
イングランドの“10番争い”に複数メディアが注目。ベリンガムかロジャーズか。指揮官は「君たち2人はライバルだ」と発破をかける【現地発】
イングランド代表が、北中米W杯の欧州予選を8戦全勝で終えた。
8試合で22得点・無失点という圧巻の成績を残した。セルビア、ラトビア、アルバニア、アンドラといった格下と同じグループに入った幸運はあったとはいえ、英BBC放送が「驚異的な成績」と伝えたように、数字が示すとおりの圧倒的な強さだった。
イングランドはすでに10月の時点でW杯出場を決めており、11月のセルビア戦(H)とアルバニア戦(A)は消化試合となった。それでもチームは集中を切らすことなく、強化と調整を目的にした2試合をいずれも2-0でしっかり勝ち切った。
しかし、この2試合で注目を集めたのは内容面ではなかった。肩の怪我で9月の予選では招集外となり、10月に実戦復帰していたにもかかわらず代表に呼ばれなかったMFジュード・ベリンガムの扱いである。
トーマス・トゥヘル監督は、11月シリーズでベリンガムを久々に招集。その起用法に注目が集まった。結果は、セルビア戦はベンチスタートで途中出場、続くアルバニア戦で先発出場。ベリンガムの先発は2025年6月7日のアンドラ戦以来、実に5か月ぶりとなった。
アルバニア戦のベリンガムは随所で効果的なプレーを見せた。だが、最大の話題となったのは84分の交代シーンである。彼はすでに警告を受けており、もう一枚提示されればW杯初戦が出場停止になる状況だった。そこでトゥヘル監督は迷わず交代を決断した。
ただ、モーガン・ロジャーズとの交代が告げられた瞬間、ベリンガムは不満を露わにする。これについてドイツ人指揮官は次のように語った。
「映像での確認が必要だが、彼がハッピーでなかったのは間違いない。競争心の強い選手は誰だって交代を喜ばない。だが、最終決断を下すのは監督の仕事だ。大事なのはコミットメントとリスペクト。腕を振り回したところで我々の判断は変わらない。彼は受け入れる必要がある。友人(ロジャーズ)がサイドラインで出番を待っているのだから、尊重して受け入れ、前に進むべきだ。私自身、事を大きくしたいわけではない。振る舞いが大事なんだ。決断は下されており、選手として受け入れなければならない」
英紙『デーリー・テレグラフ』は「誰よりも目立つ存在。それがジュード・ベリンガムだ」と指摘する。実際、この試合では他にも注目点が多かった。
アルバニア戦で2ゴールを挙げたハリー・ケインは、代表通算得点を78点に伸ばし、「サッカーの王様」ペレの77点を上回った。また、マンチェスター・シティのニコ・オライリーは11月シリーズで初招集され、左SBとして2試合連続出場。落ち着いたプレーを披露し、収穫となった。にもかかわらず、英メディアの視線はベリンガムの交代時の振る舞いに集中したのである。
スター選手だからといって先発が保証されているわけではない──トゥヘル監督はそう明言しているが、ベリンガムも今、定位置争いの真っ只中にいる。
イングランド代表は4-3-3、または4-2-3-1を採用。この中で攻守のバランスを担う8番にはデクラン・ライス(アーセナル)、アンカーの6番にはエリオット・アンダーソン(ノッティンガム)が固定されつつある。
この2人はトゥヘル体制の「要」だが、10番の位置はまだ定まっていない。デーリー・テレグラフやBBCなど複数メディアは、この10番を争うのがベリンガムとロジャーズだと見ている。2人はイングランド中部バーミンガム出身の幼馴染。トゥヘル監督も代表合宿で2人を呼び寄せ、「君たち2人はポジションを争うライバルだ」と発破をかけたという。
実績ではベリンガムが大きく上回るが、トゥヘルのロジャーズへの評価は極めて高い。強化試合を含めたトゥヘル体制の10試合で、ロジャーズは全試合に出場。6試合で先発し、計531分プレーしている。一方ベリンガムは4試合の先発で、計374分の出場にとどまる。
今回の予選でも、復帰したベリンガムをいきなり先発に戻すことはせず、セルビア戦の10番にはロジャーズを起用した。イングランドにはコール・パーマー(チェルシー)やフィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)といった10番候補もいるが、英メディアの多くは「10番争いはロジャーズ対ベリンガム」と見ている。
では、誰がW杯初戦の10番に座るのか。
BBCは「ベリンガムは主要国際大会での経験値が高い。わずかにベリンガムの先発確率が高い」と予想。ただ同時に、今回のW杯は北中米での開催であり、酷暑と長距離移動が大きな要素となる。そのためBBCは「トゥヘル監督は先発と交代を巧みに使い、ローテーションを組む可能性が高い」と指摘している。「ベリンガムもロジャーズも、先発でもベンチでもそれぞれの役割を果たせる」と続ける。
トゥヘル監督は代表メンバーに「互いへのリスペクト」を求めている。兄弟愛のような結束力でW杯本番に臨みたい──そう考えているのだ。一方でデーリー・テレグラフは、ベリンガムを「エゴの強い選手」と評する。しかし同紙は、これはネガティブな意味に限らないと説明する。
「トゥヘルのチームで、交代にあれほど抗議する選手はベリンガムだけだ。だが、それは“健全な傲慢さ”と言える。たとえば24年欧州選手権・スロバキア戦のゴラッソ──90+5分にオーバーヘッドで同点弾を決めると、ベリンガムはスタンドに向かって『誰がやるんだ? 俺だろ?』と叫んだ。こうした傲慢さこそが、勝負を決める力になっている」
イングランド代表はW杯で優勝候補のひとつである。そのなかで鍵となりそうなのが、ベリンガムをどう起用し、どう力を引き出すのか。今後もその動向に注目していきたい。
取材・文●田嶋コウスケ
【画像】日本は何位? 最新FIFAランキングTOP20か国を一挙紹介!“アジア2位”が20位に浮上、トップ10から転落した強豪国は?
【記事】「ポット2? いやポット5レベルだ」“低調”な韓国代表を母国メディアが辛辣批判「ガーナの2軍相手に衝撃の低パフォーマンス」「W杯でGS突破すら難しい」
【記事】「BとDがやばい」「イタリアはこの組み合わせなら…」欧州予選プレーオフの対戦カードにファン注目!「ポーランド、ウクライナ、スウェーデンのうち1つしかW杯に行けないとか地獄過ぎる」【W杯予選】
