
■『悪党に粛清を』や『ドクター・ストレンジ』のイベントで来日!
円卓の騎士の1人、トリスタンを演じた『キング・アーサー』(04)や悪役ル・シッフルの陰湿さが強烈だった『007 カジノ・ロワイヤル』(06)、そして2013年放送のドラマ「HANNIBAL/ハンニバル」のハンニバル・レクター役で大ブレイクしたミケルセン。日本でもじわじわとファンを増やし続けるなか、満を持しての初来日となったのがデンマーク発の西部劇『悪党に粛清を』の日本最速上映会だった。この時は新宿のミニシアター、新宿武蔵野館が会場となり、約300人の熱烈なファンが駆けつけたという。

2度目の来日は、ミケルセンがヴィランのカエシリウスを演じたマーベル映画『ドクター・ストレンジ』(16)の初日舞台挨拶。TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて午前と午後の2回に分けて実施され、SNSや劇場で募集したファンからの質問に答えたほか、同作や「ハンニバル」でもミケルセンの日本語吹替を担当している声優の井上和彦と交流する場面もあった。

さらに、2019年に日本公開された『残された者-北の極地-』(18)の完成披露上映会にも登壇。新宿バルト9が会場となり、平日の夕方帯にもかかわらず駆けつけたファンで劇場は満員状態に。この時は同時期に開催された「ハリウッド・コレクターズ・コンベンション No.21」への参加も兼ねた来日で、イベントの数日前から日本入りして京都でサイクリングを満喫したというスポーツマンのミケルセンらしいエピソードも語られていた。

■「東京&大阪コミコン」の顔となった北欧の至宝
ミケルセンと日本との関わりで欠かせないのが「東京コミックコンベンション(通称、東京コミコン)」。「東京コミコン2017」で初参加してから少し期間が空いたものの、大阪で初めて開催された「大阪コミコン2023」から「東京コミコン2025」まで皆勤賞。つまりここ3年は、ゴールデンウイークに大阪、12月に東京と、年に2回も来日し続けてくれている。

イベント期間中にも様々なトピックがあり、「東京コミコン2023」では『ドクター・ストレンジ』の主演ベネディクト・カンバーバッチとのツーショットが実現。「大阪コミコン2024」では大ヒットゲーム「DEATH STRANDING (デス・ストランディング)」で共演したノーマン・リーダス、小島秀夫監督と共にステージに登場し、ファン歓喜のトークセッションが繰り広げられた。また、「大阪コミコン2023」に参加した際には、ミケルセンが居酒屋で食事をしていたところを目撃されてSNSで話題に。このような庶民的な一面もファンを惹き付ける要因なのかもしれない。

■マッツ・ミケルセンらが創出する奇想天外なデンマーク映画の世界観
この10年間で『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)に『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(22)、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(23)、『ライオン・キング:ムファサ』(24)など、錚々たる大作シリーズに参加してきたミケルセン。一方で、母国デンマークの映画にも出演し続けており、ハリウッド作品ではなかなか見ることのできない、人間的な弱さや慈しみ、独特なユーモアセンスを放ってきた。

そんなミケルセンの魅力をじっくり堪能できるのが、現在開催中の特集上映「〈北欧の至宝〉マッツ・ミケルセン生誕60周年祭」。デンマーク王室最大のスキャンダルを描いた歴史劇『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)やカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞した『偽りなき者』(12)など7作品がラインナップされている。

なかでも注目は、長年にわたってコラボレーションしてきた盟友アナス・トマス・イェンセン監督による日本の劇場初公開作品を含む4本。銃器マニアの荒くれ者を演じた『ブレイカウェイ』(00)、生え際を剃り上げるなど衝撃のビジュアルを披露した『フレッシュ・デリ』(03)、狂気的なまでにポジティブシンキングを貫き通す牧師から目が離せない『アダムズ・アップル』(05)、クセ毛に無精ひげといういで立ちで強すぎる性欲を持て余す男に扮した『メン&チキン』(15)など、どれもこれもが奇想天外な役柄の作品ばかり。ウルリク・トムセン、ニコライ・リー・コース、ニコラス・ブロら常連俳優たちとのかけ合いと共に予測不能なストーリーが展開され、その模様はさながら“劇団アナス・トマス・イェンセン”とも言うべき唯一無二の世界観を創出している。

今後も「ハンニバル」の製作陣と再びタッグを組んだ『Dust Bunny(原題)』やイェンセンの監督最新作『The Last Viking(原題)』の日本公開が待たれるほか、死刑囚のために料理を作るシェフを演じる『Last Meals(原題)』、北欧グリーンランドが舞台の『Sirius(原題)』、ダイアン・クルーガーと共演するSFスリラー『Ami(原題)』などへの出演も発表されている。“北欧の至宝” マッツ・ミケルセンの快進撃はまだまだこれから!
文/平尾嘉浩
