2025-26シーズンの開幕から約1か月が経過したNBAだが、この短い期間にもケガ人が続出している。
この事態に、ゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)は、今季の各チームの戦い方において、ペースが加速していることを要因のひとつに挙げていた。さらにフランスの『レキップ』紙は、統計解析サイト『Inpredictable』のデータをもとに、興味深い考察をしている。
同紙によると、1ポゼッションあたりにかける時間が“平均14秒未満”というハイペースで試合を進めるチームの数が、昨季の7チームから、今季はなんと全30チームに急増。リーグ全体で大幅にペースアップしているのだ。
昨季は全チームのレギュラーシーズンでの平均が14.5秒だったのに対し、今季の11月18日時点では、平均11.5秒と3秒も短縮している。
ここ数年を見ても、21-22シーズンは4チーム、22-23シーズンは6チーム、23-24シーズンは4チームと、一部のチームだけが14秒未満というハイペース重視のゲームを展開していたのが、今季は最も時間をかけているロサンゼルス・クリッパーズでも13.1秒と、リーグ全体がスピーディーな戦い方を選択していることがわかる。
このトレンドを作った一因として挙げられるのは、昨季ファイナルを戦った東西の両雄、インディアナ・ペイサーズとオクラホマシティ・サンダーだ。
両チームとも速攻を得意とし、相手の陣形が整う前に仕掛けるスピーディーなオフェンスを定番スタイルとしていた。
今季、最も顕著な変化を遂げているのはマイアミ・ヒートで、昨季は14.9秒とリーグで23番目に遅い部類に入っていたが、現時点では平均10.2秒と最速を記録している。
ヒートは今オフ、オフェンス・コンサルタントとしてノア・ラロッシュを迎え入れた。
昨季はメンフィス・グリズリーズでアシスタントコーチを務めていたラロッシュは、3月に当時ヘッドコーチのテイラー・ジェンキンスが解雇されたのに伴ってフランチャイズを去っていた。
彼がメンフィスに導入したのは、一般的なオフェンス戦術に比べてスクリーンやハンドオフを多用しない、より流動的でムーブメントを重視した攻撃システムだった。
それにより、昨季は1ポゼッションあたり13.3秒というリーグ3番目に速い攻撃を仕掛け、平均得点はリーグ全体でクリーブランド・キャバリアーズ(121.9点)に次いで2位、ウエスタン・カンファレンスでは、王者サンダーをもしのいでトップの平均121.7点をあげていた。
ラロッシュは似たようなシステムをヒートに導入し、リーグ最速ペースで攻撃を展開しながら、リーグNo.1の得点力を誇るチームに押し上げている。下から7番目だった昨季からは大きな飛躍だ。 同じく、ペースで2番目につけるポートランド・トレイルブレイザーズも、ハイペースのオフェンス戦術を採用し、昨季の得点を大きく上回る数字をあげている。
それとは逆に、ヒューストン・ロケッツのように、ペースでは下から3番目だが、得点はリーグ3位というチームもある。
ケビン・デュラントやアルペレン・シェングンのようにビルドアップできるクリエイティブな選手が中核を形成しているロケッツは、速さ主体の戦術に頼る必要がないということだろう。
一方でプレーメーカーに乏しいチームにとっては、1ポゼッションあたりのスピードを上げることで単純にシュート回数を増やすスタイルが主流となり、そのスピード自体もこれまでよりはるかに加速していることが数字に表われている。
カーHCも指摘していたように、それがこの序盤戦のケガ人多発にも影響している可能性はあるが、『ESPN』のシャムズ・シャラニア記者は、「リーグは全選手を対象に、バイオメカニクス評価プログラムを開始し、すでに500人以上の選手が何らかの検査を受けている」と、リーグ側が対応に乗り出していることをリポートしている。
バイオメカニクス検査は、身体の動きを科学的および力学的に測定して、パフォーマンスの改善やケガの予防につなげるものだ。
いかに得点数が増えても、肝心な主役たちの身体に害が及ぶようであれば意味がない。このハイペースゲームのトレンドが今季どのように発展していくのか注視したい。
文●小川由紀子
故障者が相次ぐNBAの現状にウォリアーズのカーHCが警鐘。選手の消耗の激しさに「これがケガに影響」「遠征中一度も練習してない」<DUNKSHOOT>

