最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
<アニメノミライ・ねとらぼ支店>なぜ国は「作品に口を出さない」と誓ったのか? エンタメ新戦略に見る“クールジャパンの反省”と“公金支出のジレンマ”

<アニメノミライ・ねとらぼ支店>なぜ国は「作品に口を出さない」と誓ったのか? エンタメ新戦略に見る“クールジャパンの反省”と“公金支出のジレンマ”

「口を出さない」宣言の裏にある、過去の“トラウマ”

 公式資料では、この原則の理由について「クリエイターの表現の自由を保障するため」とさらりと書かれています。もちろんそれは正論ですが、業界を長く見ている人であれば、この短い一文の裏に「過去の経緯」への配慮、あるいは「防御策」を感じ取れるはずです。

 近年、公的資金とコンテンツを巡っては、いくつかの「事件」が暗い影を落としてきました。

 記憶に新しいのは、助成金の不交付を巡るトラブルです。出演者の不祥事を理由に助成金が取り消された映画『宮本から君へ』の訴訟(2019年取り消し決定 →2023年11月に最高裁で処分取り消しが確定)や、展示内容を巡ってやはり2019年に補助金が全額不交付となった「あいちトリエンナーレ」の一件などが挙げられます。

 さらに、厳密には補助金の問題ではないものの、業界関係者の脳裏に焼き付いているのが「国会での吊し上げ」の光景です。

 2020年2月の衆議院予算委員会第二分科会では、野党議員が人気アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』とJAなんすん(南駿農業協同組合)のコラボポスターをパネルで提示。「スカートのひだの陰影が性的に見える」などとして、公的な組織が扱うにふさわしいのかと政府側を厳しく追及しました。

 これらは主に文化庁(文部科学省)管轄の話ではありますが、クリエイティブの現場には「国のお金をもらうと、表現内容に干渉されるかも」「『公益性』という名のリスク審査が入る」という強烈な萎縮(トラウマ)を残しました。冒頭の「こっちを向いて欲しくない」という言葉は、こうした背景から出てきた本音です。

「パワポ100枚」と「カネを払う方がエライ」構造からの脱却

 では、なぜ今回、新たな原則を打ち出したのでしょうか?

 そこには、日本の行政システムが抱える「スピード感の欠如」と、産業界が抱える「構造的な危うさ」への強い危機感があります。

 エンタメ社会学者の中山淳雄氏による記事(経産省・佐伯文化創造産業課長へのインタビュー)では、このあたりの事情が赤裸々に語られています。

 これまでの日本の予算は「積み上げ方式」であり、「これを使ったらどういう効果があるか」を細かく証明するために、「毎回パワーポイントで100~200ページもの資料」を作成する必要があったといいます。同じ発想で、補助金を受ける側も申請時と報告にかなりの量の書類を作る必要があり、そこでかなりエネルギーを使ってしまっていることは否めません。

 しかし、韓国やフランスなどの競合国がトップダウンで巨額投資を決める中、資料作りにエネルギーを費やしていては勝負になりません。今回の「制度を簡素化する(真っすぐ届ける)」という原則は、この「真面目すぎて遅い日本」を脱却するための行政側の改革です。

 そしてもう一つ、記事で佐伯課長が指摘するさらに深刻な問題が、「流通と制作のいびつな関係」です。佐伯氏は、欧州、例えばフランスなどでは、映画興行や放送・配信事業者といった「流通側」がお金を出し、制作を支援するエコシステムが構築されていると話します。「制作が止まれば、売るものがなくなる」という相互依存が機能しているからです。

 一方で日本の場合、どうしても「お金を払っている方(流通・発注側)がエライ」という意識が強固になりがちだと指摘します。

 産業界の自助努力だけに任せていると、資金力のある流通側の力が強くなりすぎ、バーゲニング・パワー(交渉力)の不均衡によって、現場である「制作側の基盤」がボロボロになってしまいかねない──。

 だからこそ、国が介入し、「大規模・長期的」に制作現場を直接支援する必要がある。今回の5原則は、単なるバラマキではなく、放っておくと崩壊しかねない「制作の足腰」を守るための産業政策を目指したものと読めます。

配信元: ねとらぼ

提供元

プロフィール画像

ねとらぼ

「ねとらぼ」は、ネット上の旬な情報を国内外からジャンルを問わず幅広く紹介するメディアです。インターネットでの情報収集・発信を積極的に行うユーザー向けに、ネットユーザーの間で盛り上がっている話題や出来事、新製品・サービスのほか、これから興味関心を集めそうなテーマや人物の情報などを取り上げ、ネットユーザーの視点でさまざまなジャンルのトレンドを追います。

あなたにおすすめ