最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
マクラーレンの言いがかり? レッドブルの新品PU投入、チームは問題ないと自信。FIAは規則変更での問題解消を待つ姿勢

マクラーレンの言いがかり? レッドブルの新品PU投入、チームは問題ないと自信。FIAは規則変更での問題解消を待つ姿勢

F1サンパウロGPでレッドブルはマックス・フェルスタッペンが3位を獲得。この時、チームはペナルティを受けながらフェルスタッペンのマシンに新しいパワーユニット(PU)を投入していたが、ライバルがこれを問題視。予算上限制度におけるグレーゾーンが浮き彫りとなり、議論の的となっている。


 サンパウロGPの予選でフェルスタッペンは16番手に沈んだ。そのためチームは、パルクフェルメ規定を破ってマシンのセッティングを変更し、同時にPUも一式新品に交換した。年間上限数を超えるPUの使用数となるためグリッド降格ペナルティが発生したが、この時はピットレーンスタートだったため実質的な影響はなかった。

 ただこの新品PUの投入には、ライバルのマクラーレンから疑問の声が上がった。今回PUの各コンポーネントを投入したことにより、レギュレーションで定められている年間コストの上限を超えていないかどうかということが議論の的となっているのだ。

 PUの供給価格の上限である1500万ユーロ(約27億円)は、コスト上限の対象外となるが、許容額を超えるPUの費用については明確な免除の規定がなく、コスト上限に含まれる可能性がある。

 マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は信頼性ではなくパフォーマンス向上のためのPU投入がコストキャップに含まれるべきではないかと疑問を呈した。ここにはカスタマーチームでPUを購入しなくてはいけないマクラーレンと、ホンダのワークスチームでもあるレッドブルだという点で関係に違いがある。

 この案件は今年最後のF1委員会の会合で議題となるとも報じられていた。ただmotorsport.comの調べでは、正式な議題には含まれていなかった。マクラーレンは「その他の事項」で問題提起するつもりだったという。

 問題の核心は、年間使用枠を超えたPU交換が予算制限に含まれるべきかどうかが、規則で正式に定義されていない点にある。この短所は以前から指摘されており、現在はFIAとチーム間の“暗黙の了解”によって、信頼性目的のエンジン交換をコストキャップ対象外と認める運用になっている。

 マクラーレンの認識では、信頼性ではなくパフォーマンス向上目的の交換はコストキャップに含まれるべきことを示唆している。しかし、ライバルがその気なら両者を区別することは極めて難しく、すでに曖昧な領域がさらに曖昧となる。

「エンジン交換の際、テレメトリーのデータが信頼性問題を示しているかどうかをめぐってチームやPUメーカーと議論するような状況には関わりたくない」

 FIAのシングルシーターテクニカルディレクター、ニコラス・トンバジスはラスベガスGPでそう語った。

「それが本当に信頼性に関わるものなのか、それとも戦略的変更なのかを、彼らと議論するだけの専門性は無いと感じている。明らかにどちらか一方である場合もあるが、クロスオーバー領域では判断が難しい」

「これは財務規則、技術規則、スポーツ規則の組み合わせにおける現行レギュレーションの弱点だ。そのため我々は予算上限への影響について議論することなく変更を受け入れるアプローチをとってきた」

 この抜け穴は、次期レギュレーションでPUメーカーにも予算上限が設けられることによって解消される見込みだ。しかし今のところは、ドライバーズタイトル獲得のかかるチーム同士で牽制し合っている。

「誰かがこの状況に手榴弾を投げ込んだとしても、驚きはない」

 そう語るのはレッドブルのチーフエンジニアであるポール・モナハンだ。

「もし立場が逆なら、我々も同じことをするだろう。我々の行なったことは正当化可能で合法だ。2022年から今年までの現行世代のマシンを振り返っても、みんなエンジン交換をしている。特段珍しいことではない」

「個人的にはグレーゾーンだと思うが、我々は自分たちのやろうとしていることに自ら納得していたし、もし問われれば正当化する」

 ただ今回のPU交換がコスト上限の範囲外と考えているのかどうかを、明確に問われた時にモナハンは、答えを濁していた。

「その質問には答えない。私は財務規則の専門家ではないからだ。大まかに何が対象で何が対象外かは分かっている。しかし我々の行動は正当化でき、年末にペナルティを受けることはないと信じている」

「それが私の知識としての答えだ。ただ、財務規則においてどう扱っているかは推測したくない。間違えれば普段以上に馬鹿に見えるだけだから、ここで止めておきたい」

 なおモナハンはフェルスタッペンのマシンから交換されたPUの状態について、次のように説明している。

「ホンダからの助言では、完全に追い込めば、もう少しだけ走れる可能性があるということだった。これはチーム政治に踏み込む話なのであまり多くは言いたくないが、財務的には問題ないと信じている」

 モナハンはグレーゾーンという見解だったが、レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコはラスベガスGPのFP2後にMotorsport.comへ「これはグレーゾーンではない。全く問題ない。我々は完全に規則の範囲内だ」とより明確に述べた。

 マクラーレンは現行のガイドライン運用は本質的に不公平だという見解を示している。カスタマーチームは明確な金銭取引でPUを購入する必要があるのに対し、レッドブルとホンダのようなワークス関係では事情が異なるからだ。

「我々はレッドブルとは少し違う立場にある」とマクラーレンのテクニカルディレクター、ニール・ホールディーは述べた。

「パフォーマンス目的のエンジン交換を受けることはできない。ワークスチームのようにPUサプライヤーが無償でエンジンを提供するわけではないからだ」

「間違いなく、我々のような独立チームにはできることではなく、ワークスチームにあるメリットだ」

「2026年は状況がかなり変わるが、今年も過去の年も、ワークスチームは規則の存在または欠如のおかげでカスタマーチームより有利だった」

 FIAの見解は、来年導入されるPUメーカー向けの独立した予算上限によって問題は解決するというものだ。

「PUメーカーは戦略目的でPU交換することを望まなくなるだろう。交換の度にエンジン1基分のコストがかかるからだ。それが自然な抑止力となる」

 トンバジスはそう説明した。

「現行規則ではPUコストキャップがないための弱点だが、来年には完全に解消される。議論の対象ではなくなるだろう」

あなたにおすすめ