高市早苗総理の「台湾有事」に関する発言を機に、中国政府は日本に次々と嫌がらせを仕掛けている。経済に直結する日本への観光旅行の自粛や水産品の輸入ストップに始まり、各種行事やイベントの中止から留学自粛など、その矛先は実に様々。いずれ先端産業に的を絞り、レアアースの輸出禁止へと進んでいくのではないか。
こうした中国政府による嫌がらせは「我々は本気で高市発言に怒っている。日本人は習近平政府の意を理解して、高市政権を潰せ」という意味にほかならない。実に不愉快である。これ以上、嫌がらせが続いたら、半導体の原材料輸出をストップし、中国経済に大打撃を与えればいい。
日本の原材料が不足すれば、中国は一瞬でEV(電気自動車)、太陽光発電、AI(人工知能)などの事業が滞ることは目に見えている。
だが日本の半導体原材料の輸出停止を語る前に、中国は高市総理の発言でなぜここまで荒れるのかを考えたい。
その答えのひとつは、中国政府は「台湾有事」を持ち出さなければならないほど、経済の不振に苦しんでいることにある。今や中国経済はコロナ禍(2020年)に始まり、不動産バブルの破綻(2022年)、さらに米中貿易戦争によって坂道を転げ落ちている。中国経済の成長を支えてきた「中間層」が消費を控え、財布の紐を固く締めているのだ。
これは中国の消費社会が「死に体」に陥っていることを指す。
中国は大まかに分けると、約5億人の都市戸籍と約9億人の農民戸籍から成り立っている。豊かな5億人と貧しい9億人だ。
鄧小平の改革解放(1979年)は、毛沢東時代から中国社会の岩盤になっていた「平等主義」に風穴を開け、10億の国民が「総貧乏人」だった国内に富裕層と中間層を生み出した。
中国の富の40%を握っているのはたった1%の超富裕層と言われるが、海外旅行の有無や教育水準を考慮すると、中間層は約5億人とみていい。
改めて言うが、中国の中間層は改革解放によりカネ儲けが自由になって生まれた。鄧小平の「黒ネコでも白ネコでも儲けたネコがいいネコ」とする宣言が発端だ。この宣言で、国民が我先にとカネ儲けに走った。儲けた者がマンションを買い、さらに2戸、3戸と続く。中国全土に不動産バブルが浸透した。
だが不動産バブルの崩壊は、親族と血族を総動員し、借金をしてまで購入したマンションをめぐって、中国全土の家庭で血みどろの争いへと発展。中国の不動産は設計段階でローンが組まれるため、マンションの建設が始まらずにホームレス同然にならざるをえないケースも多い。
要は中国経済成長の柱だった中間層が没落し、不平不満を限界にまで膨らませているのだ。
中国共産党は人類最強の監視システムで反乱を抑えているが、共産党の存続が危うくなっていることを知っている。だから国民の不満を「日本敵視」へと向けているのだ。
(団勇人)

