幸運が舞い降りた。
ラグビー日本代表は11月22日、敵地のトビリシでジョージア代表と激突。残り時間が7分を切ったところで、得点した直後の流れで反則。約2分を残して勝ち越されてしまう。22―23。
秋のキャンペーン5戦全敗に限りなく近づいたが、再逆転の可能性を手にできた。
ラックの連取による時間稼ぎをしてもよかったジョージア代表が、何と足元のボールをタッチラインの外へ蹴り出してしまう。日本代表はラインアウトからの攻撃権を掴み、じっくり継続する。
6フェーズ目。この午後ずっと攻守で献身のフランカー、タイラー・ポールが、この局面において2度目のボールタッチで好突進。相手の妨害行為を引き出し、ペナルティーキックを獲得できた。
ショットを選択した。スタンドオフの李承信副将が、それまで5回あったゴールキックの機会と同じように成功に導く。25―23。10番は淡々と述べた。
「アウェーの雰囲気にあってもルーティーン(一定の動作)に集中。前半から当たりがよくて、最後のキックも『これを入れたら…』とは考えず、どういう弾道で蹴るかを意識できた」
助けられた側面もあっただろう。
ジョージア代表には、件の蹴り出したシーンに象徴される不可思議なエラーでたくさんの機会をもらえた。それでも攻めあぐねてはいて、「フィジカル(の強さ)に受けていました」と李。直近のゲーム時と同様、敵陣22メートルエリアまで攻め入りながら仕留め切れない瞬間も少なくない。決定力次第ではもっと優位に試合を運べたかもしれない。
もっとも勝ちは勝ちだ。
ましてやこの日の結果は、12月3日にある2027年のワールドカップオーストラリア大
会の組分け抽選会に影響する。
13位だった日本代表がひとつ上回るジョージア代表を下したことで、「バンド2」に絡んだ。抽選時に2巡目でくじを引け、その時の上位国とは1つしか同じ組にならずに済むのだ。
就任2年目のエディー・ジョーンズヘッドコーチは、自ら大幅に若返らせた隊列の成功体験をこう評価する。
「ラグビーはふたつの要素がある。15人対15人でやる。1点差でも試合に勝つ。それ以外にない」
何より、いまのジャパンはつきが回ってくるにふさわしい状態になりつつあったのも間違いない。
ギャリー・ゴールド新アシスタントコーチのもと磨いた堅陣は、あちらのパワーランナーたちの突進や大人数を割くモールに見事に対応。前半10分のチーム唯一のトライも、自陣ゴール前での好守でミスを誘ったのがきっかけとなった。
19―6とリードして迎えた後半10分頃には、被ターンオーバーから向こうのランナーの加速を許しながらもその足元へナンバーエイトのジャック・コーネルセンが手をかける。自陣ゴール前での落球を誘った。司令塔は頷く。
「ジャックだけじゃなく、チーム全員がトライラインを守る意識でいました。責任、覚悟をグラウンドで体現できた」 柔軟性もにじませた。アタックがやや機能不全だったと見た李は、「あまりボールを持ちすぎないようにした」。自身およびスクラムハーフの齋藤直人の位置から、コンテストボールと呼ばれる高い弾道のキックを多用した。
そのうちのいくつかは絶妙な飛距離で、日本代表の追っ手が競って再獲得できたこともあった。空中戦は一時課題だったものの、この2試合で改善傾向にある。李は続ける。
「テンポをコントロールしてキックゲームに持ち込むところはうまくいった」
10月下旬以降は上位国に4連敗。特に15日のカーディフでのウェールズ代表戦では、様々な局面で際立ちながら23―24で散った。失敗を糧に、我慢比べに必要なファクターを揃えてこの日に至ったのだ。
「自分たちで勝利を手放してしまうなかでも、チームとして毎週、前進しようと思っていました。僕たちが一番、心も身体も痛かったですが、しっかり勝とうと準備してきた」
さらにありがたくも訪れたラストチャンスの場面でも、グループは落ち着いていられた。
妨害行為が目立ったジョージア代表の傾向を踏まえ、24歳のプレーメーカーは「ショートサイド(狭い区画)でキープするより展開したほうがペナルティーを誘えそう」。実際、1次目で左から右へと大胆にパスを回し、ポールの6フェーズ目に繋げた。
「僕のコール(指示)に対して一人ひとり(役割を)遂行してくれた。(その直前に)トライを取られてからもネクストジョブにフォーカスできた」
最近は相次ぐ故障離脱者がかさみ、今度の登録23人中13人がキャップ(テストマッチ=代表戦出場数)1桁台。かくも厳しい条件下でも笑って終われた。10月に30歳で代表デビューのポールは、「いい形でツアーを終わりたかった。ジャパンでプレーするにはベストを尽くしたかった」と安堵した。
取材・文●向風見也(ラグビーライター)
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