元F1ドライバーのフェリペ・マッサが元F1責任者であるバーニー・エクレストンとフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)、FIAに対して提起している損害賠償訴訟は、被告側の訴訟却下を求める申し立てが退けられ、訴訟手続が継続されることとなった。
マッサは2008年にわずか1ポイント差でルイス・ハミルトンに敗れチャンピオンを逃したが、エクレストンや当時のFIA会長マックス・モズレーが”クラッシュゲート事件”を隠蔽したことで、チャンピオンシップの結果に直接影響を及ぼしたと主張。故意にクラッシュを引き起こすことで結果が操作されたシンガポールGPが除外されていれば、自身が正当なチャンピオンだったとして、6400万ポンド(約129億円)の損害賠償をエクレストンとFOM、FIAに対して求めている。
双方は10月にロンドン高等法院で主張を提出し、3日間のヒアリングの後、訴訟が継続されるかどうかの判断が保留されていたが、ロバート・ジェイ判事は木曜日、訴訟は無効だと主張する被告側の申し立てを却下した。
マッサ側が、FIAには不正行為の可能性を調査する義務があると主張したのに対し、被告側は契約違反の可能性はマッサには無関係であると主張した。ジェイ判事は被告側の主張を支持したが、その義務はFIAメンバーに対して負うものであり、マッサに対してではないと説明した。
さらに被告側は、マッサが2009年9月のFIA調査後に何の行動も起こさなかった以上、その損失は自己責任だと主張した。しかしジェイ判事はこれを退けた。エクレストンが2023年のインタビューで「当時FIA会長だったマックス・モズレーと共に陰謀を隠蔽した」と発言したことで、マッサは重要な事実を知り得たからである。ただしマッサの主張の一部は時効が成立しているか、フランスの法が適用される。
この訴訟は今後、公判手続きへ移行する。ジェイ判事は、契約違反の教唆および共謀に関する主張について、マッサ側に「勝訴の見込みが十分にある」と推定した。その理由として「これらの主張は、マッサが直接執行可能な契約上の権利を有していることを必要としない」ためである。
ただし判事は、裁判に勝つための十分な証拠を確立することはマッサにとって困難な課題だと警告した。ただしmotorsport.comの取材によればマッサ側の弁護士は現在、被告側へメールやテキストメッセージを含む追加文書を要求しており、これにより主張を裏付けることができる可能性があるという。
判事はまた、損害賠償を命じることはできても、2008年シーズンの結果を覆すことはできないと指摘した。
マッサはこの判決を受け、「これは並外れた勝利だ。私にとって、正義にとって、そしてF1に情熱を注ぐ全ての人々にとって重要な日である」と語った。
「裁判所は我々の主張の強さを認め、被告が2008年の真実を隠蔽することを許さなかった。あの故意のクラッシュは私の世界タイトルを奪い、当時の当局はスポーツの健全性を守る代わりに事実を隠蔽する道を選んだ」
「彼らは訴訟を阻止するためあらゆる手段を講じたが、我々の戦いは正義のためだ。今日、決定的な一歩を踏み出した。裁判で真実は明らかになる。徹底的に調査する。被告間の共謀を証明する全ての文書、通信記録、証拠を提示する」
「私はこれまで以上に決意と自信に満ちている! 真実の全貌が明らかになれば、正義は果たされる。私自身のため、ブラジル人のため、ティフォシ(フェラーリファン)のため、誠実なスポーツに値する全てのモータースポーツファンのため、そしてF1の未来そのもののために」

