1950〜70年代の旧い映画に登場する名優たちの装いには、ボクたちの憧れとロマンが詰まっている。銀幕の中で粋に装う彼らが、もし現代に生きていたらどのような着こなしを見せてくれるのだろうか。そんなトラッドファン垂涎のテーマのもと、西口修平さんが組んだコーディネイトを解説してもらった。

【STYLE 01】『アニー・ホール』のウディ・アレン
1978年公開。ウディ・アレンが監督・脚本・主演を務めるロマンスコメディ。ニューヨークを舞台に、主人公の漫談芸人アルビーとクラブ歌手のアニー・ホールとの複雑な恋愛模様を描く。アメリカ軍の[M-51]ジャケットやプリーツ入りのチノパン、ツイードジャケットやチェックシャツなど、この映画を象徴するアイテムが数多く登場。数多くの業界人が自身のスタイルのバイブルとして挙げる、“ファッション史に残る名作”である。
インナーの色遣いにこそスタイリングの真髄がある

「『アニー・ホール』は、ファッション史に残る映画として、ご存じの方も多いのではないでしょうか。ミリタリージャケットやツイードジャケット、チェックシャツなど、この映画のウディ・アレンを象徴するアイテムが多く登場するのですが、私がいちばん痺れたのは中に着ているTシャツの色遣い。適当に着ているだけなのか、はたまた計算しているのかはわかりませんが、白TシャツではなくカラーTシャツを着ているというのが最高にかっこいいんですよね。今回は彼のアイコニックなアイテムをバランスよく選びつつ、色を拾ったオリーブのカラーTシャツがポイントになっています。劇中では『ラルフ ローレン』2プリーツのチノパンを穿いていると言われていますが、今回は『もっと良いモノを穿かそう』ということでボトムスは[M-43]ミリタリーチノを。足元はいまの自分自身の気分的にも『ジェイエムウエストン』の[ゴルフ]を選んで現代的に纏めています」
M-51ジャケット1万6500円、シャツ8800円、チノパン2万9700円/すべてヴィンテージ、ツイードジャケット1万6500円/ポロ ラルフローレン、ボタンダウンシャツ6600円/ギットマン ブラザーズ、シューズ8万8000円/ジェイエムウエストン
【STYLE 02】『コンドル』のロバート・レッドフォード
1975年公開。CIAの外郭団体として、世界各国の雑誌書籍の情報分析を行うアメリカ文学史協会に務めるロバート・レッドフォード演じる主人公、“コンドル”ことジョセフ・ターナーがCIAの陰謀を暴くために奮闘するサスペンスアクション。逃走中に拉致同然で巻き込んだ女性カメラマンの自宅にあった男物のピーコートや、70年代らしいブーツカットのデニムパンツ、トップバーのアイウエアなどが象徴的なアイテムとして挙げられる。
シーンとシーンを掛け合わせた粋なレイヤードスタイル

「劇中の装いをミックスさせたようなスタイリングです。難しいことはせず、素直にスタイリングを組みました。劇中でピーコートを着ているシーンでは、ジャケットを着てはいないのですが、別のシーンで着ているグレーのヘリンボーンジャケットをレイヤードした方が洒落ていると思い、2つのシーンを掛け合わせたというわけです。クラシックな10ボタンのピーコートは劇中のロバート・レッドフォードと同様に無造作に襟を立てるのがポイント。パンツはこの映画が公開された1970年代を象徴するようなブーツカットにトレッキングブーツという、こちらも劇中の装いをサンプリングしています。このブーツカット×トレッキングブーツは当時における定番の合わせともいえますが、いまの時代においても新鮮に感じられますよね。コーディネイト全体を見ても、時代性はありつつも現代にいても何ら違和感のない、程よいバランスに仕上がったのではないかと思います」
ピーコート1万6500円/ヴィンテージ、ツイードジャケット1万6500円/ポロ ラルフローレン、シャツ1万6500円/ローバック、ジーンズ2万7500円/リーバイス、シューズ7万7000円/マルモラーダ