
本作は廃墟の町で突然失踪した妹の行方を捜す姉のもとに届いた、事件の決定的瞬間を映した1本のビデオテープからはじまるファウンドフッテージ作品。フェイクと真実の境が曖昧になるモキュメンタリー演出がふんだんに活用され、随所にちりばめられた謎の断片と、思わぬ方向にツイストを遂げる物語が展開する。
本作と、11月28日(金)公開の『WEAPONS/ウェポンズ』(11月28日公開)には多くの共通点が存在する。『WEAPONS/ウェポンズ』は、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)、「死霊館」のスタジオ、ニューライン・シネマによる新作。水曜日の深夜2時17分、子どもたち17人がベッドから抜けだし、暗闇の中へ走りだしたまま姿を消す。消息を絶ったのはある学校の教室の生徒たちだけ、という謎に満ちた設定だけではなく、知的好奇心を刺激するモキュメンタリーのような演出が話題を呼んだ。ネタバレ厳禁の考察ミステリーとして既に世界興行収入389億円を突破している超話題作だ。
本作も『WEAPONS/ウェポンズ』もモキュメンタリー演出、そして「考察系ホラー」であるが、共通点はそれだけではない。『WEAPONS/ウェポンズ』のザック・クレッガー監督は44歳で、コメディ集団の出身。『シェルビー・オークス』のクリス・スタックマン監督は37歳で、映画評論YouTuberからの長編初監督となる。いずれも新世代のホラー映画界を担う旗手として注目を浴びており、2人とも生粋の“映画オタク”で、かつ自身のパーソナルな経験を作品へと昇華させたことをインタビューで明かしているという点でも共通する。
今回、謎を追い、禁断の真実へと足を踏み入れるロング版予告も解禁。映像は、主人公のミアが1本のビデオテープを再生するシーンから幕を開ける。その画面に映るのは、得体のしれないなにかと直面し、恐怖で逃げ惑う人気ホラー実況チャンネル「パラノーマル・パラノイド」メンバーたち。そして無惨な姿で発見されたクルーと妹ライリーの消息を伝えるニュース映像がモンタージュされる。「暗く、深く呪われた歴史が、シェルビー・オークスに潜んでる」というセリフを残し、妹の失踪と廃墟の町“シェルビー・オークス”の謎を追って、踏み込んではならない禁断の境界線を超えていくミア。廃墟と化した刑務所、謎の老婆、窓辺を徘徊する男の影、地下室に封じられた闇、それらが一つにつながった先に待ち受ける戦慄の物語に期待が高まる予告編となっている。
さらに、考察欲を刺激する架空の捜索サイト、情報提供用の電話番号もオープン。物語の軸となる未解決失踪事件に関する情報を集めた架空の捜索サイトとなっている。廃墟と化した町シェルビー・オークスで、「パラノーマル・パラノイド」のメンバーが忽然と姿を消し、MCのライリー・ブレナン以外の全員が惨殺死体で発見されたという設定に基づきリアルに作り込まれている。「パラノーマル・パラノイド」が事件前に公開した動画の数々やメンバーのプロフィール、シェルビー・オークスの町の歴史、ニュース映像や新聞記事、地元警察の公式声明など数々の資料が掲載され、掲示板では情報提供者たちによる様々な考察が繰り広げられている。この「事件の行方を見守る“何者か”によって開設された」捜索サイトでは、物語の世界をさらにディープに体験できるだけではなく、映画を観た人にしかわからない物語への伏線がいくつも仕かけられており、考察欲が刺激されること間違いナシだ。さらに「情報提供用」の電話番号(050-1794-5586)の存在も明らかに。指定された番号に電話をかけると戦慄の恐怖を味わえるとのことだ。
スクリーンの内外で考察系ホラーの迷宮が広がる本作。アンテナを研ぎ澄ませながら、作品世界に没入し、存分に物語を堪能して欲しい。
文/鈴木レイヤ
