勤労感謝の日にあらためて考る“働くこと”の意味。「食えりゃいいから、お金はいらない」「稼いでも税金が上がるだけ」という漫才コンビ・金属バットが提唱する働き方改革の先にあるAI時代の勤労感謝とは。
「芸人じゃなかったら死んでた」
—11月23日は「勤労感謝の日」です。働き方改革の波が押し寄せていますが、芸人さんの労働環境もだいぶ変わりましたね。
友保 吉本もコロナ禍からだいぶ休めるようになりましたからね。昔は多少、体調不良でも「まだできる」ってなったら行かされたもんな。今は熱出たら休めんねんな。なんやったら「来んな」言われる。だいぶええ会社になりましたよ。
—出版業界をはじめ一般企業もそうかもしれないです。昔はなかなか休めなかった。正直やばいかなと思いながら取材に行ったこともあります。
小林 今はそういう風潮じゃなくなってきてますよね。
—なんなら体調不良を自己申告してくれてありがとうみたいな。
友保 いい時代になりましたよ。そもそも仕事なんかしたくないですからね。したないねんな、仕事なんか。
—仕事と生活の境目がだんだんなくなってきちゃうと思うことはありませんか。
友保 まあね、確かにあやふやですから。すべて仕事っちゃ仕事やし、すべて仕事じゃないと言えば仕事じゃない。
—時々わからなくなるんですよ、この連載は仕事なのか飲み会なのか。
小林 それはわかっててください。
友保 確かに俺ら先輩に誘われるもんね。酒飲みに行くのも。普通の会社で言うたらパワハラとかになりますけど、こっちは嬉しいですもんね。楽しいだけやし、あんなもん。別に仕事じゃないねんな、こんなもん。お笑いみたいなものは。
—趣味の部分を仕事にされている芸人さんもいらっしゃいますよね。
友保 あぁ、釣りとかね。競馬とか、プラモとか。
小林 てか、みんなようやってますよね。芸人じゃない人たち。
友保 ぞっとするよな、芸人してなかったら。マジ楽ちんやもんな。
—かつてアルバイトしていたゲーセンで社員になってるという未来もあったわけじゃないですか。
友保 ないですよ。死んでますよ。
—毎日同じ時間に会社に行って。
友保 怒られて。
—でも、そうした仕事の楽な側面もありそうです。仕事と割り切って働いて、終わったらもう何も考えずスナック行ってカラオケ歌って。
小林 だいぶ昭和のイメージやな。
友保 最悪、俺ら酒飲んでても大丈夫ですからね。仕事的に。怒られへんもんな。
小林 怒られはするよ(笑)。
友保 舞台でゲボ吐くとか悪がらみせんかったら。たまにあるもんな、夕方まで酔っ払ってる時。前の日飲みすぎて。
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—アルコールチェックとかないですもんね。
友保 息吐いたらゲボ出るんやから。
—でも、お二人は多くの人が休暇になる土日やお盆もお正月も働いてる。
友保 盆もクソですからね、マジで。盆大嫌いよ。営業だなんだって行くんですよ、いろいろ。で、盆やからでかいライブ打ったりするんですよ。「こことここツーマンしましょう!」みたいな。もうめんどくさいもん。そんなにやらんでいい、そんな気ぃ張ってられへん。
—もっと稼ぎたいとは思わないんですか?
友保 いやもう食えてますからね。食えりゃいいんですよ。お金いらない。税金上がるから。毎回泣きながら払ってますよ、税金。小林、消費税きたやろ? 消費税ってなんやねん。なんであんな払わなあかん。わし春にようけ払ったよ。
小林 また、きてたな。
友保 そういや2年前にガクテンソクの奥田さんが言ってたんですよ。「友保、おまえまあまあ稼いでると思う。ただ気をつけろ。2年後にすごいのが来んぞ」って言うてたんですよね。
小林 時間差で来るんやな。新しいやつも来んかった? 個人事業税。なんやこれ。初耳やぞ。
友保 なんやそれ、払わなあかんのか。また払わなあかんのか。引き落としか、それは。事務所がやってくれんのか。
小林 いや、こっちで払った。
友保 じゃあわし払ってない。やばいやん。払わなあかんやんけ! もうええて……勤労感謝の日! まあでも、国を良くするために働いてますわ。
—ほんとそうですね。笑いを届け。
友保 お金を届け(笑)。タバコ吸って、身を汚して。
—考えてみたら、お笑い芸人って不思議なお仕事ですよね。
友保 絶対なくてええもんな、こんな仕事。マジでいらんもんな。
小林 どっから金が発生してんかまだよくわからん。チケット買ってお笑い見るという発想がないから。
友保 絶対見に行かへんもんな。あとグッズのアクスタとか。アクリルスタンドなんかいらんやろ。テレビの前におっさんなんか並べんなよ。
—それこそお休みに旅行に行って、旅先の美味しい料理と2人のアクスタを置いて写真を撮るのが喜びの方もいらっしゃるんですよ。
友保 邪魔やって。半透明のおっさん2人いらんやろ。
小林 ほんまにようわからん仕事やで。
—ライターや編集者もようわからん仕事なところがあり、最近ではAIがちゃんと文章も書くらしいですし。
友保 漫才のネタもそうらしいですね。NSC(吉本総合芸能学院)でAIにネタ書かして結構上の方にいったやついたみたい。
—最近はインタビューの文字起こしをAIにしてもらいますが、それでもAIにできないこともあって、金属バットの取材は全然AIがテキストにできないんですよ。「なんて言ってるか分かりません」みたいな感じで。
友保 だとするとAIに世界が乗っ取られたら、一番最初に俺は殺されますね(笑)。異分子やから。えらい時代やほんまに。

