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子供には難解だった「スーパー戦隊」22作目が「神作品」になるまで きっかけ作った「深夜放送」

子供には難解だった「スーパー戦隊」22作目が「神作品」になるまで きっかけ作った「深夜放送」


『星獣戦隊ギンガマン DVD COLLECTION VOL.1』(C)東映

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「イメチェン」すぎてついて行けなかった?

「スーパー戦隊」シリーズは、いわゆる「ニチアサ」特撮番組のなかでは低年齢層向けと言われていますが、過去には、再放送をきっかけに大人世代の心をつかみ、評価がぐんぐん上がった珍しい作品があります。それが、シリーズ第22弾『星獣戦隊ギンガマン』(1998~99年)です。

 ポップなSF路線だった前作『電磁戦隊メガレンジャー』のように、「戦隊シリーズ」の王道設定は、現代の科学技術を駆使して戦うというものです。

『ギンガマン』は、その「マンネリ打破」を強く意識した作品だと言われています。作品の大きな特徴は、「森の民」、「星獣」、「魔獣」など、中世ファンタジーや神話的世界観を導入したことでした。これにより、雰囲気がガラリ一変したのです。

 あらすじは、自然と共に生きる「銀河の森」の5人「ギンガマン」が、自然の力「アース」を操って、星獣とともに、「宇宙海賊バルバン」と戦うというもの。……この説明だけでは伝わりにくいですが、とにかく、王道との違いに、ターゲットである低年齢層の反応は芳しくなく、視聴率は平均約6%(前作『メガレンジャー』が約8%)と、期待したほど伸びませんでした。

 原因は多々あったと思います。「自然・継承・犠牲」といったテーマが中心でトーンがシリアス。主人公たちが「若き戦士」で最初から強く、成長物語が薄くてクール。ファンタジックな想像的要素が理解しにくかった。コミカルなやりとりが減って暗い印象を受けた……など、全体的に地味なイメージが残りました。マンネリ打破の方向性が少し横道にそれたのかもしれません。


大胆な設定変更がなされるも、巨大ロボは登場した。画像は『星獣戦隊ギンガマン DVD COLLECTION VOL.2』(C)東映

夜に見ると心に沁みた? 秀逸なストーリーと映像表現

 ところがです。放送終了から数年後、2000年代に入って、その低評価が徐々に覆ります。CS「東映チャンネル」の深夜帯で「戦隊シリーズ」の一挙放送がありました。そこで「ギンガマン」が視聴者から絶賛されたのです。声を挙げた人の多くは「大人世代」でした。

 神話的でファンタジックな世界観に、こだわりを持って撮られた丁寧な映像。ヒーロー側と敵側、それぞれのキャラに人生背景があって誰かに感情移入できる。キャラデザインや造形、音楽など、視覚、聴覚のセンスも良く作品が際立ち、ストーリーは過去に類がないほど「ドラマ性」があり、長編の物語として見続ければこその奥深さがありました。つまり、非常に見応えがある作品だという反応でネットが沸いたのでした。

 もちろん制作側も、マンネリを打破しオリジナルを創造する覚悟で挑んだわけですから、躍起だったのは当然です。「田崎竜太」監督は、時間を費やしたワイヤーアクションや、森、滝、岩場などの大自然で自然光を取り入れたロケ撮影を積極的に導入しました。変身シーンやカメラワークも「生の勢い」を強調して、当時の特撮演出の形式を更新したとされています。脚本や音楽も、かなり綿密に練られたそうです。

 制作者側のハイクオリティーな「マンネリ打破」の部分は、子供には難解だとされるも、時を経て大人世代にまっすぐ伝わったのです。

 さらに、2020年頃のコロナ禍には、「YouTube Official」での配信やDVDでの視聴から新規ファンが急増したといわれています。

 放送終了から遅れて人気になった「ギンガマン」は、「詩的・神話的」を押した異例な作品でしたが、これがのちの『タイムレンジャー』や『仮面ライダークウガ』へと続く「ドラマ性重視の時代」の礎を築いた名作と、たたえられています。

 すでに報道されているような「スーパー戦隊シリーズ終了」が本当ならばとても寂しいことですが、もし、「ギンガマン」が王道の壁を一度壊していなければ、シリーズは50年続いただろうか? ……そんな考え方もしてしまいます。

配信元: マグミクス

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