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なぜ『ガンダムW』に多くの女性が熱中したのか? 「ガンダム」だけでは見えない「背景」とは

なぜ『ガンダムW』に多くの女性が熱中したのか? 「ガンダム」だけでは見えない「背景」とは


『新機動戦記ガンダムW』30周年記念ビジュアル (C) 創通・サンライズ

【画像】「中身もエンドレスだ」これが2025年9月に登場した『ガンダムW』劇場グッズです(6枚)

『Wガンダム』ヒットを支えた女性層の増加

 本年2025年にTV放送30周年を迎えた『新機動戦記ガンダムW』の人気は現在でも高く、さまざまなジャンルで新たな動きがありました。この根強い人気の秘密はどこにあるのでしょうか。

『W』は、長らく「ガンダム」シリーズの舞台だった「宇宙世紀」ではなく、前番組『機動武闘伝Gガンダム』のヒットを受けたことで、同じく違う世界観となる「アフターコロニー(A.C.)」を舞台とした物語でした。近年ではこれらを「オルタナティブシリーズ」と呼んでいます。

 一方で『G』とは異なり、世界観は宇宙世紀に寄せて「戦争」を描くというストーリーになりました。また当初の予定では『機動戦士ガンダム』から『機動戦士Vガンダム』までのストーリーの再現を図るなど、前番組『G』を否定的な目で見ていたファン層へのアピールも考えていたそうです。

 こういった経緯で始まった『W』でしたが、予想外のファン層からの強烈な支持を集めることになりました。それが女性層です。もともと「ガンダム」シリーズを注目する女性は一定数いましたが、それ以上の数の女性から支持を集める結果となりました。

 その女性から支持された要因が、主要キャラクターとなる「5人のガンダムパイロット」です。これは前番組『G』から引き継いだパターンでしたが、大きく違う点として5人全員が美少年であり、それぞれに見せ場が用意されていた点でしょう。

 この部分が特定の女性層に突き刺さったわけです。実際に当時のアニメ雑誌では、表紙はもちろんカラーページも席巻し、その勢いはとどまるところをしりませんでした。この現象ゆえに、当時のアニメファンから『W』は「女性ファンばかり」といわれることになります。

 もっとも、これは正確な分析ではありません。なぜなら「ガンダム」シリーズの主力商品である「ガンプラ」の売れ行きは好調で、『G』と同様に小学生が購入していたことがわかっています。それゆえ後にプラモ企画『新機動戦記ガンダムW デュアルストーリー G-UNIT』がスタートしました。

 しかし、こうした誤解を受けるほど当時の『W』の女性人気は高かったわけです。それではなぜ『W』にこれだけの女性ファンが引き付けられたのでしょうか。それは「ガンダム」シリーズだけを追っていると、見えてこない別の軸線があったからでした。


『ガンダムW』に先駆けて、圧倒的な女性人気を集めた『鎧伝サムライトルーパー』DVD第1巻(アニプレックス) (C)サンライズ

『W』に大きな影響を与えた作品とは?

 筆者が知る限り、『W』は放送前から当時の女性層の期待を集めていました。その理由が池田成監督と、キャラクターデザインの村瀬修功さんの存在です。ふたりとも『鎧伝サムライトルーパー』で一定の女性ファンから評価されていました。

 この『サムライトルーパー』の人気が女性層を『W』に導いたといえるでしょう。明確にいえば同人誌活動で人気の高い作品という部分です。現在でも人気の高い作品は同人誌としても注目を集めますが、この『サムライトルーパー』という作品は、一般層に比べて同人誌では圧倒的な人気を誇った作品でした。

 女性向け同人誌で一大ヒットとなった『キャプテン翼』、そして『聖闘士星矢』に続く女性向け王道作品といえたのが『サムライトルーパー』だったわけです。その勢いが『W』にそのまま流れたことで、それまでのガンダム作品のファンに上乗せする形でファンの数を増やしたというわけです。

 もちろん女性向け同人誌の流れは、それほど単純なものではなく、さまざまな流れがありました。そこを重々承知して、今回は掘り下げないことをご容赦ください。

 この同人誌で中心となった層が取り込まれたことで、初代以降のガンダム作品以来の大きなヒットとなりました。また、このファン層の特徴として、関連商品の購入にも影響を与えた点が挙げられます。

 アニメショップで販売された各種アニメグッズ、各出版社から発行されたムック本などが売り上げを伸ばしました。しかし、もっとも注目を集めたのが同人誌を集めたアンソロジー本でしょうか。ただし同人誌特有の過激な描写に目をひそめる人もいました。

 ちなみにガンプラに手を出す女性ファンも何人か知っています。そういう点でも作品ファンとしての貢献度は高かったかもしれません。こうした本来のガンダムファン層とは別の方角からのファンの参入が『W』には押し寄せたわけです。それゆえに大きなヒットに結び付きました。

 考えてみれば、『機動戦士ガンダム』や『機動戦士ガンダムSEED』など、より大きなヒットに結び付いた作品には女性層の存在が目立ちます。やはり大ヒットは一定の層だけでなく、違った層も巻き込まないと成立しづらいものなのかもしれません。

配信元: マグミクス

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