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20代の若者と65歳超の高齢者の幸せは違って当たり前…なぜ私たちは年齢が容姿や健康・仕事・友人・お金を奪うと思い込んでいるのか

20代の若者と65歳超の高齢者の幸せは違って当たり前…なぜ私たちは年齢が容姿や健康・仕事・友人・お金を奪うと思い込んでいるのか

人は歳を取るとともに肉体は衰え、病気にもなりやすくなる。若い世代からすると「老い」にはどこか不自由さを想像するかもしれない。ただ、アメリカの研究によれば、多くの高齢者が活動的で自立した生活を送り、比較的幸せに過ごしていることが明らかになっている。

世界的な長寿研究の第一人者、スタンフォード大学長寿研究所所長のローラ・L・カーステンセン博士の『スタンフォード式 よりよき人生の科学』より一部抜粋、再構成して、超高齢社会を迎えた日本にも響く、示唆に富む知見をお届けする。

人間はいまを生きるようにつくられている

いまを大切にするという生物学的な傾向を無視して、将来のことを考えようとすると、私たちはほとんどの場合、何をしていいのかわからない状況に陥る。人生の計画を立てるとしても、たいていは人生の終わりについてではなく、始まりにかかわるものだ。

子どもの人生設計について考えてみてほしい。親は、子どもが母親の胎内にいるときの経験(妊婦用のビタミン剤や、胎教で聴かせるモーツァルトの曲をイメージしてほしい)から、18年後によい大学に入学させるところまで、子どもを細かく管理する。

自立できる年齢になった子どもは、時間を限りなく使って空想にふけったり、助言してくれる人や友人とおしゃべりしたりしながら、仕事を選び、自分に合ったパートナーを見つけ、新たな家庭を築く。

私たちの多くは、自分が定年を迎える日について、ぼんやりとしたイメージをもっている。だが、退職記念に金時計をもらってから20年後に自分がいったい何をしているか、考えてみたことはあるだろうか。それどころか私たちは、65歳以降の人生を、運と遺伝子によってもたらされた「残りもの」だと考える傾向がある。

晩年の計画を立てることは喪失や衰弱や死を連想させることから、計画を立てること自体を心から不愉快に感じ、完全に先送りしてしまう人もいる。人はよく、老いというのは突然やってくるものだと語る。ある日、鏡に映った自分を見て、見知らぬ老人がこちらを見返していることに気づくのだ。

私たちだけの問題ではない。アメリカの社会保障局と公的医療保険制度(メディケア)はそれぞれ1930年代と1960年代に設立・導入されたが、当初はどちらも、人々が数年間の給付を受けたあとで亡くなることを前提にして設計されていた。

老年化にシステムと文化が追いつかない

これらの機関や制度は、80歳を過ぎても元気に過ごしている世代を支える準備がまだできていない。また、健康を保ちながら幸せに100歳を迎えることがどういうことなのか、そのイメージがまだ社会のなかでほとんど形成されていない。

40年続くかもしれない老後に何をすればよいか、誰も教えてくれなかった。人間というのは文化に深く依存して生活している。ところが、余分な年月が人生にあまりにも急に付け加えられたために、文化のほうがまだ追いついていないのだ。

しかしいま、つねに文化の限界を押し広げてきたベビーブーマー世代※が、ふたたびその役割を担おうとしている。最初のベビーブーマーが65歳になったのは2011年であり、それに続く7900万人以上が人生の第三段階に入ろうとしている。

※第二次世界大戦の終結直後に、復員兵の帰還に伴って出生率が上昇した時期の1946年から1964年に生まれた世代

これから20年間で、65歳を超えるアメリカ人は10人に1人から4人に1人に増える。2030年には、アメリカでは15歳未満の人口より65歳以上の人口のほうが多くなると見込まれている。

これまで私たちは、この人口統計上の大きな変化がもたらす結果を恐れ、ただでさえ過重な負担を抱えている社会制度に大量の年金生活者の波が及ぼす影響について、神経をとがらせてきた。また、身体が不自由になり、認知力の衰えた高齢者が増えつづけるなかで、高齢者を支援することが私たちの慣れ親しんできた世界を脅かすことになる、と考えている。

老いることへの不安はメディアにも表れている。私はそれを「不幸せの神話」と呼んでいる。

私たちは、年齢が容姿や健康、仕事、友人、お金、愛を奪うと思い込んでいる。また、メディアのなかで、高齢者というのは気難しく、ひ弱で、認知力の衰えた人物として描写されることを知っている。生活環境のよくない施設に押し込まれ、ゾンビのようになったお年寄りに関する怖い話も耳に入ってくる。

上手に歳を重ねている話があるにしても、それはたいてい、若さを保って老いを避ける方法を説く、キラキラした物語の一部として語られる。高齢者に寄り添おうとしている人ですら、周囲からの同情や支援を引きつづき得られるように、現状をできるだけ悲惨な言葉で語ってしまう。

「高齢者はうまくやっている」と口に出すことは、ほとんどタブーですらある。それはまるで、お年寄りが本当はひどい生活を送っているのに、自分は高齢者にあまり関心がないのでその事実を認めたくない、と暗に表明しているかのようだ。

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