たかが入浴、されど入浴。毎日の習慣を少し見直すだけで長生きが手に入るなら、実践しない手はない。「風呂キャンセル界隈」などもってのほか。究極の「入浴剤」を紹介する。
「もしも、読者のあなたが今、60歳だとして90歳まで生きると仮定したら、残りの人生で入浴する回数は、単純計算して1万950回もあります。些細なことでも、それをやるとやらないでは雲泥の差となる。ただし健康寿命を延ばす入浴法といっても、いつもの入浴を少し変えるだけで、面倒で難しいことなど一切ありません」
このように断言するのは、「入浴それは、世界一簡単な健康習慣」(アスコム)を上梓した、温泉療法を専門医とする東京都市大学人間科学部教授の早坂信哉医師である。
温泉宿に宿泊して毎日、温泉に入り病気を治療する─。いわゆる「湯治」は、古来より日本において体の不調を治す知恵として、現代まで息づいてきた。温泉の医学的、科学的な有効性については、さまざまな研究により実証されているが、人気の温泉地に行くとなると、時間も手間も、さらには旅費もかかるうえ、大勢の観光客でごった返していて‥‥。
実は、わざわざ遠方の温泉地に足を運ばなくても毎日、自宅の湯船に浸かる習慣を身につけるだけで、驚くほどの健康効果が期待できるという。
冬型の気圧配置が強まり、特に朝晩の冷え込みが強まるこの季節、湯船に浸かって全身を伸ばすと「いい湯だな。なんて温かくて、気持ちがいいんだ」としみじみ感じるはずだ。早坂医師によると、この「温かくて、気持ちがいい」という感覚こそが、健康増進を促すサインだという。実に7万人以上の入浴を調査してきた早坂氏が続ける。
「入浴による健康効果は、体を温めてこそ得られるのです。逆にいえば、体が温まらない入浴では健康効果はあまり得られないということになります。それでは、どうすれば最も効率的に体を温めることができるのか。四半世紀にわたり調査した結果、導き出された1つの答えがあります。それは『40度のお湯に10分、毎日浸かる』ことです。通院中の方は主治医に入浴法を確認してください」(以下も「」内は早坂氏)
たったそれだけのことで、健康寿命が延びる。習慣化することで、健康な体の土台が出来上がっていくというのだ。
「まず、40度のお湯に10分浸かることで、体温が上がります。より具体的に言えば、深部体温が1度上昇するのです。たったの1度と思われるかもしれませんが、深部体温が上がることで体に変化が表れます。例えば免疫細胞が活発に働くようになり、風邪や感染症にかかりにくい体質になるのです。次に、血流がよくなる。人は血管から老いていくとも言われますが、血流がよくなれば、体内において酸素や栄養の供給がスムーズになり、疲労物質や老廃物の回収も効率的に行われるようになります。つまり若返りスイッチが入り、疲れにくい体質にもなるのです。また湯船に週4回以上浸かる人は、週3回以下の人に比べて、幸福度が明らかに高いという調査結果もあります。このように、『40度・10分』の入浴習慣は、みなさんの心身の健康を促すのです」

