最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
アラフォー・バツイチ・地元に友人なし…「出戻り」女は地域になじめるか? コミックエッセイ『出戻りて、奈良。~シカ県民やりなおし日記~』蟹めんまインタビュー

アラフォー・バツイチ・地元に友人なし…「出戻り」女は地域になじめるか? コミックエッセイ『出戻りて、奈良。~シカ県民やりなおし日記~』蟹めんまインタビュー

大学進学で地元を離れ、はや十数年。都会で仕事や趣味に忙しく暮らしていたものの、父親が急逝し、高齢でひとり残された母親が体調を崩した。離婚を経験して今は独り身、リモート仕事が可能な自分は、地元に戻るべきなのか……? 近い将来、そんな状況に直面する人も少なくないだろう。こうした状況から実際に地元・奈良への移住を決行した漫画家・蟹めんまさんに、「地元に出戻り」生活のリアルを聞いた。コミックエッセイ『出戻りて、奈良。~シカ県民やりなおし日記~』からの抜粋とともにご紹介する。

老いた母とふたり静かに暮らしていくんだろうな 

蟹めんまさんは、バンギャル(ヴィジュアル系バンドのファン)の生態を描いたコミックエッセイ〈バンギャルちゃん〉シリーズで知られる漫画家。大学進学を機に地元・奈良を離れ、大阪や関東で暮らしてきたが、先述のような理由で十数年ぶりに地元への移住を考えるようになった。 
 
――「出戻り」を決意するまで、迷いもありましたか? 
 
蟹めんま(以下同) 地元に友達もいないし、当初は地域になじめるか不安でしたね。奈良に戻ったらきっと興奮するような出来事は何もなく、山と鹿と寺社仏閣に囲まれて母とふたり静かに暮らしていくんだろうな……と想像していたので、本格的に移住するかどうか、だいぶ迷っていました。 
 
――移住を決断した決め手はあったんでしょうか? 
 
父の遺品整理などで東京と奈良を行き来していたところ、ちょうど J3 に昇格の決まった地元のサッカーチーム「奈良クラブ」に出会ったんです。知人に誘われスタジアムに行ったんですが、試合も応援もめちゃくちゃ激しくておもしろかったんですよ

詳しくは漫画に描きましたが、普段おとなしい奈良県民が応援歌で盛り上がる様子や、サポーター手作りの横断幕や旗のかっこよさに衝撃を受けました。私がこれまで見ようとしなかっただけで、奈良にはこんなおもしろい世界があるのか!と、移住を決める大きな後押しになりましたね。

奈良クラブのサポーターつながりでいろんな世代のお友達ができましたし、漫画のネタもサポーターの皆さんからもらいまくっています。奈良クラブのおかげで人生変わったと言ってもいいくらい。静かに暮らしていくんだろうなと思っていましたが、かなり賑やかだと思います。

――「アラフォーのバツイチ独身女」という自身の状況は、移住してみたらそんなに気にならなかった? 
 
サポーター界隈だと、話題の中心はチームと選手のあれこれなんです。自分たちの暮らしのことよりも共通する話題がまずあるので、個人のことはそんなに気にされていないと思います。地方移住で孤立感が気になる人は、地元のスポーツの現場に行ってみると、いい距離感の人間関係を作るきっかけになると思います。

あとは土地柄もあるのかな。奈良って古くからの観光地なので、余所者がいることに慣れていて、寛容だと感じますね。一人旅の人も多いので、単独行動でも全然目立ちません。気になるイベントや行事があったらぼっちでガンガン行ってしまうんですが、居心地悪く感じたことはないです。 

あと外国人観光客には自由なファッションの人も多いので、どんな髪形、服装でもさほど浮きません。中高生のバンギャル時代には、奇抜な格好をして目立とうとしても注目されなかったという経験もあります。 

奈良へ「出戻り」したメリット、デメリット 

――奈良に帰ってみて、デメリットはないですか? 
 
デメリットは、恋愛がしづらいことです。漫画にはあまり描いてきませんでしたが、私は恋愛したいんですよ! ですが、奈良の同年代は、男女問わずもう結婚してお子さんもいる、という人がほとんどです! 

マチアプ(マッチングアプリ)も奈良県内で探すと同年代男性が少ない。離婚後に関東でマチアプを見ていたときはたくさんいたんですが……。あと奈良のマチアプ男性は、顔を隠した写真を載せている人が多いですね。知り合いに見つかる可能性が、関東よりも高いせいですかね。 腹をくくって出してほしいです……。
 
――逆にメリット、良かったことはありますか? 
 
中年になって奈良に戻ったからこそ良かったのは、大仏とか文化財がおもしろいと思えるようになったことですね。10 代 20 代の頃は、寺社仏閣や古墳なんてつまらん、と思うじゃないですか。

でも父が亡くなって遺品整理をしたり、自分が離婚したり、色々な経験をした今、正倉院の宝物とか大仏とかのことを調べてみると、見え方が変わりました。奈良の「執念」「ねばり強さ」みたいなものに気づいたんです。

聖武天皇の遺品を 1300 年以上にわたって保存し続けたり、大仏だって戦や経年劣化で壊れたものを何度も再建したり……諦めなかった人たちの強さというか、パワーを感じるんですよね。

それも、奈良はがむしゃらな強さというよりも「なんとかなるやろ」と信じる強さがある気がします。もしかすると、人間だけではなくて鹿と長いこと共生してきたおかげなのかな、とも思います。寛容さと強さの不思議なバランス感覚があるんじゃないかなぁ。

提供元

プロフィール画像

集英社オンライン

雑誌、漫画、書籍など数多くのエンタテインメントを生み出してきた集英社が、これまでに培った知的・人的アセットをフル活用して送るウェブニュースメディア。暮らしや心を豊かにする読みものや知的探求心に応えるアカデミックなコラムから、集英社の大ヒット作の舞台裏や最新ニュースなど、バラエティ豊かな記事を配信。

あなたにおすすめ