F1ラスベガスGPでのマクラーレンの両車失格は、今シーズンのタイトル争いにおいてマックス・フェルスタッペン(レッドブル)にわずかな隙を与えた。しかし、カタールでは、再びランド・ノリスがチャンピオン獲得の最有力候補として名乗りを上げることができるはずだ。
マクラーレンはラスベガスGP後、スチュワードとの長い聴聞会で抗議を繰り返すも、2台ともプランクが規定以上に摩耗していたことにより失格となった。
これは1mm以下というごくわずかな違反だったが、結果としてラスベガスGPを完勝したフェルスタッペンが、ノリスとオスカー・ピアストリの両者とのポイント差を25縮めるという、重大な影響を及ぼした。
残り2戦で最大58ポイント獲得可能な中、ノリスに42ポイント差をつけられていたフェルスタッペンは、マクラーレン勢の失格で突然グランプリ1勝分未満の差に詰め寄り、ノリスに24ポイント差、ピアストリとは同点となっている。
「週末を通して力強いパフォーマンスを見せたランドとオスカーが、チャンピオンシップ争いの重要な局面でポイントを失ったことについて深く謝りたい」とアンドレア・ステラ代表はレース後のプレスリリースで述べた。
マクラーレンにとって車高設定の誤りは重大かつ自滅的なミスだった。予想以上に凹凸の激しいラスベガスの市街地コースに問題があったとしても、入賞を果たした他チームが同様のミスを犯さなかった事実は変わらない。
しかし、チャンピオンシップの最も重要な局面で、ドライバーの努力を蔑ろにしてしまった経緯について、チーム内で徹底的な検証が行なわれるのは確実だ。とはいえ、マクラーレンが慌てる必要は全くない。
もしこの問題がシンガポールGP、アメリカGP、メキシコGPなど、不調が続いていたタイミングで発生していた場合は、スプリントレースがあるカタールGPやシーズン最終戦となるアブダビGPでフェルスタッペンを抑え続けられるか、不安が生じていたかもしれない。しかし、不調を乗り越えたノリスはサンパウロGPを圧勝。ラスベガスGPでもポールポジションからスタートし、フェルスタッペンにこそ敗れたものの、マシンの特性からしてラスベガスは決して得意なサーキットではなかった。それでも安定したペースで周回を重ね、2番手でレースを終えている。
一方でカタールGPは事情が異なる。高速で流れるような中高速コーナーが続くルサイル・インターナショナル・サーキットは、マクラーレンのために設計されたかのようなレイアウトだ。とはいえ、ノリスとピアストリが楽に1-2フィニッシュを決められるとは限らない。特にタイヤの使用制限により、1スティント最大25周となるため、全車が同等の戦略を強いられることはレース結果に影響を及ぼすだろう。
また、フェルスタッペンを除けばメルセデスやフェラーリがマクラーレンに大きなプレッシャーをかけられるかは疑問だ。トラブルやミスさえなければ、ノリスとピアストリは少なくとも表彰台争いに加わるはずだ。しかし、チームはそれ以上の結果を期待している。
■ミスが許されない状況
ラスベガスで起きた痛恨の出来事により、マクラーレンはもうすでにこれ以上のミスが許されない状況となっている。これはもちろん、ドライバーたちも同様だ。
2024年のカタールGPが良い教訓となる。スプリントレースではノリスとピアストリが1-2フィニッシュを果たしたが、予選では精彩を欠き、フェルスタッペンとシャルル・ルクレール(フェラーリ)に敗れた。加えて、ノリスはイエローフラッグ時の減速不足で10秒ペナルティを科され、10位に後退した。今年は2ストップレースが確実と見られるため、トラックポジションが最重要となる。どちらのドライバーも昨年のように、スタートポジションを落とすわけにはいかない。
ピアストリに関しては、最近何もかも思うように進んでいないようだ。ノリスに比べてペースに苦しみ、貰い事故とはいえアクシデントに巻き込まれたり、ラスベガス予選ではイエローフラッグの不運に見舞われた。
ラスベガスのレース後、ピアストリはタイトル争いで巻き返すためには「自身のコントロール外の要素」が必要だと認めたが、スチュワードの裁定後も状況は変わっていない。皮肉なことに、自身も含めた失格が傷口を広げるのを防いだが、カタールでは7戦ぶりの表彰台を追いかける展開となる。
一方、好調のノリスはカタールGPで初のチャンピオン獲得を決めることも可能だ。獲得条件は、スプリントレースと決勝レースの合計でフェルスタッペンやピアストリよりも2ポイント以上多く獲ることだ。
仮に両レースでフェルスタッペンに敗れた場合でも、無得点で終わるなど最悪の事態でさえなければ、依然として彼が主導権を握って最終戦を迎えることになろう。ただしその場合、彼自身が大きなプレッシャーにどう対処するかということが重要になるはずだ。
以前ノリスには、精神的な弱さがあるとの見方もあった。しかしオランダGPでの致命的なリタイアからランキング首位に返り咲いた経緯を見ると、ノリスがメンタル面を鍛え、そうした疑念を払拭したように感じられる。
チャンピオン獲得の最有力候補として、今シーズンこれまでに7勝を挙げているノリスは、タイトル争いの最終局面をシーズン中と変わらぬ気持ちで臨むと述べた。
ラスベガスGP前に、ノリスは次のようにコメントしている。
「ここ数戦上手くいっているのは、フルスロットルで走り、トラブルを避け、後方の混乱に巻き込まれないようにしているからだ。プッシュすることがむしろ安全策と言える。だから(安全策は)正しい心構えではないと思う」
「今週末も勝つためにここに来た。カタールでも勝つために挑む。まるでチャンピオンシップ争いをしていないかのように臨む。それが僕のメンタリティだ。僕にとってこれは単なるレースウィークエンド。獲得ポイントがいくつであれ、何も変わらない」
しかしF1では、奇妙なことが起こりうる。特に最終戦では、過去にもそのような事例があった。ノリスは強気な発言をしているが、アブダビでのタイトル決定戦は神経戦となるだろう。

