レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、マックス・フェルスタッペンが見事な勝利を飾ったF1ラスベガスGP後に、複数のオランダ人F1ジャーナリストに囲まれるなか、思わず笑みを浮かべ、インタビューに応じた。
レース中、マクラーレンのランド・ノリスのレースエンジニアを務めるウィル・ジョセフが「マックスに追いつくぞ」と送ったメッセージに対して、フェルスタッペンは次々にファステストラップを更新してノリスの攻撃を抑えた。
「ポン、ポン、ポンとファステストラップを叩き出していたね」とマルコはニヤリと笑った。
マルコがフェルスタッペンに対して、時に過剰に見えるほどの称賛を示すのも無理はない。何しろマックスは、マルコのキャリアを通して最も成功したプロジェクトであるからだ。
フェルスタッペンは、過去に同じくレッドブルで4度のチャンピオンを獲得したセバスチャン・ベッテルをさらに洗練させた存在であり、弱点はほぼ皆無だ。
マルコは四半世紀にわたりレッドブルの若手ドライバー育成プログラムを築き上げてきたが、フェルスタッペンはその理念を体現している。若く、アグレッシブで、レースのためだけに生きる。プレッシャー下でこそ力を発揮し、むしろそれを楽しむ。そして常に勝利を追い求める。
現時点で、フェルスタッペンが最高峰のドライバーであることに異論の余地はない。史上最高のドライバーの一人だと言ってもいい。
「今日のレースは信じられないほどのマックス・フェルスタッペンのショーだった」とマルコは語った。
「彼は最初のコーナーでランドにミスを強いた。そしてその後はレースをコントロールしていた」
マルコにとってフェルスタッペンの5連覇が、自身のキャリアの中で最後の夢であることは言うまでもない。ベッテル時代には成し得なかった「5連覇」こそが、この物語の完璧なエンディングとなるだろう。
ここ数年、フェルスタッペンの去就に大きな注目が集まっていたが、少なくとも2026年まではレッドブルに残留する(契約は2028年まで結んでいる。一応……)。しかしマルコ自身は、自らが積極的にチームに関わるのは2025年が最後の年になる可能性が高いと考えているようで、多くの関係者もそう考えている。キャリアで最も重要なドライバーと共に5連覇を達成すれば、美しい終幕となるだろう。
レッドブルにとって今シーズンは、近年では異例とも言えるほど困難な戦いを強いられた年となった。長い間、ランキング首位のマクラーレンを追う側の立場に立たされ、シーズンの大半は絶望的と言えるほどの差をつけられていた。
組織内の政治的駆け引きによって、20年間チームを率いてきたクリスチャン・ホーナーが退任することとなり、成功の立役者の一人が去った。さらに、ベッテルとフェルスタッペンのタイトル獲得において、最も重要な役割を果たしたとも言える伝説的なデザイナーであるエイドリアン・ニューウェイの退任も重なった。
これは正真正銘のストレステストだったと言える。特にレッドブルがF1の頂点に返り咲けなくなるのではないかと予想されていた時期は、ひとつの時代の終焉を思わせた。8月初旬のハンガリーGPで、フェルスタッペンはなんとか予選Q3進出を果たすも、レースでは9位フィニッシュ。ジュニアチームであるレーシングブルズのリアム・ローソンが同レースを8位で終えたのも、レッドブルの深刻な不調を物語っていた。
さらなる低迷も決してあり得ない話ではなかった。ニューウェイとホーナーを失ったチームは開発の方向性を失い、アイデンティティの一部を剥奪されたかのようだった。マクラーレンのドライバーたちとの差は100ポイントに迫り、タイトル争いなど到底不可能と思われていたし、シーズン後半に勝利することすら、想像もできなかっただろう。
しかし、シーズン後半はハリウッド映画さながらの展開となった。レッドブルは突然奮起し、信じがたい快進撃を繰り広げたのだ。オランダGP以降、マクラーレンのオスカー・ピアストリは単なる優勝候補どころか、揺るぎないチャンピオン候補だと目されていたにもかかわらず、フェルスタッペンはわずか7レースでそのポイント差を完全に詰め切ったのだ。
この期間にピアストリがノリスにもランキング上で抜かれた事実は重要なポイントだ。そしてこの展開によってより一層、今シーズンが劇的なフィナーレを迎えることは間違いないだろう。
それでも、フェルスタッペンのタイトル獲得は依然信じがたい。ノリスの24ポイント差が強固なリードであることにも変わりはない。しかし、ラスベガスGPを終えてタイトル争いの状況がこうなると予想した者がいただろうか? マクラーレンが失格となる前の状況すら、数ヵ月前なら純然たるフィクションに思えたはずだ。
それでもこれは現実であり、この選手権にはいまだにあらゆる可能性が秘められている。マルコが切望するフェルスタッペンの5度目のタイトル獲得も現実味を帯びてきた。
それもすべて、レッドブルがイタリアGP以降、飛躍的な急成長を遂げたことによって実現した展開だ。数回のマシンアップグレードにより、レッドブルは再び全サーキットでの優勝争いに復帰しただけでなく、テクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェはニューウェイの指導がなくとも完璧に仕事を遂行できることが証明された。
そんなワシェの同胞であり、ホーナーの後任を務めるローレン・メキーズ新代表も、替えの利かない存在はいないことを既に示している。とは言え、フェルスタッペンがこの例外であることは言うまでもないかもしれない。
メキーズは度々、このレッドブルの躍進に関して、自身の貢献は「ゼロ」だと主張しているが、レースウィークを重ねるごとに、それはむしろ控えめな謙遜に聞こえてくる。外部から見て明らかなのは、内部の対立がそれこそ「ゼロ」にまで減少したことだ。タイトル争いが大詰めとなり、レースにのみ集中しなければならないこの状況でそれは非常に都合が良い。
それでも、ラスベガスGPのレース直後は全てがはるかに困難に見えた。
「確かに良い結果だが、それでも遅すぎる」とチャンピオンシップについて問われたマルコは答えた。これはマクラーレンの失格が判明する前、フェルスタッペンがノリスに42ポイント差をつけられていたタイミングの話だ。
「我々だけでは(チャンピオン獲得は)成し得ない。ランドが本当に悪い結果を出す必要がある。一度でも十分ありがたい」とマルコは微笑んでいた。
そしてその十分にありがたい贈り物は、わずか2時間も経たないうちに届いたのだ。
そんなフェルスタッペンとレッドブルだが、依然としてタイトル獲得は困難な挑戦だ。ポイント差だけでなく、直近のレースでノリスが圧倒的な強さを見せていることも一因である。彼は脅威の存在であり、ミスを待つだけでは勝てない。直近のノリスはタイトルにふさわしい走りを見せている。
しかしラスベガスGPは、今年のF1が驚きの展開に満ちていることを改めて証明した。

