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『あんぱん』もうすぐアニメ化のアンパンマンは70年代から人気だった? 当時の文献では

『あんぱん』もうすぐアニメ化のアンパンマンは70年代から人気だった? 当時の文献では


柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)

【画像】え…っ? 「モデル?」 こちらがやなせたかしさんが「アンパンマンに似ている」と語った弟・千尋さんの実際の写真です

嵩は「人気ないですよ」と言っていたが

 NHK連続テレビ小説『あんぱん』は、『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんと妻の暢(のぶ)さんの人生をモデルにした物語です。最終週「愛と勇気だけが友達さ」の予告を見ると、ついに『アンパンマン』のアニメ化のエピソードも描かれるようです。127話の最後に、ガチガチに緊張した状態で柳井家に現れた人物「武山恵三(演:前原滉)」が、アニメ化の話を持ってきたものと思われます。

 1973年に幼稚園、保育園に直販されていた月刊絵本「キンダーおはなしえほん」の1冊として『あんぱんまん』(フレーベル館)が刊行され、1976年にミュージカル『怪傑アンパンマン』が上演されましたが、TVアニメ『それいけ!アンパンマン』がスタートするのは1988年と、かなり間が空いていました。

『あんぱん』では、「のぶ(演:今田美桜)」の献身的な売り込みによって、徐々に『アンパンマン』が子供たちに認知されていく様子が描かれましたが、ミュージカルが上演された125話のラストでは「嵩(演:北村匠海)」が、再会したパン職人「屋村草吉(演:阿部サダヲ)」に「たまたま目に入るほど『アンパンマン』は人気ないですよ」と言っていました。実際のところ、アニメ化されるまでの『アンパンマン』の人気はどうだったのでしょうか?

 やなせさんは自伝『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)で、絵本が刊行されてから約5年後、近所のカメラ店の店主に「先生、うちの坊主がアンパンマンの絵本が大好きでね。毎晩『読んでくれ』ってせがむんだよ。人気あるねえ」と話しかけられたことを「最初の予兆」と記しています。

 その後、似たような話をあちこちで聞くようになり、幼稚園や保育園で人気が広がっていったそうです。126話では石橋蓮司さん演じるカメラ店の店主が、のぶに3歳の孫が『あんぱんまん』の大ファンであることを語る場面が描かれました。

 ほかにも当時のさまざまな文献を見ると、アニメ化されるずっと前から『アンパンマン』は高い人気を得ていたことがよく分かります。

 やなせさんが前述の「最初の予兆」を感じるよりも前、1976年に刊行された幼児教育の専門書『集団保育と絵本』(高文堂出版社)という本のなかで、絵本『あんぱんまん』について触れている記述がありました。著者のひとりである中村悦子さんは、『あんぱんまん』が人気と聞いたものの、頭をかじらせる主人公に「いやな感じ」を覚えたそうです。しかし、3歳児のクラスで読み聞かせたところ、子供たちは大いに面白がり、「くりかえして読むことを要求」しました。

 また、同じく著者の佐々木宏子さんも、3歳未満のクラスで『あんぱんまん』が『ぐりとぐら』『三びきのやぎのがらがらどん』などと並んで、「ほんとうにすべての子どもをひきつけました」と驚きとともに記しています。

 さらに、1978年に刊行された『読書指導実践事例集』(第一法規)によると、小学校低学年向けの読み聞かせでは『あんぱんまん』の人気が高く、教師は子供たちのリクエストに応えて「何度も読み聞かせた」そうです。

 絵本『あんぱんまんとばいきんまん』が刊行され、やなせ先生も人気を実感するようになった1979年頃になると、子供たちの間で『アンパンマン』はすっかりおなじみの存在になっていました。同年に刊行された冊子『保育の友』(全国社会福祉協議会)には、「日頃子どもたちの人気者の『あんぱんまん』」という記述が見られます。とある保育園では、独自に「クリームパンマン」「ジャムパンマン」というキャラクターを作って遊んでいたそうです。

 1979年にはNHK総合テレビの「春休みこどもひろば-おはなしえほん」の1エピソードとして、『あんぱんまん』が制作されています。アンパンマンほか「ジャムおじさん」「ばいきんまん」、ナレーションの4役をタレントの中村メイコさんが演じました。

 こうして70年代半ばから幼児を中心に人気を得た『アンパンマン』は、80年代に入るとますます人気を増していき、シリーズの絵本が次々と刊行されていくことになります。そして1988年にアニメ『それいけ!アンパンマン』がスタートし、国民的キャラクターになっていくのです。

配信元: マグミクス

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