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学生が描く2030年のホスピタリティ 専門学校日本ホテルスクール弁論大会で見えた業界の未来

観光需要が高まる一方で、ホテル・旅館の人手不足が深刻な課題になりつつあります。現場で働く人の負担が増える今、これからのホスピタリティを支える若い世代がどのような考えを持ち、どんな未来を描いているのかに注目が集まっています。そうした背景の中で行われたのが、専門学校日本ホテルスクールが毎年取り組んでいる弁論大会です。

登壇した学生は、日本語・英語の両部門から合計10名。日々の実習やアルバイトで感じた疑問、業界の現状を見て抱いた課題意識、そして自分なりに導き出した改善策まで、率直な想いを自分の言葉で発表していました。多様性への向き合い方、マニュアルに頼りすぎない接客のあり方、環境に配慮したホテル運営、最新技術の活用など、取り上げられたテーマはどれも業界が抱える課題に直結するものばかりです。

この大会が特徴的なのは、学生の言葉をホテル総支配人や業界のリーダーたちが直接聞き、評価する仕組みです。学内行事でありながら、現場の視点と学生の視点が交わる貴重な機会となっており、同校が長く掲げる“実践教育”という方針が色濃く反映されています。

未来のホテル像を思い描きながら語られた学生たちの提案は、業界に向けたメッセージであると同時に、これからホスピタリティを学ぶ後輩への刺激にもなっていました。

学生が未来を語る大舞台 専門学校ならではの「弁論大会」とは?

専門学校日本ホテルスクールが毎年開催している弁論大会は、学生が自分の言葉で業界の未来を語る機会として長く続けられてきた取り組みです。今年で34回目を迎え、学内行事としては珍しい規模で実施されました。会場となったのは東京都中野区の「なかのZEROホール」。当日はホテル総支配人や業界企業の代表者、観光関連メディアなど、26名の審査員が参加し、学生の発表に耳を傾けました。

登壇したのは、日本語部門と英語部門からそれぞれ予選を通過した計10名の学生です。聴衆には在校生約350名をはじめ、教職員や家族も加わり、会場全体が若い世代の発表を見守る温かい雰囲気に包まれていました。緊張の中でステージに立つ学生の姿は、これから業界を担う人材がどんな価値観を持ち、どのように成長していくのかを感じさせるものでした。

同校が弁論大会を続けている背景には、表現力や語学力を磨くことに加え、現場の課題を自分ごととして捉えられる学生を育てたいという思いがあります。長年にわたり産学連携を軸にしてきた学校ならではの実践的な学びが、大会の中にも色濃く反映されていると感じられます。

日本語・英語の最優秀賞に輝いた2名の提案

今年の弁論大会では、日本語部門・英語部門それぞれから1名ずつ最優秀賞が選ばれました。いずれも学生自身の経験をもとにした言葉で、今の業界に必要な視点を的確に捉えた内容となっていました。ここでは、その2名の発表を紹介します。

◆日本語部門 最優秀賞 梅村 優月姫さん(昼間部ブライダル科2年)

テーマ「本当の多様性」

日本語部門で最優秀賞を受賞した梅村優月姫さんは、「多様性」という言葉が社会に広がる一方で、実際には“働きづらさを抱えた人が自分の力を発揮できない場面が残っている”という現実に向き合いました。障がいの有無ではなく、その人が持つ特性を最大限に生かし、“特化型スペシャリスト”として活躍できる環境づくりの必要性を訴えた内容です。

「できない」のではなく、「工夫すればできる」。その一言に、現場で働く人たちが互いに支え合い、自分らしく働ける未来をつくりたいという強い願いが込められていました。社会全体で議論されているテーマを、自分自身の視点で深めた発表だった点が高く評価されました。

◆英語部門 最優秀賞 イップ カーヘイ キャンディーさん(昼間部ホテル科2年)

テーマ「Beyond the Script(台本に縛られない)」

英語部門の最優秀賞に輝いたイップ カーヘイ キャンディーさんは、ホテルの接客現場で起こりがちな「マニュアル通りの対応」に一石を投じました。完璧なサービスを目指すあまり、台本のように決まった動きばかりになってしまうことへの違和感から、「お客様一人ひとりに合わせた物語を紡ぎたい」と語った内容です。

状況をよく観察し、感情やニーズの変化を見逃さないこと。マニュアルでは解決できない瞬間こそ、ホテリエの本当の価値が試されるという視点が印象的でした。自身の経験から導き出した想いを、明確なメッセージとして伝えたスピーチでした。

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