スーパーフォーミュラ最終ラウンド(第10戦・第11戦・第12戦)にシリーズチャンピオンをかけて臨んでいる岩佐歩夢は、第11戦の決勝レースでポールポジションからスタートしながらも、1周目の接触によってリタイアとなった。
ランキング2番手で鈴鹿に乗り込んだ岩佐は、22日(土)午前に行なわれた第11戦・第12戦の予選で共にポールポジションを獲得。ボーナスポイントを6点加算してポイントリーダーの坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)との差を8.5点まで縮め、逆転王者に向けて視界良好であった。2番グリッドはチームメイトの野尻智紀で、ランキング5番手の野尻はタイトルの権利を残しながらも、岩佐をサポートする意思を表明……まさにこれ以上ないほどのシチュエーションであった。
しかしながら岩佐は、第11戦決勝レースのスタートでやや出遅れ、野尻の先行を許す形に。背後からは3番手のイゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)が猛烈にプレッシャーをかけていた。そしてフラガは逆バンクでインから岩佐を抜こうとしたが、両者接触。岩佐はこれでコントロールを失い、アウト側のバリアにクラッシュしてレースを終えることになった。
現状不鮮明な画像ではあるが、アプリ『SFgo』の映像からインシデントの状況を確認すると、フラガは逆バンクへの飛び込みでインから岩佐に並びかけようとしている。ただフラガは岩佐の前に出ることはできていない状態。その中で両者ターンインし、アウト側の岩佐は自分のラインを主張するようにイン側へ舵を切った。フラガはそれを避けるような格好でイン側の縁石にタイヤを落としたが、結局2台は接触することになった。
このインシデントは審議対象となったが、結果的にレーシングアクシデントだと判定され、どちらのドライバーにもペナルティが出されることはなかった。接触の後もそのままレースを走り切り2位でフィニッシュしたフラガは、記者会見で次のように語った。
「自分もレース人生をかけてこの最終ラウンドに臨んでいます。もちろんタイトルがかかっている人もいますが、僕もこのレースをすごく大事だと捉えているので、自分も全力を出し切っています」
「結果的にはレーシングインシデントということで、自分のミスではなかったのかなと思うので、その後はあまり思い返さずにプッシュしていました」
無線でも自分が常にイン側をキープして走っていたことをアピールしていたフラガ。会見後の記者団の取材でもその点を強調し、岩佐を避けるために縁石に乗ったと語った。またフラガは、岩佐は自分がインに飛び込んでいることを視認できていなかったのではないかと指摘した。
一方の岩佐はそれを否定し、ミラーでフラガのことを確認していたと主張する。そしてフラガが無理な飛び込みをしたとして、レーシングインシデントという裁定に不満を隠さなかった。
「チャンピオンシップの立場を考えれば、避けるという手もあったと思いますが、レースの(バトルにおける)ガイダンスのようなものを考えながらバトルをしていました。(レーシングインシデントの)判定は出ましたけど、あれがいいなら何でもありかなと思います」
逆バンクではターンインに向けてフラガの前に出ていたことから、優先権を主張する意味であのようなライン取りをしたのかと尋ねると、岩佐はこう答えた。
「優先権どうのこうのというより、突っ込み方に無理がありました。明らかに無理やり飛び込んでくるようなスピードでした。自分がそれを見越して動けば良かったのかもしれませんが、あの位置関係であのスピード域であの入り方というのは、相手のことをあまり考えていないなと思いました」
「接触自体を避ければ良かったとか、自分の中では色々問題があると思いますが、判定には納得いっていません」
とはいえ、残る第10戦と第12戦に向けて逆転タイトルの可能性を十分残している岩佐。特に最終戦はまたポールからスタートできる。
岩佐はチャンピオンシップについて問われると「チャンピオンシップは何とも思わないです。あと2レースやるだけです」とややぶっきらぼうに答えたが、今回の接触を経てそういった感情になったわけではないと説明。これまで通り、チームと最大限のパフォーマンスを発揮することに集中していく構えだ。

