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人類史における“第三の大移動”が始まった? 気候崩壊と人口減少が引き起こす、この先100年に起きる最悪のシナリオを専門家が指摘

人類史における“第三の大移動”が始まった? 気候崩壊と人口減少が引き起こす、この先100年に起きる最悪のシナリオを専門家が指摘

地球が支えられる人口

私の考えでは、これから人口が減少に向かう最大の要因は、経済成長を支える資源がもはや簡単には手に入らず、加工や流通にも高いコストと健康・環境への負荷がかかるようになっていることにある。

ここ数十年の世界経済は浮き沈みを繰り返しながらも全体的には停滞傾向にあり、無限の成長を前提とするGDPは、もはや経済の健全性を測る指標として適切とは言えないだろう。

ある研究では、地球が支えられる人口は最低限の生活水準で約70億人とされるが、私たちはすでにその数を超えている。すべての人が良質な暮らしを求めるなら、地球の資源には2倍から6倍の負荷がかかるという。

世界経済の停滞、若い世代の将来への期待の低下、精子数の減少といった現象は、突き詰めればこの資源の限界に根ざしているように思える。

本記事で焦点を当てたのは、人類の暮らしと生命を脅かす、かつてない規模の脅威的な気候変動である。気候変動は、猛暑や干ばつ、洪水、そしてそれらを引き金とする戦争などを通じて、急速かつ深刻に進行しており、ホモ・サピエンスにとって実存的な危機をもたらしている。しかも、今後の人口減少を示すあらゆる予測には、この気候変動の影響が明確に組み込まれているわけではない。

人類の出生率の低下は、気候変動という脅威に対する、ある種の本能的な認識を反映しているのかもしれない。

現時点の証拠からは、その認識が「経済状況や仕事の都合を考慮して出産を先延ばしにする」といった意識的な判断として現れているのか、それとも「過密やストレスなどの影響によって精子数が減少する」といった生理的な反応として現れているのかは明確ではない。おそらく、その両方が混ざり合って作用しているのだろう。

もちろん、ここでの議論の多くは、人口動態や気候変動に関する予測に基づいている。予測とは本来、不確かで見通しづらいものであり、これまで述べてきた破局的なシナリオが実際には起こらない可能性も、まったくないわけではない。

深刻な未来像

とはいえ、時間の経過とともに予測モデルは洗練され、データもより幅広く正確なものになってきている。その結果、見えてくる未来像は、残念ながら楽観的な方向へ向かうどころか、むしろいっそう深刻さを増している。

ポール・エーリックが『人口爆弾』を書いた当時、世界の人口は現在の何分の一かに過ぎなかった。彼の予測にはなかった技術革新――たとえば後に触れる「緑の革命」などの農業の進歩――や、女性の権利拡大、家族のあり方に関する価値観の変化といった社会的な動きによって、大規模な飢餓や災害が避けられた形となり、人口の増加は続いた。

しかし、そうした進展によって人類は「破局の先送り」をしているにすぎないとも言える。地球には、もはや長期的に持続可能な形で支えきれないほどの人が暮らしており、それでもなお人口は増え続けている。

しかし、あと数十年もすれば人口の増加は頭打ちとなり、やがて急速に減少し始めるだろう。これは、世界の人口増加率がピークを迎えた1960年代には予測できなかったことである。気候変動がなかったとしても、この人類の減少の過程は、想定よりもずっと厳しく、過酷なものになりかねない。



文/ヘンリー・ジー 写真/Shutterstock

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