スーパーフォーミュラでは『SF23』が導入された2023年以降、TEAM MUGEN、VANTELIN TEAM TOM’S、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの3チームのみで勝利を分け合ってきた。そんな“3強時代”の中で迎えた2025年最終ラウンド、第10戦鈴鹿の決勝レースでついに“風穴”があいた。優勝したのはPONOS NAKAJIMA RACINGのイゴール・オオムラ・フラガだった。
NAKAJIMA RACINGはここ最近、春先・秋口に行なわれる鈴鹿ラウンドで速さを見せてきたが、それでも優勝には届かずにいた。しかし、計3レースが行なわれた最終ラウンドで躍動。第11戦でフラガが2位を獲得すると、翌日の第10戦では優勝。そして最終戦の第12戦でも、佐藤蓮が優勝した岩佐歩夢(TEAM MUGEN)の0.7秒差の2位に入り、こちらも初優勝まであと一歩という走りを見せた。
フラガと佐藤がこの3レースで獲得したポイントは65点(予選ポイント除く)。これはどのチームよりも多かった。これでチームランキングは昨年からひとつ上げて4位となり、5位のKids com Team KCMGにダブルスコアをつけた。
2023年からチームを率いる伊沢拓也監督も、このチームランキング4位という数字は今季の目標にしていたと語る。NAKAJIMA RACINGは2023年は7位に低迷したが、2024年は5位、そして2025年は4位と、伊沢監督就任後徐々に成績を上げている。
「僕は自分が来た時からチームランキングをどんどん上げていきたいと思っていました。(チームランキング順に前から並ぶ)ピット位置が前の方だと、予選や決勝レースのピット作業で有利になる機会がありますから」
「その中で段々と上には来れたのですが、去年KCMGに負けて5位に終わったことが非常に悔しかったので、今年はトップ3に次ぐ4位に上がることが目標でした」
「今はトップ3のチームに戦えるポテンシャルがチームとドライバーにあると思います。シーズンの終わり方も非常に良かったですし、来年が非常に楽しみです。ただこれから彼ら(3強)をシーズンを通して倒すとなると、僕たちの方で詰めないといけないところもあるのは分かっているので、オフのテストからそこに取り組んでいきたいです」
そんなNAKAJIMA RACINGで今季一躍ブレイクしたのがフラガ。彼はルーキーイヤーながら優勝1回、表彰台3回を記録する大活躍で、関係者からの評価も非常に高い。来シーズンはNAKAJIMA RACINGからスーパーGT・GT500クラスにもステップアップするのではないかと言われており、夢としていたプロフェッショナルドライバーに名実ともに近付こうとしている。
伊沢監督は、そんなフラガの活躍には前任者である山本尚貴がセットアップの方向性を見出してくれた点も大きいとした上で、フラガはフィードバック能力が特に印象的だと語る。またその完成度は、かつてGP2(FIA F2)でチャンピオンを獲得してスーパーフォーミュラに挑戦したピエール・ガスリーやストフェル・バンドーンと遜色ないレベルだと評した。
「よく考えていますね。例えばクルマの話をしている時、ドライバーをしていた僕からしても、イゴールの言っていることがすごく分かりやすいんですよ。伝わりやすいのでやりやすいですね」
「シーズンの最初の方は多少失敗したところもありましたが、それ以降は変なミスをするような感じがありません。スーパーフォーミュラではルーキーですが、ルーキーとは言えないようなスピードと経験があります」
「例えばガスリーやストフェルのように、F2でチャンピオンになってスーパーフォーミュラに来て活躍して帰ったドライバーがいますが、多分彼らと肩を並べる力と頭があると思っています。スーパーフォーミュラ・ライツのような日本の下位カテゴリーを経てくるドライバーとはちょっと違いますね」
フラガは資金難もあり、欧州のカテゴリーでは大きなチャンスを掴むことはできなかったが、2020年の冬にはニュージーランドで開催されたトヨタ・レーシング・シリーズに参戦し、リアム・ローソン、フランコ・コラピント、角田裕毅という後のF1ドライバー3人を退けてチャンピオンを獲得した。
その活躍がレッドブルの目に留まり、同年のFIA F3参戦を前にレッドブルジュニア入りを果たしたが、その前に既に戦闘力で劣るチャロウズと契約していたこともあり、F3では大苦戦。以降はレース活動ができず、2023年から日本に活路を求めて今に至るのだ。
またチームメイトの佐藤蓮も、2位1回、3位1回とキャリアハイの成績を残した。フラガとは21.5ポイントという差をつけられてしまったが、佐藤はもらい事故やピット作業ミス、戦略的な不運による不可抗力の取りこぼしも多く、ポイント差ほどのパフォーマンス差はなかったようにも思える。ただ、佐藤が参戦4年目、NAKAJIMA RACING所属3年目であることを考えると、もう一段上のパフォーマンスが欲しいというところがチームの本音か。
ただ伊沢監督も、佐藤がトップを走る岩佐歩夢(TEAM MUGEN)を最後まで追い詰めた最終戦のパフォーマンスは文句なしだと称賛した。
「彼にはレース展開的な不運もあったし、僕らチーム側のミスという意味での不運もあったので、点差としては(フラガと)もっと近くてもおかしくなかったと思います。ただ、4年目の彼が1年目のイゴールに対して、(不運を差し引いて)内容的に勝ち切っていたかと言うと、そうではないことは本人も承知していると思います」
「チームの雰囲気が良いからこそ、ふたりとも切磋琢磨して佐藤選手ももうひと踏ん張りして欲しいですね。今日の最終戦のようなレースが常にできれば絶対に勝つチャンスは来ると思います」
「最終戦での走りに僕らから言うことは何ひとつないですし、完璧なレースをしてくれました。これからもそういう走りをしてもらいたいですね」

