スーパーフォーミュラ第11戦で今季初勝利を飾った野尻智紀(TEAM MUGEN)。残り2戦で逆転チャンピオンの可能性も残す状況だが、彼は自らの“役割”に悩んでいるようだ。
今週末のスーパーフォーミュラ最終ラウンドは、2日間で予選2回、決勝レース3回が実施される怒涛のスケジュールとなっている。レースウィーク土曜日の1日だけでも、シリーズタイトル争いは大きなうねりを見せた。
まず午前中に行なわれた第11戦・第12戦の予選では、共に岩佐歩夢がポールポジションを獲得し野尻は2番手。TEAM MUGENがフロントロウを占めた。この時点でランキング2番手の岩佐はポイントリーダー坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)との差をグッと縮め、一方で同5番手の野尻は未だライバルとの点差が大きく開いている状態であった。そのため野尻は、計算上は自分にもタイトルの可能性が残されているとはいえ、岩佐のドライバーズタイトル獲得をサポートする意思を見せていた。
しかしながら迎えた第11戦の決勝レースはまさかの展開となった。スタートでは蹴り出しの良くなかった岩佐を野尻が交わしてトップに。その直後の逆バンクで岩佐はイゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)と接触し、早々とレースを終えてしまった。
野尻は記者会見の中で、岩佐とはさまざまなシチュエーションに関してディスカッションしていたことを明かし、スタートで岩佐の前に出るのも非常に難しい判断であったと語った。
「スタートでは岩佐選手が出遅れました。本音を言えば僕が前に出てレースを引っ張っていきたかったのですが、彼の邪魔もできないという立場で、悩ましい位置関係の中で1コーナーに入っていきました」
「僕はチャンピオンシップがほとんどかかっていないような状況だったので、岩佐選手とは事前に『こういうシチュエーションになったら僕が引く』みたいな話もしていました。僕もあの感じで良かったのかと思うところはありますが、あの時(1コーナーで)若干僕の方が前に出てしまっていたので、あそこは僕が(譲らずに)行ききらないと微妙な位置関係になってしまいます。非常に難しい1コーナーでしたね」
野尻はフラガの追撃を振り切り今季初優勝。残り2戦で、ポイントリーダーとの差を25点まで縮めた。そしてノーポイントに終わった岩佐との差も、8.5点まで縮まった。
当然ながら、まだ野尻が逆転するのは厳しい状況にある。しかしながら、第11戦の時点で王座戦線から脱落する可能性すらあった野尻が、奇跡の大逆転も不可能ではない位置まで挽回してきたのも確かだ。
会見で坪井とのポイント差について聞かされ、「そんな縮まったんですか? え、じゃあ……頑張ります(笑)」と返して会見場をどっと沸かせた野尻。この状況でも、岩佐をサポートするというアプローチは変わらないのかと改めて尋ねると、野尻はこう答えた。
「難しい質問ですね。僕自身すごく悩んでいます」
「その辺りチームと相談して、どういう立ち位置で臨むべきなのかをクリアにしてからレースに臨みたいと思います。現時点では何も言えないかなと思います」

