25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF(国際テニス連盟)大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情や、ヨーロッパのテニス環境を綴る転戦記。
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ひと口にヨーロッパと言っても、その中で各国ごとに異なるテニスのスタイルがあります。前回はスペインについて述べましたが、今回はイタリアにスポットを当ててみましょう。
とにかく重いスピンで無限にラリーするスペインに対して、イタリアやフランスなどは、より相手との駆け引きを重んじる傾向があります。相手が嫌がることは何かを考え、多彩なテニスをする選手が非常に多いと感じます。
これは国民性、国の文化という深いところとつながっていますが、テニスの本質である“対人”に根差しており、非常にテニスに向いている国民性と言えるでしょう。その中で、近年イタリアは自国でかなり多くの下部ツアー大会を開催しており、指導もかなり先進的で、現代テニスの先頭を走っている国です。
イタリア人はチャラチャラしているというイメージがあるかもしれませんが、実際は違い、ツアー大会会場でもイタリア人選手はかなり勤勉に練習するし、コーチが管理して強度の高いメニューもこなしています。トレーニングもトレーナーがしっかり見て、バランスのいいエクササイズを行ない、緻密な指導をしています。
国際大会の会場で様々なコーチを観察していると、練習で後ろに立って見ているだけだったり、誰かと話したり、ケータイをいじっているコーチ、正論ばかり語るけれど自分自身がそこまで勤勉でなく、実際に地味な練習をしないコーチも多くいます。
そんな中、イタリア人のコーチは平均的に意識が高く、特別なことを行なっているわけではないですが、ツアーレベルを知っているコーチが“標準”になっています。必要なことを知っているコーチから、非常に質が高い指導を受けていることが多いですね。
これはイタリアでATPツアーの大会も多く開催され、より世界レベルを知る指導者の数が増えていることも背景になっていると思います。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
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