「これ、ちょっと多くないか…」
昨今のプロ野球を見て、そう思った人は少なくないのではないか。「バットが折れる」ことだ。
最近の「事件」としては、こんなものがあった。
「9月9日、日本ハムの八木裕打撃コーチの頭部左側に、折れたバットが直撃するアクシデントがありました。この日は、折れたバットが東京ドームのスタンド席に飛び込むハプニングも発生。9月14日にはオリックス・曽谷龍平投手の胸部をバットが直撃し、担架で運ばれています」(スポーツ紙記者)
バットが折れる原因については、大方の結論は出ている。「硬さ、軽量化、乾燥」だ。近年、密度と硬度が高いメイプル材の人気が高いが、材質的に「折れやすい」という弱点を持っていた。選手たちもそれを分かっていて使ってきたわけだが、「折れたバットが飛んでいく」現象は、その延長上にあるものだ。
球界関係者が言う。
「多くの投手が150キロ以上を投げるようになりました。バットは芯を外してボールに当てると、折れることが多いんです。ツーシームやカットボールのような『小さく鋭く曲がる変化球』が増えたので、芯を外され、バットを折ってしまうようです」
そんな見解を、とあるスポーツメーカー担当者にぶつけてみたら、先の「硬さ、軽量化、乾燥」の「軽量化」を指して、こう補足してくれた。
「速いボールに対応するため、バットを軽くする選手ばかり。ひと昔前は920グラムから930グラムが平均的でしたが、今では880グラムほど。バットを軽くしすぎるのは危険なんですが…」
バットの長さ、形態を変えずに軽量化するために、どうしているのか。機械を使って急速乾燥させるのだという。この乾燥作業がバットを折れやすくし、寿命を縮めてしまうそうだ。とはいっても、バットを軽くして操作性を高めなければ、150キロを投げて鋭い変化球を操る令和の投手たちとは勝負できないのも事実だ。
「昭和時代のスラッガーは、バット選びに時間をかけていました。同じ長さ、重さ、形態であっても、手に持っただけで自分に合うか合わないかを見極めていた。そのバット選びは『職人作業』であるかのように伝えられていました実は木目を見たり、グリップエンド周辺の触り心地で、折れやすいかどうかを確かめていたんです」(前出・スポーツメーカー担当者)
平成、令和の選手たちは、このバット選びにあまり時間をかけなくなったそうだ。バットを強化するコーキング剤の研究は進んでいるが、バット事故の多発は「投高打低のプロ野球界」を象徴する出来事だ。
今後、バットの材質を変えるのか、強化剤の完成を待つのかは分からないが、バット選びのコツみたいなものを伝授すれば、多少は防げるのではないか。昭和の選手の話を拝聴する必要があるかもしれない。
(飯山満/スポーツライター)

