２年連続でア・リーグのサイ・ヤング賞に選出されたデトロイト・タイガースのタリク・スクーバルの去就について、米スポーツ専門局『ESPN』のカイリー・マクダニエル記者が記事を配信。2024年に18勝４敗・防御率2.39、25年には13勝６敗・防御率2.21の好成績でチームを牽引した29歳左腕に言及した。
24年シーズン終了時点での年俸総額が30球団中28番目だったタイガースが、エースを手放す可能性がある理由について「単純に言えば、スクーバルをデトロイトに留めておくには、莫大な費用がかかる」と説明し、こう続けた。
「29歳の左腕投手は2026年に契約最終年を迎え、そのシーズン終了後にフリーエージェントとなる予定だ。もし来冬に市場に出れば、ロサンゼルス・ドジャースのエース山本由伸が記録した投手最高額の３億2500万ドル（12年、約465億円＝当時）を上回る可能性があり、史上初の４億ドル（約600億円）投手になるかもしれない」
そんなスクーバルに対し、タイガースにはいつくかの選択肢を持っている。マクダニエル記者は11人の球界関係者への取材をもとに、「今冬にトレード放出」「今冬に放出せず、26年シーズンのチーム成績が振るわない場合、トレード期限に放出」「26年オフに契約延長を試み、放出の場合はドラフト１巡目指名権を取得」の３つのシナリオを提示した。
ひとつ目の「今冬にトレード放出」は、移籍で得られるリターンが釣り合わない理由から、関係者から最も支持されなかった。それでもマクダニエル記者は「市場が何をもたらすかを知ることは（タイガースの編成総責任者のスコット・）ハリスが好む手法。スクーバルのトレード交渉が可能という噂は続く可能性が高い」と見立てる。
最も支持を集めたのは、「今冬に放出せず、26年シーズンのチーム成績が振るわない場合にトレード期限で放出」だった。ただ、トレード期限の時期にプレーオフ進出の可能性が五分五分だった場合、タイガースは難しい判断を迫られる。ある代理人は「トレード期限を過ぎてもスクーバルを抱え、最終的にプレーオフを逃してしまったら大惨事だ」と語り、マクダニエル記者は以下のように綴った。
「今冬と26年のトレード期限、どちらの時期でスクーバルの価値がより高くなるのかは見解が分かれる。スクーバルを獲得できるようなビッグチームが、トレード期限時にどんな状況になっているのかを予測するのも難しい。一般的にはトレード期限での放出のほうが、見返りが少なくなると考えるのが妥当だ」
３つ目の「26年オフに契約延長を試み、放出の場合はドラフト１巡目指名権を取得」をマクダニエル記者は大胆な一手とした。
「スクーバルがFAとして去った場合、タイガースが手にするのは翌夏のドラフト１巡目指名権、それだけだ。この指名権を価値で示せば、約800万（約12億円）～1000万ドル（約15億円）ほどだろう」と、トレードとは異なって見返りは限定的。しかし、「同時にタイガースが再契約に向けてスクーバルを説得する時間も増える。もしかしたら両者が新契約で合意に達するかもしれない。スクーバルはデトロイトに残りたいと公言している。その可能性を排除することはできない」と提示した。
というのも、26年12月１日にMLB（オーナー陣）と選手会による労使協定が失効になる。新たな協定にはサラリーキャップ制度などが導入される可能性があり、高額契約が予想されるスクーバルの獲得に他球団が二の足を踏むかもしれないからだ。さらにロックアウトやストライキが起きるとも言われており、そんななかで独占交渉権を持つ期間にタイガースが契約をまとめ上げる可能性もある。
マクダニエル記者は、スクーバルの代理人を務めるのが高額契約を次々と成立させる剛腕スコット・ボラス氏である点、スクーバルが大学時代に受けたトミー・ジョン手術、22年には屈筋腱の手術を受けている点も「長期契約を予測するうえで考慮すべき要素」と付け加えている。
はたしてタイガースが誇る大エースの去就が決着するのは今オフか、来夏のトレード期限か、それとも26年オフか。
構成●THE DIGEST編集部
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