
5失点に憤慨。「監督からは『野心的でイイね』と言ってもらえました」。ベルギーで奮闘を続ける木村誠二の充実ぶり「うまく適応するものが揃っていた」【現地発】
木村誠二(ウェステルロー)は11月22日、ヘントのストライカー、ウィルフリード・カンガを完全に封じ込んだ。U-20フランス代表、コートジボワール代表歴を持つ189センチの長身ストライカーは筋骨隆々で、スピードもある。そんな“個”に、186センチの木村も負けずに接近戦を挑み、激しいマークと読みが良いインターセプトでピッチ上から消し去った。
試合が0-0の引き分けに終わった直後、木村はカンガとの攻防を「思ったよりイージーでした」と振り返った。
「身体は確かに強い。彼の頭の高さにボールが来ちゃうと、先に触られてしまうのはちょっとしょうがない部分がありました。しかし、相手の“ここらへん”に収まるボールだったら...自分が後ろから足を出して触ることができる」
そう言った木村は、カンガの懐あたりにボールが来たボールを、背中越しに足を伸ばして突っつく守りを、ゼスチャー混じりに説明した。
前半半ば頃、空中戦のデュエルで、カンガがファール気味に木村を押しながら強引にボールを収め、右サイドに流れて突破したシーンがあった。
「彼に引っ張られたり、押されたりしましたが、別にやり返せばいいだけなんで。ちゃんとやり返せば、向こうもそんなに調子に乗ることなく終わった。『やり返す』と言っても、僕が引っ張り返すとかではなく、正当に強くチャージしにいく。そういうルールの範囲内で圧倒したらやり返せたことになる。そういった意味で完封できたし、やり返すことができたと思います。
(背後からのマークについて)相手からしたらすごく嫌な位置にいたと思います。ちゃんと正しい位置にいると、それだけで相手にプレッシャーをかけられる。『こいつ、嫌な位置にいるな』と思われるだけでも十分、良い守備だと思います。それは続けていきたいですね」
ベルギリーグのレギュラーシーズン折り返しの15節を終えた時点で、ウェステルローは16チーム中12位と成績が振るわない。ヘント戦では坂本一彩の鮮やかなゴールが、ポスト役の味方FWの肩が1センチ、オフサイドラインから出ていたため取消される不運もあった。しかし、木村は自身がフル出場した11試合で5回もクリーンシートに貢献している。
「ベルギーに来てから11試合に出て5試合がクリーンシート。数で言えば半分近くいっているので、及第点だと思いますが、ディフェンダーの選手としてはもっと失点の数を少なく抑えたい。また同じセンターバックのエミンは今シーズン2点取っている。アシストもしてますし。そういうのを見ると自分も攻撃で活躍しないといけないと感じます。
日本ではターゲットになったりする場面は多かったんですが、そんなに取れてなかった。代表の(U-23)アジアカップでは2得点できました。ここ最近は(セットプレーで)頭に当てる回数も増えてきましたし、ドグチャン、グリフィンも良いキッカーで、良い選手が揃っている。あとは中でしっかり決めきりたい」
昨夏、ベルギーリーグがシーズンインしてから、木村はFC東京からウェステルローに移籍した。その初陣は第4節のサークル・ブルージュ戦の後半。以降、リーグ戦で11試合連続フル出場。カップ戦では原口元気のいるベールスホット戦で負けてしまったが、木村は鮮やかにヘディングゴールを決めている。連係が重要視されるCBというポジションの木村が、これほどスムーズにベルギーでスタートを切ることのできた背景は何だろうか?
