――それっていい考え方ですね。そんなことを踏まえて、これからこの作品を観る皆さんにメッセージをお願いします。
ある意味、淡々としていて静かな作品だからこそ、大きいスクリーンで綺麗な音で観ていただけたら嬉しいです。きっと観終わった後では、タイトルの受け止め方が全然違うものになっているのではないかと思います。
TVの番宣などで「『君の顔では泣けない』が公開です」と言うと、周りの方から「なんかすごく強い言い方じゃない?」と言われることもあったのですが、実は‥‥とお話しすると分かっていただけるんです。映画を観終わった後、改めて、このタイトルを受け止めていただけると嬉しいです。
取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 立松尚積
