【思い出の兄が理子の目の前に現れて】
理子と加奈子は兄のことをたくさん語り合います。そんな思い出話になるとたびたび兄がスクリーンに登場するんですよ。髪はボサボサ、服はヨレヨレ、でもいつも楽しそうに笑っていて。いい加減な人間だけど愛嬌たっぷりで憎めない人なんですよ。
幼いころ、両親が共働きで毎日寂しかった理子を楽しませようと兄がしてくれたこと。そのときのやさしい嘘。理子と兄の思い出にこちらも胸がギュンとなりました。きっと上手に生きられない人だったんだと思います。
【キャスティングがバチっとハマった】
そんな兄を演じるオダギリさんは、これ以上ないベストキャスティング。死んだ役なのに存在感ばっちりで、オダギリさんが実に上手にダメ男をチャーミングに魅せています。
いっぽう柴咲コウさんは前作『でっちあげ』のモンスターペアレンツから一転、亡くなっても振り回してくる兄に困惑する理子役で全く違う一面を見せてくれました。こんなコミカルな役を演じる柴咲さんをもっと見たい!
そして満島ひかりさんは徐々にギアをあげていって、後半は見せ場たっぷり。私は何度か加奈子と一緒に泣きましたよ!
『浅田家!』など家族ドラマが大得意な中野量太監督の演出も素晴らしく、キャラクターに対する深い愛情があったからこそ、ダメな兄の心の奥底の魅力を引き出せたのだと思います。
家族だから「しょうがないなあ」と呆れながらもやってあげちゃうことってありますからね。そんな気持ちを思い起こさせてくれる映画『兄を持ち運べるサイズに』。ユーモアと感動の匙加減が最高の傑作、ぜひ劇場で観てくださいね!
執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
『兄を持ち運べるサイズに』
2025年11月28日(金)全国ロードショー
原作:「兄の終い」村井理子(CEメディアハウス刊)
監督・脚本:中野量太
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
出演:柴咲コウ オダギリジョー 満島ひかり 青山姫乃 味元耀大
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