「ウェステルローは多国籍なチームで、半分以上の選手がベルギー人じゃないんです。日本人の坂本一彩もいますし、そういった意味でも新しく外国人選手が入ってくることはウェステルローにとっては当たり前のこと。スムーズに入るには、そこが環境として良かった。
僕はまだ英語が堪能ではないので、まだ単発でしかコミュニケーションを取れない。だけど、僕は内向的なタイプではないので、ちゃんとコミュニケーションを取りにいく。向こうもある程度、こっちが喋れないのを分かっているので(次の言葉を)待ってたりしてくれる。
(イサム・シャライ)監督もすごく気を使ってくれますし。監督は、シント=トロイデンのコーチとして冨安健洋選手、遠藤航選手、鎌田大地選手ともやっている(ので日本人選手慣れしている)。だから環境として、うまく適応するものが揃っていた。それがデカいですね。
プレー面ではもともと自分の売りであるスピード、パワーがベルギーのサッカー自体にうまくマッチしているところだと思います」
9月のクラブ・ブルージュ戦は5-5という壮絶な打ち合いだった。
「試合が終わった後、僕だけブチギレてました(笑)」
――周りは引き分けでオッケーと。
「はい。クラブ・ブルージュ相手に、アウェーで内容も良く、5-5という引き分けで、終わった瞬間、(天に感謝の祈りを捧げるようなポーズをしながら)ひざまずく選手もいましたし、嬉しい感覚の選手が多かったんですけれど、個人的にはそれがまだ良く分からなかった。リーグ的に、ビッグクラブ相手に、その本拠地で戦って引き分けに持ち込んだことが本当に凄いことなんだという感覚があるのかもしれない。
僕はまだこっちに来たばかりでその感覚がないですし、『いや、5失点してるんだぜ!』というのがあって、すごく...キレちゃいました。でも監督からは『野心的でイイね』と言ってもらえました」
アンデルレヒトを除くベルギーのトップクラブと戦ってきた木村にとって、印象に残るストライカーは誰か?
「うーん(としばらく考え込んで)、個人のストライカーで『こいつ!』というのは、あんまりいませんでした。クラブ・ブルージュはそれこそチームとしての完成度がすごく高かったので、ゴール前なのに浮き球でチョンと(頭越しにパスを通されて)やられて取られちゃうとか、そういった意味でブルージュ戦はうまく“やられてしまった感”が一番強かった。だけど個人で挙げることは、なかなかできない。攻撃でどこと思いつくのはやっぱりクラブ・ブルージュだった」
それでも普段の練習から、ベルギーリーグの個の力を感じることはある。
「うちは速い選手がすごく多いんです。だから練習でも対応を誤ると、やられてしまう。そういうのが試合でも役立ってます」
J3(U-23 FC東京)、J2(FC相模原)、J1(サガン鳥栖)、ベルギーカップ(ウェステルロー)で、それぞれ1ゴール。その他、モンテディオ山形(J2)、京都サンガF.C.(当時J2)と、24歳の木村はこれまでクラブを転々としてきた。
「本当はもっと早く欧州に来たかったけれど、僕自身、J1でたくさん試合に出たわけではなかった。一気に成長曲線が上がったのは去年(2024年シーズン)ですね。鳥栖ですごく出させてもらった。チームが降格してしまったのは大変申し訳なく思ってますが、鳥栖で試合に出たからこそ、U-23アジアカップ、パリオリンピックに出ることができました。自分の(移籍市場での)価値も去年から本当に高まってきました。
オリンピックではスペインに0-3で負けました。だけど(シャライ)監督がちょいちょい『あの試合、(日本相手に2得点した)フェルミン・ロペスにめっちゃ付いていっただろう。ああいうプレーが俺は好きなんだよ』と言うんです。ウェステルローが、僕の大会中のプレーを通じて見て『本当に良い選手だ』と思ってくれた。それが、ここに来ることのできた経緯です」
記者会見を終えたシャライ監督に「結果こそ0-0でしたが、今日のウェステルローのサッカーを楽しむことができました。そして木村とカンガのデュエルも面白かったです」と話題を振ってみた。
「木村は強い」と言ってから指揮官は続けた。
「チームへの適合もスムーズに行きました。彼は右利きのセンターバックですが、左センターバックができるのも良いですね。しかも24歳。私は谷口彰悟のことをリスペクトしています。彼はレジェンド。そんな谷口と、木村は日本代表で一緒にプレーすべきです。冨安、遠藤、鎌田と一緒に仕事をした私が言うんですよ。トミなんか(ボローニャを経由して)あっという間にアーセナルです。木村も本当に良いディフェンダーです」
木村は野心を隠さない。
「ウェステルロー自体がステップアップを歓迎するクラブなので、そこがウェステルローを選んだ理由でもあります。どんどん上のクラブに上がっていくため、まだまだ頑張らないといけない。レギュラーシーズン残り半分、加えてプレーオフの10試合、しっかりやりたいです」
FWのゴールは報道されても、DFの無失点試合が報じられることはめったにない。もちろん守備はチーム全体の献身あってのもの。それが前提だ。それでもプレーコンテンツ、ピッチ上の振る舞い、監督からの信頼を間近に見ると、やはり11試合フル出場で5回のクリーンシートに対する木村の貢献はただならぬものがあると感じ入った。
取材・文●中田徹
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