『ものまねってこういうものだったよね』っていうものを表現してます
──デビュー30周年ライブ『我夢謝裸』が大盛況でしたね。
原口あきまさ「ありがとうございます。単独ライブは15年ぶり、東京以外の公演は初の試みだったので、なんか派手にやりたいなと思って。でも、本当は去年が30周年だったんですよ。
若手ものまね芸人とのユニットライブをやりすぎて、自分の30周年をやり忘れてたんです。まあ、今年50歳になるからちょうどいいかと思って」
──最終日の東京公演のゲストは、清水ミチコさんとコージー冨田さんでしたね。
原口「大好きなお二人で、ミチコさんは今回の単独ライブのきっかけを作ってくれた人でもあります。コージーさんとは、久しぶりにタモリさんと(明石家)さんまさんをね。今ではジョニー志村さんとほいけんたさんですけど、そのギャップも楽しいですよね」
原口「最近はどれだけ本人に近づけるか、クオリティー重視になってるんで、僕みたいな“雰囲気ものまね”は除外されるんですよ。僕は“憑依型ものまね師”って名乗らせてもらってるので、歌まねや歌唱力で押すというよりは、そもそも『ものまねってこういうものだったよね』っていうものを表現してます。僕はどうしてもそこに笑いの要素を入れたいんですよ」
──似てるって感動されるより、やっぱり笑わせたいっていうのが一番?
原口「そうですね。笑って楽しんで、喜んで帰ってもらうのが一番いいですね。そこに感動がついてくれば(笑)」
──最近の歌まねは笑うっていうより、感心する比重の方が大きいですよね。
原口「これ全否定するわけじゃないんですけど、僕がやることではないなと思ってます。もちろん素晴らしい技術ですが、そこは上手な人たちにやってもらえば、逆に僕らがもっと遊べるかなっていう感覚はあります。
ぶっちゃけ、どちらも好みでしかないので、後はものまねされるアーティストやファンの方がどう思うかとか、そういうところだと思うんですよね。「ご本人に公認もらいました」という方もいますが、まあそれはもちろんうれしいことでしょうけど、僕の場合は逆にやりづらいんですよ」
──非公認の危うさみたいなのも面白いですもんね。
原口「その方が表現しやすくなるというかね。もちろんそこにはリスペクトが入ってくるんですよ。千原ジュニアさんからは『リスペクトって言うとったらえぇみたいなもんになってるやろ』なんて言われたりしてますが(笑)」
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自信と葛藤の果てに生まれた「さんまものまね」
──急なものまねでビックリします(笑)。デビュー当時はコンビで活動してましたが、どうしてピンに?
原口「いろんな人とコンビを組んで、漫才、コントなんでもやりました。でも続かなくて、相方探すのが面倒になっちゃって、これはピンなのかなと。ただ、心のどこかに自信があったんですよ、いつか売れるんじゃないかみたいな根拠のない自信がね」
──若い頃ですもんね。
原口「それでもピンになるにあたって何かやらないと、と思って。ものまねは中学生の頃からやってたんですが、最初はすごい葛藤があって。人のキャラを借りて、その人の言ってることをまねて、それを自分の芸と言っていいのかと。
そこで生まれたのが、ものまねコントだったんです。最初はとんねるずのタカさんとノリさんが、当時流行していたスキャットマン・ジョン風に坂東英二さんの楽屋を訪ねて行くという…。『ピーパパパラポ』『いやーもうボク坂東』みたいな(笑)」
──これはオリジナルですね(笑)。
原口「でも、当時のオーディションだと『何をやってるか分からない』って言われちゃうんです。結局、まだ誰もやってない“新しい誰か”が欲しいんだと。そこで僕も若かったからカチーンときて、『じゃあさんまさん、できます!』と言っちゃって。やったことないのに、さんまさんが頭に浮かんだんです」
──原口さんの代名詞となるものまねが生まれた瞬間ですね。
原口「ヤバいと思いながら、必死に自分の中のさんまさんのイメージを突き詰めて「イヤー!ワッホー!」ってやったんですよ。そしたら面白いって言ってくれて、出演が決まったんです。
それで『恋のから騒ぎ』(日本テレビ系)をアレンジしたネタをつくったんですが、肝心のさんまさんの声がなかなか近づかなくて、前歯を付けてみたら意外と似ちゃったんですよ。周りもノセてくれて番組に呼ばれるようになって。
でも、当時のさんまさんのものまねは、恥ずかしくて見てらんないですね。力が入りすぎてて、全然ナチュラルじゃないし」
原口「誰もやったことないものまねだったから、後は動きでごまかそうと思って。声が近づかないんだったら、画面をいっぱいに使った動きやフレーズで似せようと。それがうまくハマったんです。
当時、運良くコージーさんがいらっしゃって、2人の掛け合いがウケて、いろんな番組に呼んでもらえるようになりました。コージーさんとは現場から現場への移動中も掛け合いをやって、これが千本ノックのようで鍛えられましたね」
