インフルエンザが全国で猛威をふるい、学級閉鎖が相次いでいる。SNSには子どもの看病に追われる保護者の悲鳴があふれ、共働き家庭にとって“最後の砦”とも言われる「看護休暇」についても「使えない制度」との不満が噴出している。いったい何が問題なのか。専門家に実態を聞いた。
相次ぐ学級閉鎖で保護者からは悲鳴の声
インフルエンザの流行で、全国の幼稚園や保育所、学校では休業や学級閉鎖等が相次いでいる。厚生労働省が21日に発表した調査によれば、学級閉鎖となった学校は9月からの累計で1万校を超えたという。
そうしたなか、保護者にとって強い味方となるのが「子の看護休暇」(2025年4月より「子の看護等休暇」)だ。
子どもが病気などをした際に、働く親が1年度に5日(子が2人以上の場合は10日)まで休暇が取得できるという制度だが、SNSには保護者から「5日じゃ足りない」「看護休暇あるけど無給…」「子どもが3人以上でも10日なのなんで?」などの声が挙がっている。
小学1年生の子どもを持つ父親は次のように話す。
「会社の就業規則に看護休暇はあります。でも無給なので、結局は有休を使いますね。妻の会社は看護休暇が有休扱いなので、どうしても妻に休んでもらうほうが多いです」
都内で働く2児の母親は、制度自体を十分に把握していないという。
「前の職場では無給の看護休暇が5日あったけど、有休を消化するほうが多かったかな。今の会社では制度があるのかどうかも正直把握していないです…」
そもそも、看護休暇はいつから導入された制度なのだろうか。東京労働局雇用環境・均等部の担当者に話を聞いた。
「『子の看護休暇』制度は2002年の法改正で導入され、努力義務として5日間与えられていました。2005年より義務化され、2010年からは子どもが2人以上の場合は年10日を取得できるようになっています。
(5日間という日数については)努力義務として導入する際に、『年間に女性労働者が子どもの病気のために休んだ日数』に関する調査の結果が指針として示され、それを踏まえて定められました」
取得率の低さに男女差…浮き彫りになる課題
今から四半世紀近く前に導入されたという「子の看護休暇」制度。
今年4月から段階的に施行されている改正育児・介護休業法でも見直しの対象となっており、「対象となる子の範囲の拡大(小学校就学の始期に達するまで→小学校3年生修了まで)」や、取得事由に「感染症を伴う学級閉鎖等」「入園(入学)式、卒園式」が追加されるなど、適用の範囲が広がった。しかし、まだ十分にその役割を果たせているとは言えない現状があるようだ。
制度が抱える課題について、子育てアドバイザーでキャリアコンサルタントの高祖常子氏に話を聞いた。
「最近、インフルエンザなどの感染症は毎年のように流行していますし、感染すると回復までにかなり日数がかかります。看護休暇の取得日数は子ども1人で5日、2人以上は10日間ですが、でも最長で10日までです。
私の場合は3人の子どもがいますが、誰かが感染すると順番にかかっていくので、毎週病院に行ってましたから。制度が始まった時代とは違い、さまざまな感染症がある現状に合わせて日数の見直しが必要ではないかと思います」
さらには「有給」「無給」の問題もある。法律上の定めがなく企業の判断に委ねられているため、看護休暇を「無給」扱いとする企業が多い(全体のおよそ3分の2/厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」)現状について、こう指摘する。
「親は将来の納税者を育てているわけです。そういう観点からも、看護休暇が有給になるように国の支援があったらいいと思います」
加えて「取得割合の低さ」という課題もある。厚生労働省が行なった「令和3年度雇用均等基本調査」によれば、「小学校就学前までの子を持つ労働者に占める子の看護休暇取得者の割合」は「女性16.2%、男性6.7%」と、取得割合の低さに加えて男女差も浮き彫りになっている。
男性の子育て支援事業などを行なう「NPO法人ファザーリングジャパン」の副代表理事も務める高祖氏は、父親が子の看病にあたるケースは以前より増えたとしつつ、「まだ母親に偏っているのでは」と話す。
「共働きの場合だと父親と母親が交代で看護休暇を取ることができますし、一昔前よりは小児科に子どもを連れていく父親が増えた印象はあります。でもやはり、子どもの具合が悪いときは母親が対応することが多いのではないでしょうか」

