
雨清水三之丞役を演じる、板垣李光人さんのプロフィール写真
【画像】「えっ北川景子級?」コチラが「松江藩随一の美女」の娘で、弟もイケメンだった、実際の「小泉セツ」さんです
母に「社長」になったと言っている三之丞
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツさんがモデルの物語です。
第8週では主人公「松野トキ(演:高石あかり)」と、彼女を女中として雇った未来の夫「レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)」を中心とした、ほのぼのとしたエピソードが描かれました。トキがヘブンの女中になるのを決めたのは、実母「雨清水タエ(演:北川景子)」が物乞いになっていたからでしたが、彼女もトキの給料で無事にまともな家で暮らし始めています。
ただ、トキの弟「雨清水三之丞(演:板垣李光人)」は、第8週で登場しませんでした。第39話でのタエのセリフを聞く限り、彼はトキからもらった月10円の生活費を「社長としてもらった給料」と偽って、母に渡しているようです。
おそらく、まだまともに働いてもいない三之丞に関して、SNSでは
「まさかと思うけど、おかしな商売初めてないよね、三之丞」
「三之丞は昼間どこで何してるのか」
「月が変わりお給金を手にしたトキちゃんが、三之丞へどう接触するのかが気になって仕方がありません」
「おタエさんは社長になったのが嘘なのを薄々わかっていて、三之丞は就活中か下働きから頑張っていると思いたい」
と、視聴者の心配の声や、せめてこうであってほしいという意見が相次いでいます。
これまでマグミクスほか各メディアでは、資料に基づいて三之丞のモデル・小泉藤三郎さんが、生涯のうちに何度も問題を起こしたことを記事にしてきました。
藤三郎さんに関する史実の情報を振り返ると
「小泉家の機織り会社の経営が傾いても、小鳥を捕まえて飼う趣味に没頭して何もしなかった」
「小泉セツさんから実母・チエさんへの仕送りに頼って、ろくに働かなかった」
「セツさんとラフカディオ・ハーンさんが松江を離れていた間(1891年秋から1896年夏頃)に、小泉家の先祖代々の墓所を売り払ってしまった」
「一時期、役者の道に進むも、メインの役を貰った劇でセリフを言わずに立ち尽くして台無しにした」
「東京に移り住んだセツさんたちの家にやってくるも、墓を売ったことに怒っていたハーンさんに追い返された」
などなど、ほとんどネガティブなことしかありません。そんな彼は、1916年に松江の小泉家本家の近くの空き家で、孤独死しているのが発見されました(享年45歳)。
こういった史実の情報が広まってきたため、三之丞の今後を心配する声が増えているようです。朝ドラでは、モデルそのままの悲惨な人生は描かれない可能性もありますが、現状ではどうなるか分かりません。
トキのモデル・セツさんも手記「幼少の頃の思い出」で「絶交した」と書いている藤三郎さんですが、彼は一度しっかりと姉の役に立ったことがあります。それは、セツさんとハーンさんが「正式に結婚した」ときのことです。
セツさんは1891年2月頃にハーンさんの女中として働き始め、同年の夏頃には彼と夫婦になりますが、当時はまだ法的な婚姻関係は結んでいませんでした。
その後の1895年、40代半ばで身体の衰えを感じていたハーンさん(1904年死去)は、セツさんや長男の一雄さん(1893年生まれ)に自分の遺産を確実に残すため、日本に帰化する手続きを始めます。当時は帰化の法制度が確立されておらず、ハーンさんとセツさんは、セツさんを戸主とする小泉家の分家を立てて、そこにハーンさんが入夫として入籍するという方法を選びました。
そして、1895年10月3日、セツさんとハーンが松江市役所に提出した「外国人結婚願」には、連名で小泉家本家の人間である藤三郎さんの名が書かれています。セツさんが分家を作るためには、彼の存在が欠かせませんでした。
手続きは市役所内だけでは完結せず、ハーンさんが帰化して小泉八雲になれたのは、翌1896年2月14日のことです。その後の1896年夏、セツさんと八雲さんが松江に帰省した際に、藤三郎さんが墓所を売ったことが発覚しました。
当時、セツさんと藤三郎さんの間でどんなやり取りがあったかは不明ですが、『ばけばけ』で三之丞がトキとヘブンを正式な夫婦にするため雨清水本家の男子として奔走し、ふたりの保証人になる、という展開が描かれれば、感動的な物語になるかもしれません。彼の今後に注目です。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『父小泉八雲』(著:小泉一雄/小山書店)、『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)
