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「料理に疲れた」共働きやシニア就労を支える冷凍食品や惣菜の急成長「下ごしらえ不要」「レンジで温めるだけ」の中食がくれるもの

「料理に疲れた」共働きやシニア就労を支える冷凍食品や惣菜の急成長「下ごしらえ不要」「レンジで温めるだけ」の中食がくれるもの

共働き世帯の増加やシニアの就労拡大により、調理にかけられる時間はますます減っている。いまや惣菜や冷凍食品は“手抜き”ではなく“賢い選択”へと変化を遂げた。その消費を牽引する50~60代のニーズとともに、中食市場が急拡大している。

 

新刊『なぜ野菜売り場は入り口にあるのか スーパーマーケットで経済がわかる』より一部抜粋・再構成してお届けする。

スーパーの消費の中心は50~60代

少子高齢化は、食生活や消費者行動にも大きな影響を与えている。いまや消費全体の約40%を50~60代が占めており、彼らのニーズに応えることが重要な課題となっている。私たちはスーパーマーケットに何を求め、何を買っているのか、順を追って見ていこう。

まず、50~60代の消費者を中心に健康志向が高まっている。栄養バランスの取れた食品や健康食品を求める傾向があり、サプリメントや機能性食品、低カロリーや低糖質の商品が人気だ。

次に、日本人のたんぱく源が魚から鶏肉へシフトしている。鶏肉は調理が簡単で多様な料理に使えるため、忙しい家庭や一人暮らしの若者に人気がある。鶏肉は比較的安価であるため経済的な理由からも選ばれており、2024年の家計調査でも鶏肉消費量は増加している。

さらに、日本型食材(ごぼう、コメ、ほうれん草など)の消費が減少し、惣菜化が進んでいる。ごぼうの消費量は、70代以上の1661グラムに対して20 代以下は527グラムにとどまる。また、コメの消費量も減少傾向にあり、40代では年間約53キログラム、30代では約38キログラム、20代以下では約28キログラムと、若い世代ほど少ない。

一方で、惣菜の消費量は増加している。多くの家庭で、時間をかけて調理するよりも、手軽に食べられる惣菜を購入する傾向が強まっている。

その背景にはまず、女性の労働参加が増加していることが挙げられる。社会進出が進み、フルタイムで働く女性が増えることで、家庭での調理に割ける時間が限られてきている。調理の手間を省ける中食(なかしょく、惣菜や弁当など)の需要が高まっているのは当然だ。

次に、シニア層の労働参加も見逃せない。高齢者の就労率も上昇しており、特に60代後半から70代前半の労働力率が急上昇。高齢者が働くことで、家庭での調理時間が減少し、簡便な食事を求める傾向が強まっている。

中食市場の成長に対応するため、スーパーマーケットや食品メーカーは簡便で栄養バランスの取れた惣菜メニューの開発を急ぐ。カット野菜や調理済みの肉や魚、合わせ調味料なども人気を集めている。

冷食市場が10年で4割近く拡大

【生活者の声】惣菜と冷凍食品はもう欠かせません。以前は揚げ物ばかりで「茶色」の売り場でしたが、最近は生春巻きのようなエスニック風も増えてカラフルになっています。有名店監修の惣菜も出てきて、おいしくなりました(40代・印刷会社勤務)

「きょうはごちそうを探しに来ました」――40代の女性が子ども連れでカートを押している。JR京葉線・新浦安駅前の商業施設。コンビニエンスストア4個分に相当する400平方メートル超の売り場に、冷凍ショーケースがズラリと並ぶ。イオンリテールが千葉県浦安市に開いた新業態「@FROZEN」だ。

扱う冷凍食品は1500種類以上。うち半数は既存のイオンでも扱う商品。餃子やチャーハンなどが定番だが、「俺のフレンチ」といった有名レストランや専門店のメニュー、フランス発の冷凍食品専門店「ピカール」のスイーツなどが目玉になっている。

コロナ禍では外出自粛が呼びかけられ、家で食事する人が増えた。特に冷凍食品はストックできる上に調理が簡単で、2024年の市場規模は1兆3200億円と、この10年間で4割近く拡大した(富士経済)。冷蔵庫ではスペースが足りずに「セカンド冷凍庫」を購入する家庭も増えている。

家計調査(2人以上世帯)によると、「冷凍調理食品」に1年間に支出した金額は、2024年が平均で1万1032円と、この20年ほどでおよそ2倍になった。コロナ禍前の2019年(7817円)と比べると、わずか5年で3000円強の大幅な伸びとなった。

業界団体の日本冷凍食品協会によると、2024年の国内出荷額は家庭用が4100億円、業務用が3900億円で、家庭用が業務用を上回った。業界関係者は、共働き世帯や単身世帯が増える傾向にある中、調理の手間が少なく、時間の節約にもなる冷凍食品の需要が高まっていると見る。加熱ムラをなくすなど、各社の商品開発努力で品質も向上している。

@FROZENの開店時、イオンリテールMD改革本部長の西野克執行役員は「冷食の提供価値を上げるには品揃えを増やし、それらを展開できるだけの売り場面積が必要だ。冷食市場が外食ニーズをとらえているいま、冷凍食品だけを切り出す形で新たな成長の可能性を探る」と新業態開発の狙いを語った。

売上は当初計画を上回り、都市部を中心に約20カ所に@FROZENを出店済みだ(2025年10月時点)。イオンや@FROZENでしか買えない商品が売上の上位を占めており、西野氏は好調の要因について「独自商品の発掘・開発の継続が差別化のポイント」と分析する。

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