第3位 リーゼ・マイトナー「核分裂」

リーゼ・マイトナー(1878-1968)は、オーストリアの物理学者で、放射線・核物理学の研究を行いました。
彼女は化学者のオットー・ハーン(1879-1968)とタッグを組み、30年以上にわたって共同研究を続けています。
2人の手法は、まずハーンが実験を行い、彼女がその理論を証明するというものでした。
その中で、2人は「核分裂反応」を発見。20世紀半ばに原子爆弾を作るための基礎となりました。
ところが、彼女が生涯をかけて研究した成果は、ハーンだけが認められることになったのです。
ハーンは、原子核分裂を発見した功績で、1944年にノーベル化学賞を受賞しています。
彼女が認められなかった理由は2つあります。
1つは、彼女がユダヤ人であったこと(当時、ドイツではヒトラーが権力を握っていた時代)。
もう1つは、当時の核物理学の分野では、女性の存在が一般的でなかったことです。
そのため、ハーンは2人の研究成果を発表する際、必ず彼女の名前を論文から削除していました。
第2位 アリス・ボール「ハンセン病の治療法」

アリス・オーガスタ・ボール(1892-1916)は、アフリカ系アメリカ人の化学者です。
彼女は、ハワイ大学で修士号を取得した初の女性(かつ、初のアフリカ系アメリカ人)でした。
さらに、同大学における初の女性の化学教授ともなった聡明な研究者です。
その当時、ハワイではハンセン病が猛威を振るっており、患者の治療には、ガマハダダイフウシという木の種子から取れるオイルが有効とされていました。
これを「大風子油(だいふうしゆ)」と呼びます。
ところが、医師や研究者たちは、大風子油の効果的な注射法が分からず、薬効が限定的にしか発揮されていませんでした。
そこで医師会は、ボールを呼び出し、「注射用のオイルを作ってほしい」と依頼します。
彼女はその要求に見事に応え、1年以内に注射用ハーブエキス(ヒドノカルピン酸エチル)を完成させ、医学史に大きな飛躍をもたらしたのです。
彼女の薬はその後20年にわたって使われ続けました。
しかし不運にも、ボールは実験室での事故により、24歳の若さでこの世を去ってしまいます。
そのため、同僚の男性研究者が注射用ハーブエキスの報告書を発表する際に、ボールの名前を削除したため、功績が世に知られなかったのです。
第1位 エイダ・ハリス「ヘアアイロン」

これまでは研究者や発明家、エンジニアの話でしたが、エイダ・ハリスは、学校教師をしていた普通のアフリカ系アメリカ人女性でした。
彼女は、1880年代後半に、ストーブで簡単に加熱できるトング式縮毛矯正器、いわゆるヘアアイロンを発明しました。
熱を利用して髪の形や質感を変えるというアイデアはそれ以前にも存在します。
1870年代に、フランス人のマルセル・フランソワ・グラトーが考案したのは、アイロンを使って髪をカールさせるものでした。
これは「マルセル・ウェーブ」と呼ばれて、人気を博します。
それとは裏腹に、エイダは「アフリカ系アメリカ人の縮毛をなんとかまっすぐに出来ないか」と考えていました。
そこで発明したのが、マルセルとは逆の、巻き毛をストレートにする縮毛矯正器でした。
彼女の特許申請書には「私の発明は、巻き毛をまっすぐにすることを目的とした縮毛矯正器に関するもので、特に有色人種の人々が髪をまっすぐにするのに役立つものである」と書かれています。
ところが、この縮毛矯正器を見た人々は「10年前にカールアイロンを作ったマルセルの発明品だ」と信じてしまったため、エイダの功績が世に知られることはありませんでした。
現代の私たちは、カールアイロンとストレートアイロンが、それぞれ異なるニーズを満たす全く別の発明品であることを認識しています。
ストレートアイロンは、エイダ・ハリスという一般女性が作った発明品なのです。
参考文献
10 Inventions and Theories Made by Women but Credited to Men
https://listverse.com/2021/09/17/10-inventions-and-theories-made-by-women-but-credited-to-men/
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部

