マクラーレンにとって、F1ラスベガスGPは悪夢のような週末となった。ランド・ノリスが2位、オスカー・ピアストリが4位でレースをフィニッシュしていたものの、スキッドブロックの摩耗が原因で失格となったからだ。チームの首脳であるザク・ブラウンCEOは眠れない夜を過ごしたことだろう。
マクラーレンの失格がなければ、優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)も、ラスベガスGPで”負け組”に含まれていたかもしれない。ノリスが2位となったことで、タイトル争いの差を大きく詰めることができず、残り2戦での逆転は至難の業になっていたはずだ。今になって、オーストリアGPの1コーナーでのクラッシュにより強いられたリタイアや、はるかにパフォーマンスが低いと言われていたチームに敗れて9位に沈んだハンガリーGPのようなレースを思い返して、さらに苛立ちを募らせていたことだろう。
実際つい数日前、フェルスタッペンはスペインGPでの自身の行動が誤りだったと認めた。当時、彼はメルセデスのジョージ・ラッセルに故意に接触し、10秒のペナルティを受け、5位から10位に転落したのだ。
失ったポイントが今フェルスタッペンにとって、より痛手となっていることは間違いない。しかしマクラーレンが失格となったことで、タイトル争いのライバルふたりとの差を25ポイントも埋めた以上、眠れない夜などない。
一方、タイトル争いの真っ只中で、両マシンが失格扱いとなること以上の痛手はない。そしてシーズンフィナーレを迎える2週間後、マクラーレンがタイトルを逃す原因が今回失ったポイントだったと判明するときがきたとしたら、言葉にできないはずだ。
そうなればフェルスタッペンは究極の逆転劇を成し遂げたことになる。いやむしろ、マクラーレンがほぼ確実と思われたタイトルを逃したと言うべきだろうか。
忘れてはならないのは、フェルスタッペンはオランダGP後、ピアストリに100ポイント以上も差をつけられていたことだ。それが、ラスベガスGP後には両者同点となった。
マクラーレンにとって、レースが行なわれた土曜日の夜は安堵の夜となるはずだった。スタートで出遅れたノリスも2位でフィニッシュし、フェルスタッペンに42ポイントものリードを維持できていたのだ。これで、最後の2戦で仮に一度ミスを犯しても、余裕がある状況となるはずだった。
だがその余裕は完全に消えてしまった。フェルスタッペンはわずか24ポイント差、つまりは優勝1回分未満の差で、5度目の世界タイトルに迫っている。フェルスタッペンは血の匂いを嗅ぎつけた。マクラーレンはまさに危うい立場に立たされている。
事態の深刻さは、彼らがスチュワードの判断を覆そうと必死に訴えた様子からもうかがえる。解釈の余地のない明白な違反行為に対し、聴聞会は1時間以上も続いたと報じられている。
それでもマクラーレンは、1999年のフェラーリのように、なおも判断の変更を迫ろうとした。当時、エディー・アーバインとミハエル・シューマッハーは最終戦から1戦前のマレーシアGPで1-2フィニッシュを果たしたが、バージボードが規定違反だとして失格処分となった。
フェラーリ勢の失格が確定すれば、後にタイトルを獲得したマクラーレンのミカ・ハッキネンが早期に世界選手権を制していたはずだった。しかし、フェラーリが失格処分を覆すことに成功したため、彼らは突然タイトル争いに復帰したのである。
ラスベガスでマクラーレンは、予期せぬ状況下でマシンが跳ねていたこと、悪天候によりテストの機会が限られていたこと、そして今シーズンこれまでの事例に比べて違反の程度が軽微であったことなど、酌量すべき事情があったと主張した。
しかしこのような状況では、許された範囲内であらゆることを試さなければならない。また過去には、もっと奇妙な主張が繰り広げられたこともあった。たとえば、2019年にフェラーリがセバスチャン・ベッテルのペナルティを覆すために使用したカルン・チャンドックによるテレビ中継の分析や、レッドブルがシルバーストーンでレーシングラインを再現するために当時テストドライバーを務めたアレクサンダー・アルボンを実際に走らせたことなど、度が過ぎる例はいくつかある。
ノリスのマシンは、わずか0.07mm の摩耗超過で違反とみなされた。しかし、検査を受けたマクラーレン以外のすべてのマシンは、規則の範囲内にとどまっていた。
結局、この 0.07mm がタイトルを決定づけることになるかもしれない。完璧を追求し、今シーズンまさにそのイメージを打ち出そうとしてきたマクラーレンに、そんなことはあってはならない。
それでも、この状況でドライバーらには非はない。ノリスは依然として 24 ポイントのリードを保っており、カタールGPで世界チャンピオンになることも可能だ。ピアストリは、両車とも失格となったことで、少なくともノリスとの差を縮めることができた。
しかしフェルスタッペンは、ピアストリとポイント数で並んでいる。さらにピアストリはここ数週間シーズン前半の勢いを失っており、フェルスタッペンはその隙を容赦なく嗅ぎ取っている。
マクラーレンのザク・ブラウンCEOもこの事実を認識しており、数日前にラスベガスへ向かった時よりもはるかに神経質になってカタールへ向かうだろう。
彼にとってチャンピオンシップはまさに危機的状況にある。そしてマクラーレンは、安全と思われたタイトルを失う怖さを誰よりも知っている。
2007年、2レースを残した時点でマクラーレンは、現在のポイントシステムに換算すると、2位以下に42.5ポイントの差をつけていた。結局、ルイス・ハミルトンもフェルナンド・アロンソもタイトル獲得を逃し、最後に笑ったのはフェラーリのキミ・ライコネンだった。
それから18年後、今回最後に笑うのはフェルスタッペンかもしれない。彼はわずか24ポイント差で、さらにはスプリントレースもあり、4度のワールドチャンピオンにふさわしい自信に満ちている。
フェルスタッペンの好物がパパイヤかどうかは知らないが、彼が弱った相手を狩り取ることに関しては朝飯前だ。マクラーレンはこれまで以上にそれを意識している。

