鈴鹿サーキットで行なわれているスーパーフォーミュラ最終ラウンドは、第11戦・第12戦の予選が終了。あとは第10戦・第11戦・第12戦の決勝レースを残すのみとなった。野尻智紀(TEAM MUGEN)はランキング5番手でタイトルの可能性を残しているが、ランキング2番手につけるチームメイト、岩佐歩夢の初王座のためにレースを戦うつもりであると明かした。
今回の鈴鹿ラウンドでは、数字上6名のドライバーにチャンピオンの権利が残されている。その6名は、ランキング順に坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)、岩佐、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、野尻、サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOM’S)。しかし野尻とフェネストラズはライバルと大きな差がついており、逆転は容易ではない状況だ。
ただ野尻は、第11戦と第12戦の予選で共に岩佐に次ぐ2番グリッドを確保。いずれも中団グリッドに沈んだ坪井とのポイント差を37.5に縮めた。仮にこの両レースで岩佐を抜いて優勝を飾れば、第10戦の結果次第では王座争いに加われる可能性すらある。
そんな状況だが、野尻は既に自身3度目のタイトルをかけてチームメイトの岩佐と争うつもりはないようだ。彼はTEAM MUGENのチームタイトル、そして岩佐のドライバーズタイトルのために戦う意思を示した。
「僕個人の中では、悪あがきをすればするほど、チームタイトルや彼(岩佐)のタイトルの悪影響になると思っています。ドライバーズタイトルに関しては、チーム内の争いが激しければ激しいほどやりにくくなることは、過去の経験からもよく理解しています」
そう語った野尻。彼はシリーズ3連覇を狙った2023年、チームメイトのリアム・ローソン、そしてTOM'Sの宮田莉朋と三つ巴のタイトル争いを演じたが、結果的に宮田に敗れる形となった。そして鈴鹿での最終ラウンドでは、予選アタックを前にしたポジション争いでローソンと一悶着あったことは記憶に新しい。
「個人的には、今回の予選で2回ポールを獲れなかった時点で僕の役割は決まると思って、鈴鹿に乗り込んできました」
その役割とは、ミハエル・シューマッハーがフェラーリでチャンピオン争いを演じていた時のセカンドドライバー、ルーベンス・バリチェロやエディ・アーバインのようなモノだと野尻は表現する。決勝レースで直接的なポジション入れ替えがあるかどうかまでは言及しなかったが、いずれにしても岩佐のタイトル獲得のために全力を尽くす構えだ。
「彼(岩佐)に何かがあったら僕が優勝できる、ということも重要だと思います。バリチェロ、アーバインみたいに、シューマッハーがいなくなった(リタイアした)時に優勝できるという役どころも必要だと思っているので、そういうつもりで頑張ります」
一方の岩佐は、第11戦、第12戦でポールを獲得したことで、坪井との点差を8.5点に縮めており、逆転に向けては優位な状況となった。ただ岩佐本人としてはタイトル争いの流れが変わったとは感じていないようで、「自分たちができることを最大限やることに集中するのみ」といつも通り淡々と語った。

