80~90年代前半に発売された車を扱う専門誌「ハチマルヒーロー」(芸文社)の栗澤浩司編集長も、日産車の魅力をこう語る。
「若者の支持が圧倒的だった時代は、スカイラインの国内50勝をはじめ、『レースに勝つ=どの車より速い』というのが大きかったと思われます。80年代に入るとバブルの影響もあり、多くの国産車がデザイン、性能を含め輸入車を凌駕。特に『R32スカイライン』や『S13シルビア』など、日産は数多くのヒットを飛ばし、トヨタ車とともに時代を牽引しました」
同誌のイベント「ハチマルミーティング」には、現行モデルにない魅力に惹かれた若い女性が、80〜90年代の車で参加するという。
「『推し』としてのめり込むパターンがあります。当時の日産車は販促グッズも多く、オークションなどで買い集めて車に飾る姿は印象的です。現在、日産には欲しいクルマがラインアップされていないと言われますが、80〜90年代には数多くの魅惑的な車がそろっていたのです」(栗澤氏)
ただ、古い車は故障する可能性が高くなる。それでも乗りたいマニアックな層も増えているようだ。
「1600cc程度の量産された40年前の旧車が、現代のフェラーリやランボルギーニといったスーパーカーよりもお金がかかることもざらです。車を趣味に持たない人にとって最も信じられないのは、そうした趣味人たちが車が動かなくなるのを喜ぶこと。手がかかるほどかわいく、トラブルで大渋滞を引き起こしたなどの経験は彼らにとって勲章であり、自慢話なんです。日産車が圧倒的に人気のあった60〜70年代、その頃のクルマは今なお旧車の王者で、3代目スカイライン『ハコスカ』、4代目『ケンメリ』、初代のS30フェアレディZ、2代目・3代目ローレル、510ブルーバード、2代目サニーなど旧車人気のほとんどは、日産車で占められています。どんなにお金をかけても、オーナーにとっては、維持すべき車であると言えます」(栗澤氏)
栗澤編集長が「欲しい現行車種がない」問題を挙げれば、自動車評論家の国沢光宏氏は「これまでの経営陣に原因があった」と指摘する。
「トヨタの全ラインナップのうち、約3分の2は受注できないほど売れている。一方で日産は、芸能事務所でたとえるなら、社長のセンスと主観がなく、売れないタレントばかりそろっている印象。売れる車がなければ、何をやっても復活はありません。調子が悪くなった時に、反省も検証もしてこなかった。人員整理も含めて、そこから始めなければならないのです」
4月に経営トップに就任したイヴァン・エスピノーサ社長(46)の大号令が始まった今、NISSAN愛あふれる面々のためにも、次なる「やっちゃえ!」に期待したいものだ。

