2025年のスーパーフォーミュラ最終ラウンドは、土日で第10戦、第11戦、第12戦の3レースが実施されて王座を決するという異例のスケジュールとなった。その経緯について、シリーズプロモーターである日本レースプロモーション(JRP)が定例会見で語った。
事の発端となったのは、10月の第10戦富士の決勝レースが天候不良によって中止になったこと。JRPは年間12戦を維持すべく代替開催を検討した結果、最終鈴鹿ラウンドに第10戦の代替レースを組み込むことを決断した。
そして富士で通常通り行なわれていた第10戦の予選結果に関しては、今回の代替レースにおいてそのまま採用。そして決勝レースは19周で、タイヤ交換なしのスプリントレースとなる。
JRPの上野禎久社長は、会見で次のように説明した。
「本来、富士で中止となったレースは富士で開催すべきというのは第一義でしたが、スケジュール的には12月の上旬に来季に向けて始動する(※合同テスト兼ルーキーテストを開催する)ため、この最終戦の鈴鹿までにシーズンを完結させる必要がありました。そういった要件の中で富士での開催を検討はしたのですが、なかなか厳しかったです」
「その次のステップとして、鈴鹿サーキットで第10戦をできないかということになりました。この件に関しては、富士スピードウェイさんと鈴鹿サーキットさんには大変丁寧なご対応をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。また週末3レースということでチーム、ドライバーの皆さんには負担をかけるのですが、アスリート委員会の山本尚貴委員長を通じて、FRDA(選手会組織)と合意形成、理解促進を図りました」
「こういった形で開催できることを改めて嬉しく思うと共に、関係する皆さんには改めてお礼を申し上げたいです。我々としても、レースの結末を楽しみにしていたファンの皆さんに続きをお見せするのがプロモーターの本分という思いもありました。色々と負担がかかる部分もありますが、ぜひファンの皆さんには楽しんでいただきたいです」
結果的に非常にイレギュラーな週末となった今回の鈴鹿ラウンド。土日の2日間で予選を2本、決勝レースを3本行なう慌ただしいスケジュールとなるが、レースウィークの金曜日に予選を行なったり、祝日である24日(月)にレースを行なう可能性は検討したのかと尋ねられた上野社長は、次のように述べた。
「様々な選択肢を検討いたしました」
「金曜日の公式予選ができなかった理由を申し上げると、スーパーフォーミュラという最高峰のカテゴリーを行なう上で、オフィシャル含め万全の体制を整え、レースの安全性を担保することができなかったという点です。そういう点で金曜日はフリー走行に固めました」
「あくまでも最初に設定された鈴鹿戦のフォーマットに影響を与えない方法を模索した結果、日曜の予選(第12戦予選)を土曜日に移動することで、その空いた場所に(第10戦決勝を)はめ込むという形になりました」
またKONDO RACINGの代表でもある近藤真彦JRP会長はこれに続けて、「月曜日まで持ち越されると、チーム的にもコストがかかりますので……」と補足した。
そして、今回のフォーマットで特に異例と言えるのが2点。まずは富士で行なわれた予選セッションの結果を基に、鈴鹿サーキットで決勝レースを行なうという点。もうひとつが、第10戦がレース距離110kmのスプリントレースとして開催される点だ。
前者について上野社長は、「あの予選は公式結果が発行されてポイントも付与されていたので、その予選結果を(鈴鹿での代替レースに)活かすというのが前提でした」と説明。この対応に関する規則上の解釈等についてもJAFのレース部会の審議を経てクリアになったという。
そして後者のレース距離に関して上野社長は、10月の第10戦富士の流れを汲んでいるのだと語った。
当時、富士スピードウェイには濃い霧がかかっており、本来14時05分から始まる予定だったスタート進行を遅らせながら天候の好転を待った。そして最終判断が下され、中止が発表されたのが15時35分。もしこの時刻にスタート進行が開始できていた場合、日没までに110kmのレースが実施できる見込みであった。これはスーパーフォーミュラの選手権レースとして成立するギリギリの距離だ。
「もしあの時にフルレースをやる予定(のままで中止になっていた場合)だったら、(鈴鹿での代替レースも)フルのレース距離でやるところから(議論が)入っていったと思います」と上野社長。
「あの日(富士)の15時半に結論が出た時は、(15時半からスタート進行ができれば)日没時間から逆算すると110kmのレースが成立するという状況でした。ですから我々は15時30分までジャッジを待ったわけです」
「そしてそのレースをここでもう一度再現するのであれば、110kmで行なうのが正しいと考えています」
なおこのフォーマットについては賛否が分かれているが、ポイントリーダーの坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)は「全く理解できない」と語気を強める。彼は第10戦で予選7番手に終わっているが、追い抜きの難しい鈴鹿でのスプリントレースとなると、レース巧者の坪井と言えど順位を上げていくのはかなり難しいだろう。2連覇を目指す彼にとっては、間違いなく不利なフォーマットとなっている。
「正直、全く理解できないルール・フォーマットかなと思います」と坪井は言う。
「誰のためにもならないというか……(予選上位を占めた)ホンダ勢のためにはなるのかもしれませんが(苦笑)。19周、ピット義務なしでヨーイドンのレースをしたらどういう展開になるかは目に見えていると思います。だからこそ、(富士での)予選順位をそのまま反映することに関しても思うところはあります」
「残り3戦に向けて(ライバルに対して)14点のリードがありますが、ラウンド10で自動的に点差を縮められることになるので、残り2戦を同点で迎えるのとほぼ変わらないかなと思っています。正直厳しい戦いになっていますね」

