大相撲九州場所で優勝し、大関昇進を確実にしたウクライナ出身の関脇・安青錦は、師匠の安治川親方から「自分で考えろ」と言われたという「口上」に頭を悩ませている。
7歳から相撲を始め、2019年の世界ジュニア相撲選手権大会(大阪)で3位に。相撲と並行して8歳から17歳でレスリングを経験し、17歳の時にはウクライナ国内大会の110キロ級で優勝している。
そんな安青錦が来日したきっかけは2022年2月の、ロシアによるウクライナ侵攻だった。相撲を続けられる環境を求めて来日したが、その際に頼ったのが、2019年の世界ジュニア選手権で知り合った、関西大学相撲部員だった山中新大さん。
山中さんの自宅に居候し、関西大学や山中さんの出身校である報徳学園の相撲部の練習に参加。報徳学園相撲部監督の紹介で、2022年12月に安治川部屋に入門し、現在に至っている。
現在は関大相撲部のコーチを務める山中さんは、11月24日放送の「よんチャンTV」(MBSテレビ)で、安青錦との深いつながりを明かしている。
「(九州場所優勝後に)彼の方から電話が来て『優勝しました』と連絡をもらいました。今まででいちばん嬉しくて、家族3人で(テレビを)見ていて、僕の母親も泣いていました」
さらに安青錦の意外な一面を聞かれると、
「けっこう繊細な子なので、一緒にご飯を食べていてご飯の汁とかが服に飛んだら、それだけでテンションが下がる」
そして運命の出会いについては、こう語った。
「僕は観客として(世界ジュニアを)見にいっていて、父親から『ウクライナに強い子がいる』と言われて、そのあと僕がトイレに行こうとしたら、たまたま僕の前を通りかかったんで『ハロー』と声をかけたのが初めての出会いです」
その後、安青錦の名前をインスタグラムで調べ、メッセージを送ってからやり取りが始まったという。
ロシアによるウクライナ侵攻時の様子はというと、
「彼の方から『日本に避難できますか』と連絡があって。勇気を出して連絡をくれたので、何かできることがあったらサポートしたいと思った。彼の両親とは今でもつながりがあるので、昨日も優勝が決まった瞬間にビデオ通話がかかってきて感謝してくれたというか、彼の母親も泣いて思いを伝えてくれた」
安青錦は優勝力士インタビューで、
「嬉しいですけど、またもうひとつ上の番付があるので、そこを目指していきたい」
と意気込んだが、山中さんの気持ちも同様で、
「彼の持っている力からすると、いちばん上の番付を目指してほしい」
まずは大関昇進の伝達式での口上をこなし、最高位を目指してますます精進してほしい。
(鈴木十朗)

